一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.282「六人の嘘つきな大学生」

六人の嘘つきな大学生

就活という人生の一大イベント

面接をテーマにした秀作サスペンス!!!

おもしろいです。一体誰が犯人なのか? どういうことなのか? 最後の真相まで目が離せなかった。そして、本作の伝えたいメッセージに考えさせられた。また、よく考えられた原作だなあ、と感心。60万部のベストセラーと納得した。以前、ラジオドラマでやっていたので、ながら聞きしていたのだけど、ほぼ覚えてなかったので、こんな結末なんだ、と驚いた。

しかし、映画は素晴らしい編集で真相をたくみに隠していて、脚本と監督の手腕にも脱帽だ。巧妙な密室サスペンスの秀作である。人気企業の新卒採用で最終選考まで勝ち残った6人。会社は1ヶ月後のグループディスカッションで6人全員の採用もある、とほのめかす。6人は全員採用を目指し、定期的に集まってディスカッションの準備をすることに。仲良くなっていく6人。

しかし、当日会社側から告げられたのは「採用は1人だけ。そしてその1人を皆さんで決めてください」というものだった。とまどう6人の目に入ったのは会議室の隅に置かれた封筒。その封筒の中にはそれぞれの名前が書かれた封書が入っていて……。

六人の嘘つきな大学生


過去の過ちで人を全否定する怖さ

なにも秘密のない人なんていない

サスペンスなので、詳しくは書けないけど、封書の内容によって、6人が疑心暗疑になっていく様子がゾクゾクして面白い。それぞれの裏の顔が明らかになっていく。面接では良い子ちゃんを取り繕っているけれど、実は……。ということはありがちだ。でも、それぞれ事情はあるんだろう。

でも、その事情まで人や企業は汲んでくれるとは限らない。人は誰しも聖人では生きていけない。脛に傷持つ存在だ。過去の失敗や過ちを超えて現在があるはず。最近キャンセルカルチャーが話題だけど、その風潮も考えさせられる。深いテーマを持った作品である。

六人の嘘つきな大学生


リクルートスーツの似合う6人の俳優たち

好演の演技合戦を堪能すべし

面接は採用の肝である。人生の明暗を分ける。しかし、最近は苦労して入った会社をすぐに辞める若者が少なくないそうだ。次へと転職していく。でも、やはり、面接は採用の肝である。私も面接指導をしているが、たまに、そんなきっちり作らなくてもいいのでは? とも思う。ラフな気持ちでリラックスすることが一番大事なのだ。

まあ、それが難しいんだけど……。さて、6人の俳優が好演だ。スタジオでの密室の撮影は息がつまるものだったらしいが、誰もが一癖ありそうだと思わせる。そして、皆リクルートスーツの似合うこと。皆洋服の青山のモデルみたいだ。久々に日本映画のサスペンスで見入った一作。


監督 佐藤祐市

脚本 矢島弘一 

原作 浅倉秋成

出演 浜辺美波 赤楚衛二 佐野勇斗 山下美月 倉悠貴 西垣匠 中村青渚 木村了 渡辺大

※114分

©2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会

※11月22日(金)全国東宝系にて公開






  

  

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