前回はプロバイオティクスとプレバイオティクスの違い等を書かせて頂きました。
今回は腸内細菌の働きと食物繊維を掘り下げて書いていきます。
◎食物繊維の重要な役割
野菜の食物繊維を多く摂取しましょう! という話は何も今に始まった事はなく、数十年前から盛んに言われているスローガンとなっています。
昨今ではトウモロコシから人工的に作った食物繊維をドリンクにして、それを飲む事によって手軽に食物繊維を摂取出来る商品もあります。
ポリデキストロースや難消化性デキストリンなどその一例で、最近では様々な食品に使われています。
余り食品の味を変えずに添加出来、血糖値の上昇や糖の吸収を抑え脂肪を蓄えにくくする働きがあり、また便を柔らかくして便秘解消にも効果があるとされています。
ダイエット目的で使われる事が多い食品ですね。
重要な点はこれらの物質は「人間の消化酵素では分解されない」という点です。
前回も書きましたが、人体は蛋白質と脂質と一部の炭水化物の分解酵素は持っていますが、食物繊維の分解酵素は持っていません。
なので、上記のような効果を体内で発揮する事が出来るわけです。
分解、吸収されてしまえば元々炭水化物ですから、糖として血糖値を上げますし、余分な糖は脂肪として蓄えられてしまいます。
ここからさらに重要な点、これらの人体が消化出来ない食物繊維を分解消化しているのが、何を隠そう「腸内細菌」なのです。
◎まさに共生関係の菌と人
結論から言いますと、野菜の食物繊維は身体に良いから一杯摂取しよう、と意気込んで食べても、最終的に食べていたのは実は菌でした、という話です。
私たちは食物繊維を細かく砕いて、胃液でドロドロにはしましたが、エネルギーとして利用した事は産まれてこのかた一度も無かったのです。
腸内細菌はそのように、人体がドロドロにした食物繊維を腸内で待ち構えております。
これらの菌は人体が持っていない食物繊維を分解する酵素を持っています。
食物繊維は大体の場合「多糖類」の形をとっています。
菌のエサもまさに糖なのです。
糖というのは人間がまだ人間の形を取る以前、単細胞生物の頃からエネルギーにしてきました。
一部の単細胞生物は味覚があるかのように振る舞い、苦い物質は避け、糖のように甘いモノは摂取する、という行動まで起こします。
◎肥満抑制に効果が期待される、腸内細菌由来の物質
人体の腸内細菌は、食物繊維を分解し糖として摂取する事で自身のエネルギーとして活動しています。
お酒などは彼らの習性を利用した、最もたる食品の一つです。
これは酵母菌が糖をアルコールと二酸化炭素にする事で出来ます。
ワインなどはブドウの糖を酵母が利用しているわけです。
腸内細菌も同じ事をしていますが、存在するのは酵母菌だけでは当然ありませんから、アルコールと二酸化炭素だけではなく、様々な物質を排出しています。
その時に出てくる物質がなんと「人体に有用」な場合が多いのです。
その中でも注目されているのが「短鎖脂肪酸」です。
なんと肥満を抑制する効果もある、とある研究では報告されています。
次回はこの短鎖脂肪酸に重点を当てて書かせて頂きます。
井上漬物店HP
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《井上 昌則 さんの記事一覧はコチラ》
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