一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.240 「竜とそばかすの姫」

竜とそばかすの姫

世界を変えるには、行動すること!!
世界に放つ日本の底力を見せる傑作アニメ!!

開巻の映像から驚いた!! すっごい爆発! 花花花!
これは「サマーウォーズ」の世界再来!
感動も興奮も再来か! と胸が高鳴る。
細田監督の最新作は「うわぁ~!」と口が開いたままの衝撃の映像と歌声で私の心をひっさらった!

幼い頃に事故で亡くなった母親。
その死を今も受け入れることができない、かなり地味めの高校生、鈴。
父親と二人暮らしながら、父親にも心を開くことができないまま。
母親とよく一緒に歌を歌ったけど、ずっと歌えないでいる。
ある日、友だちに誘われインターネット上の仮想世界に参加することに。
そこでは自分の分身を作り、まったく違う人格で別の人生を生きることができるという。
鈴は「ベル」と名乗り、歌えなかった歌をその空間では朗々と歌う。
瞬く間に稀代の歌姫として大人気になっていくが、突然「竜」と言う凶暴な生き物が現れ、ベルの歌をむちゃくちゃにする……。

竜とそばかすの姫

 

中村佳穂の歌声に魂をもっていかれる
ベルのキャラ同様爆発する奇跡の声!!

仮想世界の豪華な美女のベルと現実の悩み多き高校生、鈴。
高知の田舎の高校生、鈴の淡々とした痛みに満ちた日常の描写が繊細すぎて見入ってしまう。
そして、ど派手な仮想空間のはじっけぶりとめくるめく映像。
そして、なんといっても、ベルの歌声!! これは魂をもっていかれました。
鈴役に大抜擢の中村佳穂という全然知らなかったミュージシャンの天かける声。
息絶え絶えのウィスパーボイスが印象的なメインテーマはキングヌーの常田大希率いるみれにあむ・ぱれーどの作。
なんて良い曲。いつまでも耳に残る。
ベルのキャラクターも他のジブリ作品みたいなキャラと全然違ってスタイリッシュでカッコイイ!
そしたらキャラクターデザインを「アナと雪の女王」のジン・キムって人が担当してるらしく、ちょっとアナ雪ぽいけど、超カワイイ! 超オシャレ! 一遍に好きになった。

竜とそばかすの姫

 

クライマックスは鈴の勇気と行動力に
涙がほとばしる!! 心が解き放たれた!

盛りだくさんの内容ながら、やはり現代の世相を現わしている話がしっかり盛り込まれていて、話自体はとても暗い話である。
それは最近の細田作品の特徴であるかも。
それが苦手で私は「サマーウォーズ」からこっちの作品は……だったのだけど。
今作は暗さを上回る仕掛けが素晴らしくて夢中になった。
そして、クライマックスの大感動の歌のシーンと、ラストは涙涙だった。
素晴らしい希望を感じさせるラスト。これはカンヌ映画祭に選出されるのも分かる。
すごく世界に通用する話だし、日本のアニメのレベルの高さに今更ながら驚愕する出来だもの。
これは全世界が熱狂するアニメだと思う。
とても繊細。この繊細さは日本のアニメの真骨頂だ。
しかも、ベースは「美女と野獣」だもん。世界に受けないわけがない。

竜とそばかすの姫

 

「サマーウォーズ」の時代は終わった。
次の時代は私たち一人一人が変えて行く!

「サマーウォーズ」は2009年。それから12年たっての新作。
12年前みたいなお気楽さは日本の社会にはないんだろうな。
今は世界にもない。でも……。と思う。
見てるだけ、批判するだけは誰でもできる。
でも、鈴の母親みたいに、鈴みたいに、行動することは見てるだけとは雲泥の勇気がいるけれど、それをしなくちゃ!! なのだ。
じゃないと、世界は変わらない!
考え深い一作でもある。

監督・脚本・原作 細田守
声の出演 中村佳穂 成田凌 染谷将太 玉城ティナ 幾田りら 森山良子 清水ミチコ 坂本冬美
岩崎良美 中尾幸世 森川智之 宮野真守 島本須美 役所広司

※122分
2021 スタジオ地図
※2021年7月16日(金) 全国東宝系にて公開

 

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