一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.238 「1秒先の彼女」

1秒先の彼女

久々台湾映画の傑作登場!!
新味ラブ・ストーリーの心地良い大号泣!

台湾映画って独特のテイストがあって、私は80年代からホウ・シャオシェン監督作品で台湾映画に魅了されたわけだけど、なんか胸の中の秘密で懐かしい部分をきゅっとつかまれる感じ。
私にとっては永遠に不思議で大好きな映画なのだ。
最近とんと台湾映画は日本で公開されないけど、見る度に、台湾の空気感を思い出す。
映画はほんと旅行できなくてもそこへ一足飛びに行くことができる。
台湾にまた行きたいなあ~。いったいいつそれは叶うんだろう。
本作も台湾の匂いと風を思い出した。
1997年の傑作「ラブゴーゴー」の監督、チェン・ユーシュン監督の最新作だ。
「ラブゴーゴー」はコメディなんだけど、私は涙した。
本作もコメディテイストのラブ・ストーリーなんだけど、私はラスト大号泣!!
涙が吹き出して飛び散ったくらい号泣した。これは、「冬のソナタ」の最終回を観たときくらい。
本作で思い出したけど「無言の丘」(台湾映画。ワン・トン監督作)を香港映画祭で観た時くらい、の嗚咽の大泣きだった。
チェン・ユーシュン監督の作品はいつも私の中の溜まったものを刺激して涙で気持ちよく流してくれる。

1秒先の彼女

 

人よりワンテンポ早いアラサー女子
実は彼女は密かに愛されていたのだ!

さて、お話は奇想天外。ファンタジーとリアルな現実社会、一途な想いを絶妙に融合させて一人の男の愛を成就させた。
郵便局で働くシャオチーは何をやるにもワンテンポ早くて、写真を撮る時も必ず目をつぶってしまうというちょっと変わったアラサー女子。
今日も毎日切手を一枚だけ買って手紙を出しに来る、とろいオタク青年にちょっといらっとしながらも、変わり映えしない毎日が続く。
しかし、ある日イケメンなダンス講師と知り合いバレンタインデートすることに。
が、目覚めるとなぜか日焼けしたまま翌日に!? 私のバレンタインはどこに??
シャオチーの消えた一日には驚きの秘密が隠されていた……!

シャオチーかわいい。たぶん、一緒にいたらかなりイライラすると思うけど、表情がくるくる変わって、せっかちだけど親しみやすいオキャンなところや、すらっとした体形も好感持てて観てすぐ好きになった。
彼女の生活自体も笑える。
店で無料のスープだけを大量お持ち帰りしたり、夕食はそれに春雨を入れただけのものだったり、デートなのにポップコーンをガツガツ食べて大笑いしたり(しかも人より笑うのが早い)。キャラ立ちまくり!

1秒先の彼女

 

そんなことあるわけない? いやいや
世の中は不思議とミラクル、楽しさに満ちている

そして、彼女がなくしたバレンタインデーの一日の秘密がまた驚き。
そんなことあるわけないんだけど、あるかもしれない、あったら素敵だ、というところから「物語」は紡がれるのである。
世の中に不思議は溢れている!! となぜか元気になる。
私たちは知らず知らずのうちに、常識やあたりまえや、日々の生活に慣らされているんだけど、そうじゃないんだって、意識の転換や気持ちの吟味、忘れていたことを思い出すこととか、いちいちしなくてはいけなかったんだ、ということを本作は教えてくれる。
そう、人生はそうやって丁寧に生きていくこと。それこそが大切なことなんだって。
巧妙に作られた話の構成に感心しながら、ラストはやられたーっの大号泣。
チェン監督の構想20年という脚本はすっばらしいものだ。
「ラブゴーゴー」から24年。円熟の傑作だ。
こんな新味のラブ・ストーリーがあるなんて! まだまだ人生に楽しいことは山盛りだ! と確信したよ。

 

監督・脚本 チェン・ユーシュン
出演 リウ・グァンティン リー・ペイユー ダンカン・チョウ ヘイ・ジャアジャア
リン・メイシュウ グー・バオミン チェン・ジューション リン・メイジャオ
ⒸMandarinVision Co, Ltd
6月25日(金) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー

 

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