賊軍の十一人の決死の闘いは
胸熱く、感動の涙を呼ぶ!!!
少人数で多勢の敵に立ち向かうって展開は「七人の侍」から「十三人の刺客」「300スリー・ハンドレッド」など多数あり、人気のジャンルだ。本作もそのカテゴリーにあり、集団抗争劇の形をとる。少人数だと、いかに工夫とアイデアと仲間の協力と団結、決死の覚悟が必要で、そこに観客は興奮して夢中にさせられる。
なんせ少人数なので、だいたいラストは予想できるのだが、本作は死屍累々の中、希望を残して感動的に終わる。ラスト泣きました。155分、見ごたえ十分の快作時代劇だ。
1868年、戊辰戦争の頃。新潟の新発田藩は密かに新政府派の官軍に寝返ろうとしていた。しかし、旧幕府軍の同盟軍が城内に押しかけてくる。官軍と同盟軍が鉢合わせて戦うと城下は戦火に巻き込まれる。すでに官軍は近くまで来ている。
戦争は絶対に避けたい家老の溝口は一計を企てる。それはとにかくしばらく官軍を引き止めるため、領地に入る入り口である砦を護るという案。その砦を護るのが、集められた十一人の罪人たちなのだ。彼らは護った暁には自由放免という条件につられ闘う羽目になるのだが、それぞれ事情を抱えた十一人と官軍、同盟軍、新発田藩の思惑は……。

個性的な罪人たちのそれぞれの活躍に注目!!
オープンセットの迫力や凄まじい
十一人のリーダー格が山田孝之演じる政という侍殺しである。彼が侍を殺したのには悲しい事情がある。また、もう一人の主役が、仲野大賀演じる新発田藩の侍、兵士郎。彼はクライマックスで素晴らしい殺陣を見せてくれる。
本作は制作費10億円という日本映画としては破格の大作だ。また、夏の暑い9月から10月の砦のオープンセットでの過酷撮影は俳優、スタッフの強固な団結心を培い、それは映像にも滲み出ていて、異様な迫力で見入ってしまう。キーになる吊り橋や物見櫓、大門なども実際に作られたそうだ。爆破シーンも実際に爆破しているという。俳優陣もどろどろの熱演だ。
無辜の民の犬死と侍の大儀の死
どちらもおのれを貫いた崇高な死
さて、私が一番面白く、怖かったのは、阿部サダヲ演じる新発田藩の家老、溝口である。腹黒く卑怯極まりないのだが、城下の民を護る為には何でもやるという男。しかし、彼のしたことは悪人、だけでは切り捨てられないものがある。
歴史は無辜の民の犠牲によって連綿と続いてきた。彼らは犬死であるが、それは決死を貫いたのだから、犬死ではないのだ。そんな彼らの壮絶死がドラマチックに心に残る。久々の噛み応えのある日本映画を見た。

監督 白石和彌
脚本 池上純哉
原案 笠原和夫
出演 山田孝之 仲野大賀 阿部サダヲ 尾上右近 鞘師里保 佐久本宝 千原せいじ
岡山天音 玉木宏 本山力
※155分
※2024年11月1日(金)全国公開
配給:東映
©2024「十一人の賊軍」製作委員会