【ハート・インテリジェンス~“心臓脳”の直感に従う】
NHKの大河ドラマ「晴天を衝け」でも、子ども時代の主人公渋沢栄一が「自分の “ここ”に訊け」と言われ、胸に手を当てじっと目を閉じるシーンがありました。
日本では「心の声を聴け」「自分の胸に訊いてみろ」といった表現をよくしますね。
私たちがごく自然に「心は胸の内にある」「大事なことはハート(心)が知っている」と捉えていることが伺えます。
「自分の“脳”に訊いてみな」「おまえの“脳”に耳を澄ませろ」といった表現はまず聞いたことがありません。
このように、私たちは「心は頭でなく、胸の中にある」と感覚的、文化的に捉えているようですが、科学的にはどうなのでしょうか?
今年1月に放映されたNHKBSプレミアム、ヒューマニエンス「“心臓”心が宿る もう一人の私」という番組では、「心は脳でなく心臓に在ると考えられること」「脳が心臓へ送るよりも、心臓から脳へ送られる情報量の方が圧倒的に多いこと」などが伝えられていました。
カナダモントリオール大学名誉教授アンドリュー・アーマー博士によると、心臓には約4万個のニューロンから成る、脳と同じ神経構造を持つハートブレイン(心臓脳)が存在しており、この心臓脳は、脳とは関係なく独自に知覚、記憶、学習、決定という脳と同じような働きをしていることがわかっています。(1991年)
「自分の心と直感に従う勇気を持ちなさい。それらは自分が本当に成りたいものを、何らかの方法ですでにわかっているのだ。それ以外のことはすべて、二の次だ。」と明言したのはアップルの創業者スティーブ・ジョブス。
彼が「それ以外はどうでもいい」くらい言い切った「心と直感」、それが“ハート・インテリジェンス”であり、言い換えれば、ハートの知性または潜在意識(魂)の叡智です。
私は心理セラピストとして20年以上、リラクゼーションとヒプノシスを用いて潜在意識の叡智にアクセスし、答えを自分の内側から得る、癒しと自己成長のプロセスを促してきましたが、そこに極めて短時間で簡単にアクセスする科学的メソッドを開発したのが、心臓科学のパイオニアであるハートマス研究所(米カリフォルニア)です。
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重要な心臓の働きである「直感」を、より豊かに働かせることのできる状態が「コヒーランス」です。
「コヒーランス」とは、心臓の心拍リズムがゆったりと落ち着き、心臓と脳が調和的に繋がり、両方の機能が向上した状態で、心と身体の潜在能力が最大限に引き出され得る在り方です。
ハートマス研究所は、心拍変動を測定することでこの「コヒーランス」の度合を測り、目に見えない“心”を可視化するバイオフィードバックシステムを開発しました。
そして、心臓の知られざる機能を解明し、ハートのパワーを活性し、レジリエンスを高める、実用性の高いストレスマネジメント法を世界の各分野(医療、心理、ビジメス、教育、スポーツ、警察、消防、軍etc.)に広げています。
「スピリチュアリティと科学を結ぶ架け橋となり、ハートに軸を置く社会を実現する」というハートマスの創業理念に共鳴し、私は昨年同研究所の認定トレーナーの資格を取得しました。
そして今、同じ日本人トレーナーである脳外科医師と共に、世界最先端のストレスマネジメントプログラム「レジリエンス・アドバンテージ」と「コヒーランス・チャレンジ」を通し、ハートマス30年の叡智を日本に伝える活動を始めました。
ひとりひとりが「自分のハートは賢く、信頼に値する」という実感を持てる社会を、子どもたちのためにも創りたい。そのためにもまず大人が、ハートの知性の有効性を知り、日常的に実用し、新たな常識を生み出していくことが大切だと思います。