一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.280「ブルーピリオド」

ブルーピリオド

超難関国立美大を目指す高校生

その戦いと成長をスリリングに魅せる!!!

数年前に話題になっていたマンガで、読みたいなあ~と思っていたまま、何年もたち、それが実写映画化された。楽しみに観に行った。そしたら、最近では珍しく、一時も退屈することなく画面に夢中になって観ることができた。もちろん、うとうともしていません!!!

最近読んでいる本に野口整体で有名な野口晴哉さんの弟子、三枝龍生さんのこんな言葉があった。「本当にやりたいこと、自分にとって大切なものとの出会いは珍しい。だから、それに出会ったら全力で奪い、放してはいけないのです。人生は一生気取って過ごせるほど甘くないのです。だいたい、時間がありません」

この言葉は、本作の主人公八虎が身をもって証明してくれる。八虎はそれを見つけた。そして放したくないと、行動を起こした。その姿は、私の胸を打った。きっと、誰しも胸が熱くなる、熱い想いが凝縮された一作である。

遊び友達と朝まで飲んで騒いで、そのまま登校する日々。それでも成績優秀で大学受験もしっかり考えてる「上手」に白けつつ、ソツなく生きている高校生、八虎。でも、なんだかなあ。心は空虚でなにかに飢えている。

そんな彼が出会ったのは一枚の絵。絵を描くことに興味を持った彼は美術の教師に訊ねる。「絵で食べていくことは困難なのか?」教師は国内最難関の美術大学への受験を勧める。それは東京藝術大学。八虎は両親にも内緒のまま、受験のための美術学校へ進むのだが……。

ブルーピリオド


主人公の友人役、ユカちゃんの高橋文哉

女装でも繊細で美しい姿にため息……!!

八虎が目指す東京藝大の絵画科は日本一倍率が高い学科と言われている。現役生の倍率は約200倍。受かるのは毎年5人ほどらしい。原作者の山口つばささんも東京藝大の卒業生で、これは自身の実話とも言われている。経験も才能もない八虎がいかにして、受験を乗り切っていくか、そのアイデアと過程が面白い。持たぬものには持たぬものの戦術があるのだ。正攻法で行っては勝てない。

八虎の周りのキャラも個性豊かだが、一番印象に残るのが、女装して日々を自由に過ごすかのように見える同級生ユカちゃん。彼が抱える葛藤や悲しみは癒されがたいものだが、それは美術をやっていこうとする彼の多くの引き出しになることだろう。演じる高橋文哉の女装が美しすぎて、足も細すぎて、驚いた。そして、その透明感に新人女優の出現だな、とマジで思った。

八虎役の眞栄田郷敦は静かに熱く好演。劇中の絵も何点か自身で描いたそうだ。それは高橋文哉や、天才少年役の板垣李光人も同様で、皆才能豊か、なんでもできるんですね~。すごい上手でびっくり(練習は重ねたそうだけど)。

ブルーピリオド


生まれてきた目的は自分のウキウキワクワク

を見つけることだから、本作は人生指南映画だ!!

さて、何かに夢中になって目標を達成していくって、ドラマのひとつのパターンだけど、その物語はみんな大好きなパターンだ。ほとんどのドラマがこの形式を踏襲していると思う。それは、人間が生まれてきた目的のひとつが、自分のウキウキワクワクする好きなことをするってことだから。それを見つける。見つけられるか、が人生を左右する。

「本当にやりたいことを見逃さないように、時空を俯瞰して客観的に真剣に観ていかないと、人生を棒に振ることも珍しくない」と前述の三枝さんは言う。私はもう見つけた。それを極めていくだけだ。それがまた難しいんだけど……。楽しい。まだ見つけてない人は本作を見て自分を俯瞰してみよう!!! 人生はあっという間に終わるのだから。

監督 萩原健太郎 

原作 山口つばさ

脚本 吉田玲子

出演 眞栄田郷敦 高橋文哉 板垣李光人 桜田ひより 石田ひかり 江口のりこ 薬師丸ひろ子 

中島セナ 秋谷郁甫  

※115分

※8月9日(金)から全国ロードショー






  

  

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