こんにちは、マユリです。
私のブログを読んだ方から、
「ジブリの「風立ちぬ」に、召喚の泉みたいなのがでてくるんですが?」
という質問をいただきました。
「日本に伝わった古代エジプト — 日本のイシス神殿 江田神社」
https://ameblo.jp/heavenly-crystal/entry-12692800467.html
このアニメは見たことがなかったので、さっとみさせていただきました。精査したわけではないので、記憶間違いなどありましたら、お許しくださいね。
まあ、ビックリ! 中近東風の本格的召喚の泉がでてくるじゃないですか!
どういうお話かというと、ヒロインの菜穂子は大好きな次郎さんを手に入れるために、泉にお願いします。
お願いするや否や本人現る!「どんだけ霊験あらたかなん!」もとい、「すごいぞ! 黒魔術!」菜穂子本人もびっくり仰天です。
心願成就か黒魔術か?
「え! それって黒魔術なんですか?」
たしかに! 泉に願をかけるのは、日本にだってあります。心願成就の法です。
舞台となった軽井沢には、元々、召喚の泉があったようです。
「日本に伝わった古代エジプトでお話したように、縄文時代に既に、日本にも中近東由来の魔術が伝わっていました。軽井沢もそんなところの一つだったんでしょう。
でもね、「風立ちぬ」宮崎駿が描きたかったのは、そっちではないんです。
何故、軽井沢が舞台なんでしょうか?
それは軽井沢が、明治以降、外国人と上流階級によって開かれた特別な場所だからです。
日本に伝わった「欧米の黒魔術」を描くためには、軽井沢でなければならなかったのです。
心願成就の黒魔術とは?
「どこがどう黒魔術なんですか?」
黒魔術には生贄が必要です。羊とか山羊とか人間とか……この物語では、菜穂子自身です。
菜穂子は二郎を手に入れるために、自分自身の命を捧げたのです。
黒魔術とは他人又は自分の命を贄に、願いを叶えるシステムなのです。
早速二郎さんが現れます。ものすごい雨が降り、その後、虹が出ます。この虹は「その願い聞き届けたり」の印なのです。
日本風に言うと、龍神様に願をかけると言うやつです。龍神なので雨が降るのです。虹は龍の印です。
召喚の泉で悪魔にお願いするのも、龍神様に心願成就するのも、やることは同じです。文化によって名称が違うだけです。
キリスト教文化の西洋は、善と悪、神と悪魔をきっちりと分けますが、汎神論的な日本では、超自然的な存在はなんでも「カミ」と言うのです。
宮崎駿は黒魔術を否定的に描いてる!?
このアニメを見て驚いたことがあります。
実は私は、それほどジブリ通ではなく、テレビで放映されたものをいくつか見た程度なのですが、てっきり他のアニメーター同様、宮崎駿も魔術好き、
つまり「魔術をお砂糖で包んで、ファンタジーフレーバーに加工する」方かと思ってました。
ハウルとカルシファーなんて、どう見ても魔術師とルシファーですし……
ところが、風立ちぬでは、思い切り魔術を否定的に描いているのです。
菜穂子の願いが叶った場面では、虹の後ろは真っ黒な不吉な雲です。
これ、ファンタジーフレーバーだと、光りがさすとこですよね。
よくあるアニメだと、妖精や神様や、人懐こい龍やらドラゴンやらが「願いを叶えてくれてめでたしめでたし」となるのですが、宮崎駿はそうはしなかったのです。
「風立ちぬ」は、リアルに黒魔術を描く稀有なアニメ
菜穂子は自分自身を生贄にして、心願成就しました。
黒魔術って、願いが叶う見返りに、自分の命を捧げます。
これね、健康な若い人がやってもわからないんです。本来70歳の寿命の人が65歳に縮んだとしても、そんな先のことピンときませんよね。
黒魔術にハマる人って、このパターンです。人は目先の利益に弱いです。
でも、菜穂子は結核です。30歳の寿命の人が25歳に縮んだら大変ですよね。
菜穂子、やってしまったんです。願いが叶った瞬間から、カウントダウンが始まります。
叶った以上は代償を払わねばなりません。代償は自分自身の命なのです。
菜穂子は魔術と自覚しておこなった
軽井沢の菜穂子は、大好きな二郎さんにプロポーズされてルンルンだったはずです。謎の外国人カストルプが言うように「物事の暗い側面は全て忘れて……」恋の悦びに酔いしれたことでしょう。
自分のこと覚えてもいなかった二郎さんが、トントン拍子にプロポーズまでするんです。黒魔術すごい! て、実感したはずです。
代償は自分の命——初めは半信半疑だったかもしれません。でも、結核が急速に悪化して喀血した瞬間、「それは本当だった」と悟るのです。
「願いを叶えた代償に、自分は死ぬのではないか」と自覚したのです。
サナトリウムに入って、なんとか生きようと争ったものの、観念したかのように、最後は愛しい人と一緒に過ごすため、次郎の元にやってきます。
そして、いよいよ約束の時がやってきて、彼女は1人去ったのです。
契約の代償に、地獄に落ちる様を愛する人に見せたくなかったのです。
菜穂子は、決してよくあるおまじないレベルでお願いしたのではありません。西洋流の黒魔術の方法を真似たのです。そのことは本人も自覚してました。
カストルプが、欧米人(おそらく亡命ユダヤ人)なのはそのことを暗示しています。
この人クレソンしか食べませんよね? 当時の日本にハザール料理なんてないですから、食べられないのです。
そしてこの不思議なユダヤ人は、菜穂子の秘密に、おそらく勘づいていたのです。
菜穂子は庶民ではありません。資産家の娘で、父親はドイツ語で歌を歌うような人ですから、西洋の黒魔術にアクセスできる環境にあったのです。
風立ちぬは魔術の負の側面を、リアルに描いてる
それにしても、魔術をファンタジーテイストで描く先駆けにして、最も偉大な巨匠の宮崎駿が、魔術の負の側面を告発するようなアニメを作るとは、一体何が彼をそうさせたのでしょうか?
下続く
「風立ちぬ」二郎は悪魔憑きなのか!?
悪意なきサイコパス堀越二郎
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