タクシー運転手と高齢のマダム
彼らの道中は人生いろいろ、がごとし
木村拓哉がタクシーの運転手、乗客のマダムが84歳の倍賞千恵子。果たして面白いんだろうか? と試写に行ったが、原作のフランス映画「パリタクシー」の出来がいいのだろう。ラストは思わず落涙してしまった。しゃれた佳作となっている。
木村拓哉も娘の学費に頭を悩ます地味なタクシー運転手をさらりと好演。何やってもうまいなあ、と感心させられた。オーラを消してるよね。対する倍賞千恵子は珍しく派手な化粧に衣装にと、お金持ちのケバいマダムを演じているが、少々違和感はあるもののこれはこれでいいのだろう。
さて、お話はしがないタクシーの運転手が客の高齢のマダム、すみれを東京、柴又から神奈川の葉山の高齢者施設まで送り届けるというものだ。その道中でふたりは仲良くなっていく。すみれは寄り道に過去を思い出しながら、運転手に若かりし頃を語り始めるのだ。その過去は波乱に富んもので……。

マダムの過去を演じる蒼井優
このパートが一番見ごたえあり!
この映画で私が一番面白かったのは、すみれの若い頃を演じる蒼井優のパートだ。在日朝鮮人2世と恋に落ちるも、彼は北朝鮮へと旅立つ。妊娠を知ったのは別れた後。シングルマザーで息子を育てるが、ある男に求婚され結婚。優しい男だったのに、結婚後は豹変してすみれを苦しめる。このすみれの男への反撃が見ごたえありなのだ。
蒼井優が毅然と凄みを持ってする行為は見ていてゾクゾクしたし、スカっとした。こういう不幸を泣き寝入りせずに敢然と女性がやり返す様は、私はというか、女性はほとんど胸のすく思いがするのではないか? 今回分かったのだが、私は女性が不幸になっていくのを見るのも好きみたいだ。こんなに酷い目に合わされて……と。
でもそれは最後には女性が復讐したり、解放されなければやはり嫌なんだけど。蒼井優はやはり、巧い。こういう薄幸な女性が似合うし、なにか狂気を秘めている女優だと思う。結婚して出産しても容色衰えることもなく健在だ。もっといろいろ出て欲しい。
この蒼井優が歳とって倍賞千恵子になるのは、ちょっと無理があるがしかたない。ラストは予想がつくのだが、こういうこともないではないだろうな、とも思う。人と人との関わりを感じさせてくれる、都会の片隅のおとぎ話の一篇である。

監督・脚本 山田洋次
原作 映画「パリタクシー」
脚本 朝原雄三
出演 倍賞千恵子 木村拓哉 蒼井優 迫田孝也 優香 中島瑠奈 神野三鈴 イ・ジュニョン
小林稔侍 笹野高史
※103分
©2025 映画「TOKYO タクシー」製作委員会
※11月21日(金)全国公開

















