霊現象の実際【5】 ~ 七つの大罪・色欲(前編) ~ 外されたブレーキ

彼が性的に欲求不満であることは、女性を見る時の目つきから分かっていました。
まぁ、それも年頃の男の子なら当然だろうと笑っていましたが、一応、女性スタッフには距離感に気をつける様に注意はしていた。

 

◆第一の使者 色欲

七つの大罪に沿って送られて来た魔界からの使者……。第一の罪は色欲

性行為をする事が罪なのではなく、そこに囚われ過ぎる事が魂の成長の妨げになる。
多人数と性行為をする人も普通に居りますが、それも構わないと思っています。
世界には一夫多妻、一妻多夫制もあるし、否定し過ぎるのも正直イタいというのが僕の立ち位置です。
浮気に対しても、相方のそれも許容するのであれば良いのではないか? と思っています。

ただ、自分はするけど相方のは許せない! というのは自由ではない。そう考えます。
しかし、それが相手の意思を無視した一方的なものであってはいけない。
強姦やセクハラは当然大罪に当たりますね。

また、性交渉以外で性的欲求を満たす人間も居ます。

うちに来た者のそれは、むしる、焼く、切る、殺す
そこに快楽を感じる人間でした。

まだお店の準備が始まる前のこと、彼からのメールには、入浴中に突然髪の毛が大量に抜けてしまった事が書かれていました。

当時は霊的なものとは捉えず、身体の変調と勘違いしていました。
その後、残った髪の毛を自分でむしってしまい、再会した時にはスキンヘッドになっていました。
彼が飼育場に勤務し始め、最初の異変は雉達のヘアがデザインされていたこと。
ラインを入れることから、モヒカンへ、

それに気付いたのは、彼からの連絡に頭が腫れ、頭頂部に羽の無い鶏の写真が送られて来た際でした。
見た事の無い症状でしたが、この時にはまだ彼の仕業とは微塵も考えなかった。
しかし、次に送られて来た写真を見た時に確信しました。
こいつがやったんだな……
それは、頭が真っ赤に焼き爛れ、頭蓋骨まで露出した雉の写真でした。

「今日来たらこうなってました。」

なってるわけがない。

彼が性的に欲求不満であることは、女性を見る時の目つきから分かっていました。
まぁ、それも年頃の男の子なら当然だろうと笑っていましたが、一応、
女性スタッフには距離感に気をつける様に注意はしていた。

それがこの様な形で表れるとは思いもしなかったのです。

 

◆ 外されたブレーキ

その前日、僕は水鳥の異変に気付き、全く気付かない彼の怠慢を叱ったのですが、
その怒りとストレスが彼のブレーキを外すこととなった。

どうしたものか……

雉にはヒーリングをし、なんとか元気を取り戻して貰えた。
彼には僕が薄々気付いてると思わせるやり取りをし、牽制しておいた。
翌日、彼のストレスを解消しようとカラオケに誘い、とりあえずは様子を見ることにした。

その翌日、女性スタッフに様子を見に行って貰い、その後場所を変え、今後の対策を練っていると、
次の写真が送られて来た。

雉達が横並びになり、背中をむしられたものと、お尻をむしられ血の付いた鶏のもの……

「今気付いたらこうなってました!」
これが彼の犯罪の決め手となった。

女性スタッフがたまたま撮っていた写真、それはちゃんと羽の生え揃っている雉と鶏のものでした。

僅か20分の間に外部の者が入り込み、その行為をしたと言うのか

罪を隠そうとした行為が逆に彼の犯罪を証明する事となった。

 

◆ 表した本性

翌日、ラウンジに彼を呼び出し、話を聞く事にした。
近所に住んでいるにも関わらず、2時間ほどしてから現れた。

平静を装っているが、第三者に電話をし、
「僕はやってないのに疑われている。◯さんから無実だと言ってください!」と、
追求を逃れようとしていた事が後に判明する。

犯罪者にありがちな行動。僕は「お店の事で話があるから来てくれ」と伝えただけなのだが……
緊張を解く為、当たり障りのない話をし、
「動物達の事だけど……」

ギク!!!

漫画でも見てる様な恐怖に引きつった表情と態度
「君は仕事中、意識が飛ぶことはあるかい?」

憑依され、無意識のうちに犯行に及んだ。そう信じたかったし、そうであって欲しかった。

「……ありません。」

その後、他の話も挟みながら、何度も同じ質問をした。

平静を装う為に握りしめている左腕から血が流れて来た。

意識的にやってたのか……

「お前がやってないと言い張るなら、俺はお前を救うことは出来ない。」
「俺以外にお前を救える者は居ないだろ?」

何度か白状しそうになるが、踏み止まり、やっていないとしか言わない。
話は3~4時間程に及んだが、閉店時間の為、その日は解散となった。
「暫く休んで良いから、何か思い出したら連絡しなさい。」
そう伝えて別れた。

帰りの電車の中で女性スタッフに送ったメール

「あいつ嘘はついてないね」

説明不能……、明らかに真っ黒なのに……。
コーチの仕事は相手を信じなければ出来ない。
意識ではわかっているのに、無意識が信じてしまっていた。

女性スタッフは受け取った瞬間にずっこけそうになったそう……

「しっかりしてください」
「ああ……」

彼も元は僕の生徒、僕に憧れ、少年の様に目を輝かせていたその顔が頭から離れなかった。
念の為、鍵の隠し場所を変えたのだが、翌日には水鳥が殺されていた。
また鍵の場所を変える
その翌日、元気になった雉が、一羽だけポンっと廊下に出されていた。

警察に届けよう。

今後の事を考え、とりあえず届けだけ出しておくことにした。
警察では調書も取らず、カメラを仕掛け、証拠テープを取って来なければ動けないと言われた。

そして、彼から僕と2人で話したい。と連絡が入る。
自分がやっていないという証拠を作って来た様だが、「今日は本当の事だけを話しなさい。」と牽制した。
証拠にならない物を見せながら、何とか隠蔽しようとする姿は、以前の彼とは別人
その醜い顔を見ながら、何故こいつを信じたんだろうと我ながら不思議で仕方なかった

「よし! 君がやってないのなら外部から侵入したのだろう。警察に届けて調べて貰おう。」
この言葉に激昂し、イキナリ態度を変えた。
「あーそうですか! 加藤さんは日頃警察とやり合っているのに、いざとなれば頼りにするんですか!」

正体を表した。
100%こいつがやった事を確信し、僕も態度を硬化させた。

「いや、俺は税金をいっぱい払ってるからねぇ。頼るんじゃなくて使わせて貰うんだよ。」
「わかりましたよ! ではこれで!」
その日、念の為飼育場のキーシリンダーを変えておいたのだが、にも関わらずに決定的な事件が起きた。

つづく

 

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