それは誰の悩みですか? ~ 迷走する悩みたち ~ 誰の悩みだかを曖昧にしていると……

カウンセラーやセラピストは基本的にクライエントの味方です。 クライエントにとっての最善の方向性を一緒に考えるのが仕事です。 だから、第三者のことはわからないのです。

母が悩んでいるんです!

「カウンセリングのご希望ですか?」と聞くと、「いいえ違います」と言う人がいます。

「お問い合わせですか?」と聞くと「そうじゃないんですけど」と答えます。

「実は母がウツのことで悩んでいて……」というような御相談(?)をよく受ける事があります。
流行っていますものね、ウツ。
決して放置してはならない問題ですよね。

ただ、ちょっと待って欲しいのです。
悩んでいるのがお母様なのであれば、お母様ご自身がカウンセリングを受けた方が良いのではないかと思いませんか。

カウンセリングは基本的に、カウンセラー(セラピストorヒーラー)対クライエント本人なのです。
遠隔ヒーリングとか祈りとか、そういうものは違うかもしれませんがそれはそれとして考えて下さい。

カウンセリングやセラピーのお問い合わせや申し込みを代理で引き受けたのならわかるのですが、そのように切りだして来る方の殆どは、そうではないのです。

「え? お母様が悩んでいらっしゃるんですよね?」というと「はい」と答えるのです。
「お母様はカウンセリングに興味を持っていらっしゃるのですか? または問題を解決してくれるお手伝いをしてくれる誰かを探していらっしゃるのですか?」と聞くと「それは、解決してくれる人がいれば解決していると思っているとは思いますが、カウンセリングに興味があるわけではないというか……」という流れになるのです。

「では、お母様はあなたが自発的にお母様の問題を解決してくれるのを期待されているのですか?」というと「そうでもないんですけど……」と、だんだん返答が曖昧になって来ます。

残念ながらこれではカウンセリングを進められません。
実態のないクライエントとセッションすることはできませんものね。
しかも最初のやり取りでカウンセリングを受ける気も無ければ問い合わせをする気もないとハッキリとご本人がおっしゃっているわけですから。

 

誰が悩んでいるんでしたっけ?

「あの、誰が何に対して悩んでいるのでしたっけ?」と聞くと「母がウツで悩んでいるんです……」と同じ答えになります。

堂々巡りになるので結論を言います。
悩んでいるのはお母様ではありません。
相談に来た御自身なのです。
お母様が何をどのように悩んでいるのか、本当に悩んでいるかどうかはこの時点では超能力者でもない限りわからないのです。

「お母様がウツ」なのは事実なのでしょう。
でも「お母様がウツで悩んでいる」というよりは「相談に来た御自身が、お母様がウツで、それによる何らかの弊害があり、それに対して困っていて悩んでいる」のです。

ウツならウツなりに、きちんとケアをしていたりすれば問題はありません。
必要以上に心配せずに温かい目でそっと見守ってあげればいいのです。

お母様が悩んでいないとは言いませんが、お母様はお母様なりの考えがあるかもしれませんし、他人が思うほどは深刻に捉えていないかもしれません。

 

誰の悩みだかを曖昧にしていると、そこをつけ込まれます!

勝手に「母が悩んでいる」という設定で話を進められても、どうにもならないのです。
特に、そういうケースは付け込まれる危険性すらあります。

怪しいニセ霊能者当たりに「お母様にはキツネがついているので百万円で聖なる壺を買いなさい」なんて言われるかもしれませんが、それに引っかかったら本当にお母様が悩みだしてしまうかもしれません。
「うちの娘が、変な霊能者に騙されて私はもう辛くって。しかも、何故か私が呪われているふうの設定にされて…」という具合に。

その方が可哀想です。