一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.237 「RUN/ラン」

RUN

母親から逃げる車椅子の娘
手に汗握るハラハラドキドキサイコスリラー!!

「search/サーチ」というすべてパソコンの画面の中で話が展開される驚きのデビュー作で注目された、インド系アメリカ人のアニーシュ・チャガンティ監督の新作。
「サーチ」は行方不明になった娘を探す父親の話だったけど、今度は娘を溺愛する母親と娘の話。
「サーチ」はそのアイデアに感心したけど、ちゃんとラストは感動させてくれて、私は涙したほど。
だから今度の新作も楽しみに観た。
で、観終わって「おっもしろかったぁ~!!」と思わず宣伝嬢に電話をかけそうになったくらい。
オーソドックスなサイコスリラーなんだけど、とにかくハラハラドキドキ。手に汗にぎってしまった。
ラストは怖~いよおーっなんだけど、大満足の90分だった。

郊外の一軒家に暮らす母親ダイアンと娘クロエ。
クロエは幼少から慢性の病気で車椅子と日々大量の薬が欠かせない。
理系の知識が豊富で好奇心旺盛、頭のいいクロエは今は大学からの合否の知らせを首を長くして待っている。
そんなある日、母親に処方された薬が自分の薬箱に入っていたことから、クロエは母親に不審を抱きだす……。

RUN

 

機知とアイデアで絶体絶命を回避!
その逞しさと恐怖の表情に感動!!

理系の知識とアイデアで母親から逃げるクロエの機知に驚く。
そんなやり方があったのか? と開眼しきり。
しかも車椅子での逃走は観てるだけでもう「無理だろっ」「ああっ」と痛々しくて目が離せない。
また、この新人女優(キーラ・アレン)の表情が凄まじく鬼気迫るもので、娘がどれだけの恐怖か伝わりまくる。
そしてなんとこの女優、ラストであれっ? と思ったのだけど、プレスを見ると実際に足が不自由で車椅子で生活してるそうで、さらに驚かされた。
あれだけの体力がいるアクションを演じたわけだ。
もちろん、事前に体力を作り万全で挑んだそうだけど、あっぱれの体当たり演技。素晴らしい!!
キーラが今後もたくさんの映画で活躍することを切に願う。

RUN

 

母親と娘の永遠なる不協和って共感
どちらも依存し続けるのか、決着つけるのか?

さて、絶体絶命のクロエの大活躍に対して、それを追う母親のエゴの恐ろしさよ。
それはもはや愛ではなくて執着と狂気。
母親によって台無しにされたクロエの人生は……と思い馳せる。
しかし、家族に振り回される人生もまた彼女の人生なんだろう、と思う。
母親と娘って近年毒親として注目を集めてるけど、母親と息子より微妙なケースが多いような気がする。
かくいう私も母親との関係は忸怩たる思いがある。
これもまた、私の人生のカルマだと真摯に向き合うつもりだけど。
ま、本作は母親って、娘って、ってちらと思いもするけど、文句なしに夢中で楽しませてくれる秀作なこと間違いない!!

 

監督・脚本 アニーシュ・チャガンティ
脚本 セヴ・オハニアン
出演 サラ・ポールソン キーラ・アレン

※90分
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※6月18日(金)から全国ロードショー

 

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