一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.256「アキラとあきら」

アキラとあきら

ハラハラドキドキ、感動涙と胸熱の

文句なしのエンターテインメント作!!

 

池井戸潤のドラマは観たことがない。映画はいくつか観たが、人間関係を巧妙に繋げたストーリーテラー、という印象だ。ちょっと泥臭い、暑苦しい昭和な感じ。

でも、それが面白い。今作も、ドラマになっているが、映画版はキャストを変えての登場だ。いやーっ面白かったですよ。二度泣いてしまった。脇キャラの演技で。

でも、この映画の竹内涼真は彼の持つ清廉さや、素直さ、誠実さがそのまま出た好演でキャラにぴったり。

なんとも、さわやかな風がふきぬけた。映画を観終わっても、すっきりしたカタルシスを感じられた文句なしのエンタメ作だ。

 

幼い頃に一瞬だけ邂逅したふたり。

下町の工場主の息子、山崎瑛(アキラ)。

そして大企業の御曹司、階堂彬(あきら)。

アキラの父親の工場は銀行からの融資を止められ倒産。アキラは銀行を憎むようになるが、ある銀行マンとの出会いで考えを変える。

一方あきらは骨肉の争いに嫌気がさし、父親のあとを継ぐことなくメガバンクへと就職。

そこで真の銀行マンを目指すアキラと再会する。情を大切にするアキラと合理的なあきら。

ふたりは反目しあうが、あきらの父親が倒れ、親戚にいいように繰られる弟が社長になったことで……。

 

アキラとあきら

 

 

アキラとあきら、反目しあうふたり

しかし、力合わせると……百人力!!

 

開巻のふたりの出会いが物語の始まりを感じさせてワクワクさせられる。

その後の銀行でのグループでの戦い。銀行の内情が知れて興味深い。粉飾や数字のからくりなど、へーっと見入ってしまった。

さすが、元銀行マン池井戸潤。物語はテンポ良く進み、温情を第一に考えるアキラはいきなり壁にぶち当たるのだが、這い上がってくる過程がまた見所。竹内涼真、いい役もらったね。

対する横浜流星は稀有な美貌がツンとした御曹司にこれまたピッタリ。

しかし、アキラ役の方が分がいいのである。

あまり、整いすぎた容姿は今後彼の弱点になるのでは? と少々懸念する。声も優等生すぎるきらいもするしな……。

 

アキラとあきら

 

 

理想の銀行マンの姿を描く良作だけど、

理想はいつの日も必要なのだよ!!

 

さて、なんといっても一番の見所は後半のアキラの銀行マンとしてのがんばりなのだが、これまたそういう方法があるのね、と目から鱗。そのアキラの案をことごとく反対する上司(江口洋介好演!)がほんと嫌味な男でイライラ。ラストまでハラハラさせられる。

ちなみに、私が涙したシーンは前半で牧師であるアキラの工場の従業員(塚地武雅)が幼いアキラに「神様は越えられない試練は与えないんだよ」と幼いアキラに諭すシーン。

もうひとつは後半のあきらの叔父(ユースケ・サンタマリア)が泣き出すシーンだ。

ユースケも憎憎しい叔父を演じて素晴らしい演技を見せてくれた。脇が皆秀逸である。

 

私は銀行員て、しょせん金貸しでしょ、という考えの人で、良心的な銀行員なんて今はいないと思っている。

たぶん、それは遠からず当たっていると思うのだが、こういうエンタメになって夢を見させてくれて楽しませてくれる分には面白い職業だと思う。良作である。

 

 

 

監督 三木孝浩 

原作 池井戸潤

脚本 池田奈津子 

出演 竹内涼真 横浜流星 高橋海人 上白石萌歌 奥田瑛二 石丸幹二 ユースケ・サンタマリア

江口洋介 児嶋一哉 満島真之介 塚地武雅 宇野祥平

 

※128分

Ⓒ2022「アキラとあきら」製作委員会

2022年8月26日(金)より全国東宝系にて公開
 

 

 

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