一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.244 「ロン 僕のポンコツ・ボット」

ロン僕のポンコツボット

現代社会へのメッセージと愛とがたんまり
ハートウォーミング・アニメに涙腺決壊!!

ラスト、泣いてしまいました。
なんだか込み上げるものがあって、ラストクレジットでもうおっと涙がボロボロ。
たぶん、試写室で泣いてた人は私だけ……かも? なんでそんな泣けたかなあ? とずっと考えていたのだけど、思い当たったのは、ラストが未来に繋がっていたから。
未来がひらけていた。失うものがあったとしても、未来は大丈夫、というメッセージがあったからじゃないかな。
私はそういう、これから……という話が大好きなのです。たぶん、好きな人は少なくないと思う。
だから、劇場で公開されたら、きっと涙する人が少なからずいる作品だと思うよ。

今作はイギリスの新しいアニメ製作会社の作品をディズニーが配給している。
だから、舞台もアメリカじゃないし、町の様子も近くに森があったりして雰囲気が違う。
そして主人公の少年はブルガリア移民の息子ときた。
監督も女性(共同監督)なのだ。新鮮な風、を感じながら楽しく日本語吹き替え版で観た。
(素晴らしい吹き替え版だった。まったく違和感なし!!)

ロン僕のポンコツボット

 

暴走デバイス・ロンのハチャメチャキャラ
そのぶっ飛びぶりに快哉!!

さて、お話はものすごく現代のSNS、PCに頼るデジタル社会への痛烈なメッセージが込められている。
私とか、まったくデジタル機器や通信、SNSにも疎い人なので物凄い共感の嵐だった。
主人公は喘息持ちで、友だちのいない少年バーニー。
母親がいなくて父親とおばあちゃんの3人家族。
学校では皆がBボットというロボット型のデバイスを持ち、それが彼らの親友。
Bボットは友だちを探してくれるし、持ち主のことを何でも分かってて、いろんなことをしてくれる夢のようなデバイスだ。
だけど、バーニーはそれを持っていない。だから、いつも仲間はずれ。
でも、やっとそのボットを買ってもらったんだけど、それは不良品で機能がインストールされてなくて、バーニーの指示などどこ吹く風。
やりたい放題のポンコツでぶっ壊れた制御不能の行動にバーニーは振り回される。
しかし、そのボット、ロンにバーニーは「友だち」の定義を教え込んでいく……。

このむちゃくちゃ狂った暴走ロボットのようなロンの行動がハチャメチャで、すごく楽しい!
ぶっ飛んでいるのだ。言わば狂犬。
その狂犬の機械と友情を結んでいく話。
ロンのルックスは「オバケQ」みたい。丸くてちっこくて、とにかくカワイイ。
でも、狂犬(笑)なのだ。そのギャップが笑える。
心を持たないロボットに心がインストールされる話はどんなものでも感動的。
子供たちが人間同士で会話せずに、ボットとばかり遊ぶシーンに胸が痛む。
そのバーニーの同級生たちも個性豊かでしっかり話を展開させてくれる。
クライマックスのロンとバーニーの活躍はハラハラドキドキ。
でも、えっという展開が待っていて、よくある展開ではあるのだけど私は涙腺決壊!! 前述のていたらくとなってしまった。
ここにも、しっかり製作者のメッセージがあるのだ……。

ロン僕のポンコツボット

 

友だちって何? ほんとは
友だちいなくても、大丈夫なんだよ!

友だちってなんだろ? と今更ながら考えさせられる。
人間との触れ合いが制限されるコロナ時代の今。
友だちは人間じゃなくてもいい。でも、人間の友だちもやっぱりいい。
そんなことを考えた。実際問題、友だちっていなくても全然大丈夫だと思うけどね。ハハ。
私が一番大好きだったキャラはバーニーのおばあちゃん。
元共産党員という過去も笑えるし、これもぶっとんだキャラなのだ。わが道を行くタイプ。ロンと似てるタイプかもだけど、
私はおばあちゃんと友だちになりたいよっ!!
でも、全てのキャラに愛を感じたキュートで心震える傑作です!!

 

ロン僕のポンコツボット

 

監督・脚本 サラ・スミス
監督 ジャン・フィリップ・ヴァイン
脚本 ピーター・ベイナム
声の出演 関智一 小薬英斗

※107分
©2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.
※10月22日(金)全国公開

 

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