一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.292「花まんま」

花まんま

兄と妹の幼い頃からの秘密

それは、号泣のラストへの伏線……!!

泣きました。これは泣きますよね。いや、こんな話とは思わなんだ。兄と妹の話かあ。兄妹の話ってあんまり触手が動かないんだけどなあ(と、これは「鬼滅の刃」を見る前も思ったっけ。実際アニメ見て号泣、夢中に)と思いつつ、原作が直木賞受賞作なので、試写に行ったのだけど。

ええっそっちの話ですか? とびっくり。ミステリー仕立てなので詳しくは書けないのだけど、とてもトリニティ読者向けの話なのです。それで、私は特にこういう話は弱くて、号泣しました。

ラストショットの伏線回収まで、伏線がかなり張られていて、その展開の妙にも夢中にさせられ、ラストショットはもうもう、泣けます(そこへ行くまでに何度も泣いてるが)。なんて、素敵な話なんだろう‼︎ と感激した次第。すでに今年の邦画ベスト1かも。ってくらい素晴らしい仕上がり。

花まんま


散りばめられた謎に引き込まれる

大阪弁が違和感なしの心地良さ!!

大阪の下町で暮らす、兄の俊樹と妹のフミ子。早くに両親を亡くしたため、兄は妹の親代わりとして父親の教え通り、妹を大事に守って育ててきた。そのフミ子の結婚が決まった。俊樹は喜ぶが、フミ子にはある秘密があった。そのことをフミ子は婚約者に伝え、婚約者は驚愕する。俊樹はその秘密を心配するのだが……。

最初、あれっ? どういうことかな? と謎が散りばめられていて、ガッと画面に引き込まれる。それが、わかった時悲しみが押し寄せる。そして、子供時代の俊樹とフミ子の演技に魅了される。特にフミ子役の子役(小野美音)がむちゃくちゃ巧くて自然で、可愛くて、良いんだ。

自然といえば、今作はメインの配役は兄役の鈴木亮平、妹役の有村架純を始め(兄妹の子役も)ほとんど関西出身。監督の前田哲も大阪、柏原市出身だ。だから大阪弁が自然でリアルのなんの。耳なじみが良く、違和感ない心地良さを味わえた。これは貴重なことだ。原作の世界(原作の朱川湊人も大阪出身)をリアルに表現してみせた。

花まんま

オール関西ロケも関西の空気感を表出

ツツジが美しい心優しい佳作!!

また、今作は京都撮影所を中心としてオール関西ロケで関西の空気感を堪能できる。特に何度も出てくるツツジが咲き乱れる公園(京都市・蹴上浄水場と明石市・明石海浜公園)は伏線にもなっていて美しくて印象に残る。監督は満開時期を狙って撮影スケジュールは何度も変更されたそう。ツツジって懐かしい。子供の頃、ツツジを観に遠足に行った思い出が甦った。

ツツジの花がフューチャーされる映画も珍しいのでは?  こんな美しかったのだと初めて気づいた。前述した通り、詳しく書いたら感動が半減すると思うので細部は書かないが、大切な人を失う悲しみ、兄妹愛、結婚式でのスピーチの感動、これは普遍的なもので今作もそれらを散りばめ、人々の心に感動の刻印を残す。特にクライマックスにかけての感動は半端ない。泣かされる、泣かされる。ラストショットは秀逸! 満開のツツジの花がいつまでも心に残る佳作です。

監督 前田哲 

脚本 北敬太

原作 朱川湊人

出演 鈴木亮平 有村架純 鈴鹿央士 ファーストサマーウイカ 安藤玉恵 オール阪神 

オール巨人 板橋駿谷 田村塁希 小野美音 酒向芳 六角精児 キムラ緑子

※118分

※4月25日(金) 全国公開
配給:東映
コピーライト:©2025「花まんま」製作委員会






  

  

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