一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.245 劇場版「きのう何食べた?」

きのう何食べた

ゲイカップルの、悩みもあるけど
美味しい日常を描くラブ・コメディ!!

よしながふみの漫画の映画化だ。最初の頃は漫画を読んで、出てくる料理を作ったりしていたけど、連載が長期化するにつれて読まなくなった頃ドラマ化され、何本か観た程度だった。
そして映画化。
よしながふみはもともとはBLの漫画作品で知ったのだけど、「大奥」を描き始めてBL作はこの原作くらいになってしまい、寂しい思いをしていた当時を思い出す。
原作もBLというよりかは(連載が青年誌だし)料理漫画みたいなテイストでかるーくゲイカップルの日常を活写したものだ。それは映画もそうで、かるーく、しかも、爆笑シーンもあり、なんだか、ハンサムな大柄男ふたりがキッチンに立って包丁使ってるのっていいなあ~、絵になるなあ~とニマニマしてしまう小品なのだ。
どうも最近重い映画多くて、こういう楽しい映画ってほんと、癒される。
世の中おかしなことばっかでいやんなるけど、憩い、な感じ。
超お薦めしますよ~ん。

きのう何食べた

 

内野聖陽の濃いキャラに爆笑! もあり
西島秀俊の笑顔に見惚れる

弁護士のシロさんとその恋人で美容師のケンジ。
ふたりは同棲中のゲイカップルで料理上手のシロさんが、いつもケンジのために料理を作っている。
シロさんは、ケンジを両親に会わせるが、母親は理解を示しつつも、もうケンジには会いたくない、とシロさんに言う。
それをシロさんはケンジに告げられないでいた。
そしてケンジの誕生日祝いにふたりで京都旅行に出かけるのだが、ケンジはシロさんのあまりのもてなしぶりに、何かを隠しているのでは? 疑心暗疑になるのだが……。

最初の京都旅行のシーンがとにかく素で楽しそうでほのぼの。
ほんとに素で楽しんでたな、きっと。
それが分かるからこちらも楽しい。
ふたりの、ゲイとして両親に認めてもらうとか、老後の問題とか、いろいろ枝葉があり、料理シーンもあり盛りだくさんで見飽きない。
ご近所さんや、友人のゲイカップルのケンカや、ケンジの美容室の新人美容師と恋人(女)の関係など、ふむふむと味付けが面白い。
でも、なによりこのふたりのキャラが濃くて面白いのだ。特にケンジ役の内野聖陽。
イカツイ体にゴツイ顔! どう見ても劇画調というか、ヤクザものとか「とんび」のトラック運転手ヤス、なんだけど、とことん役者魂みせてゲイになりきり演技。
さすが、どこまでも演技派!! 役者バカ。コメディもいけまっせ。
しぐさとか指先の使い方とか目つきとかもう、クリス松村なのだ! それが可愛かったりするんだけど。
シロさん役の西島秀俊はそのままって感じだけど、「ドライブ・マイ・カー」とかのシリアス演技じゃなくて、終始笑ってるから、こういう西島秀俊もいいなあ、と見惚れてしまった。

きのう何食べた

 

料理創作シーンもふむふむと楽しい
ニコニコ笑顔で劇場を後にできる!

料理を作る過程もお楽しみ。
しかし、今回はさっとできる料理じゃなくて、林檎の砂糖煮とか、ローストビーフとか、ぶり大根とか、ミートボールとか、なんか手間かかるうーってのばっかで、作ってみるか、という気にはならんかった。
でも、作る過程を見るのは楽しいし、食べてるのを見るのも美味しそうで楽しかったけどね。
よしながふみは料理上手みたいなので、さすが詳しくて漫画でもレシピは毎回興味深かったことを思い出す。

でも、毎回ケンジがシロさんに抱きつこうとしたり、キスしようとしたらシロさんが巧妙に逃げるのはなんでだろ? わざとかな? そういうラブラブシーンもあってもいいのに、とちょっと思ってしまった。
でも、ほんとニコニコで劇場を後にできるラブ・コメ? です。

 

監督 中江和仁
脚本 安達奈緒子
原作 よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社「モーニング」連載中)
出演 西島秀俊 内野聖陽 山本耕史 磯村勇斗 マキタスポーツ 高泉淳子 松村北斗(SixTONES) 田中美佐子(友情出演) チャンカワイ 奥貫薫 田山涼成 梶芽衣子

※2時間
©2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 ©よしながふみ/講談社
※11月3日(水・祝)より全国東宝系にて公開

 

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