東村アキコの自伝漫画の映画化
恩師との悲喜こもごもの9年間を描く!!
今話題の永野芽郁主演作。原作は漫画家の東村アキコ。脚本も東村が担当している。原作は、数年前に書評ですごく褒められていて私も読んだのだが、面白かった。あんまり東村アキコの絵柄も話も好きじゃないんだけど、これは自伝漫画ということもあり、当時人気の彼女がどういう風に漫画家になったのか興味があったので読んでみたのだ。
それは、彼女と絵画教師との関係を軸に東村の自由で明るく楽しい自伝だった。印象に残ったのは、ブックオフでバイトしてて、そこで売り物の漫画をほぼ全読破し、それで漫画を描くコツやネタをストックしまくったこと。大学受験をフーチで乗り切ったこと。両親が東村をこよなく愛していて、ギャグセンス抜群なこと。大学でイケメンに一目ぼれして即、アタックして付き合いだしたこと。その彼とはラブラブで、故郷の宮崎を案内して宮崎名物を堪能させたこと。漫画家としてお金が入るようになると服を買いまくったこと。など。細部が面白い。もちろん中心にはかなり個性的な絵画教室の恩師と教室の様子が面白おかしく語られるのだが。
本作はこの恩師との9年間をメインに描いている。映画だとやはり、後半湿っぽくなるのだが、それは、本作のウリなので。私はちょっと後半退屈だったのだが、前半は大泉洋の好演で笑えるし、テンポよく進んで楽しい。

大泉洋、意外にはまっている恩師役!
前半、笑かしてくれます!!
さて、明子はお気楽な高校生で漫画家になるという目標があるが、美大在学中に漫画家としてデビューするという野望があり、美大受験を目指す。受験の対策として絵画教室に通うが、そこは竹刀を持った暴力教師、日高健三が支配していた。絵に自信を持っていた明子はそこでプライドを粉々に砕かれ、スパルタ指導を受ける。しかし、日高は厳しいが優しいところもあり、明子の才能を認める。そして画家になったら一緒に二人展をやろうと誘う。しかし、明子の目標は漫画家であり、画家ではない。大学に入った明子と日高は次第に疎遠になる……。
永野芽郁、ちょっとイメージ違うかな? ちょっと陰なとこがあるよね、彼女って。だけど、映画化をずっと承諾しなかった東村が永野がやるならと、映画化を承知したそうなのだ。
大泉洋は、違うなあ~、もっと渋いんだけど、と思ったのだが観ると意外にはまっているのだ。笑えるし。芸達者だなあ。明子の両親の大森南朋とMEGUMIはぴったり!!

師弟の縁は何世も続くそう!
だから、結びつきが強固なのだなあっ
原作で感動的なコマがあって、日高先生がとにかく明子に言うのは「描け!」「描け!」「描け!」なのだ。このコマが3コマ続く。そうなのだよね。絵が巧くなりたかったら、「描く」しかないのだ。それが明子が先生から教わった最も大切なことだろう。絵だけじゃなくて、全てそうだ。続けて、繰り返して、努力して、しか上達の道はないのだ。
成功した人の自伝は面白く、多くの学びと気づきがあり、力づけられる。本作は原作ほど描くことに力を入れていないので、是非映画を観た後でも先でも原作を一読して欲しい。そこには、東村が伝えたかったことが、より深くある。
映画はふたりの掛け合いと、別れを堪能して欲しい。人生で出会ったかけがえのない人。親子の縁は一代、夫婦の縁は二代、師弟の縁は永代(正確ではないかも)というのを読んだことがある。それほど師弟の縁は前世から何世も続くものらしい。だから、本作は感動的なのだ。
監督 関和亮
原作・脚本 東村アキコ
脚本 伊達さん
出演 永野芽郁 大泉洋 見上愛 畑芽育 鈴木仁 神尾楓珠 津田健次郎 有田哲平 MEGUMI 大森南朋
※126分
※2025 年 5 月 16 日(金)公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
©東村アキコ/集英社 ©2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会