身につまされる秀作ミステリー
安定のアンソニーのアカデミー演技!
先日発表されたアカデミー賞で最優秀主演男優賞を本作でアンソニー・ホプキンスが受賞した。
81歳(アンソニーと名前も年齢も同じに設定しあて書きへと脚本を変更)のボケ始めた? 壊れていく? 老人を演じている。
相変わらずの巧みないつも通りの演技。
取り立ててアカデミー演技ということもない、安定の演技だ。
ロンドンで一人暮らしをするアンソニーは介護人が何人も辞めてしまう気難しい老人だ。
今日も一人娘のアンが、介護人から辞めたいと言われて父親の元へやってきた。
いつまでもこんなことが続くと施設に入ってもらわないと……とアンは匂わす。
しかも、彼女は婚約してパリに住むから頻繁には会いにこられないと打ち明ける。
怒るアンソニー。アンは週末には会いにくるから、と父親をなだめる。
翌日、アンソニーがキッチンで紅茶を入れていると、リビングに見知らぬ男が座っていることに気づく。
男はアンの夫だと名乗り、ここはアンと自分の住む家だと主張する。
混乱するアンソニーのところへアンが買い物から戻ってくる。
しかし、その女は見知らぬ女で……。
謎が謎がどんどん展開していく
頭をフル回転しながらついていくも……
アンソニーと同じく、観ているこちらも混乱する。
あれっ? どいうこと?? となって頭をフル回転するのだが、次第にこのミステリーに絡めとられてしまう。
だんだんに解き明かされる謎もあるのだが、アンソニー同様私も混乱を抱えたままラストに突入する。
そして、ラストは……。
本作はもともと舞台の映画化だそうで、メインの舞台がアンソニーのアパートで、ほとんどそこで話が展開されるので舞台みたいだなあ、と思いながら観ていた。
大ヒットした舞台らしく巧妙に話が作られている。
映画化しても、飽きさせることなくぐんぐん観客を引っ張っていく。
謎がなかなか解き明かされないからだ。
アンソニーは認知症なだけなのか? ただの彼の妄想なのか? それとも、アンたちが騙しているのか? はたまた霊の世界?? 推理するも分からない。
ラストにたどり着くまでの、気持ちが右往左往させられるのが醍醐味だろう。
これはとても怖いラストです!
皆誰もがこうなり得る話なのがより怖い!
アンソニーの住むロンドンの高級アパートが良い感じだ。
お金持ちでインテリで気難しい老人にピッタリの住まい。
シンプルで使い勝手の良さそうなキッチン。重厚で居心地の良いリビング。
そこでの日常生活をもっと見たい、と思ってしまった。
娘の父親への愛と献身の姿も印象的だ。
アンの着る服もカラフルでおしゃれ。私の実家の父親も高齢で、たぶん認知症かなり入っていると思う。
母親が一人で介護に大変なのだが、父親の頭の中もアンソニー状態なのかと察する。
そういう意味では身につまされる話である。
が、私自身も最近物忘れが、えっ! てくらいになってて、記憶力を誇っていただけにちょっとショック。
先日は6×8=46と言ってしまい、それがしばらく分からなかった!! ヤバイですよね……。
わが身に置き換えられる話ってのが、より怖い秀作ミステリーです。
監督・脚本 フロリアン・ゼレール
脚本 クリストファー・ハンプトン
出演 アンソニー・ホプキンス オリヴィア・コールマン マーク・ゲイティス
イモージェン・プーツ ルーファス・シーフェル オリヴィア・ウィリアムズ
※97分
配給:ショウゲート
※5月14日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー
© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINÉ-@ ORANGE STUDIO 2020
公式サイト:thefather.jp
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