一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.229 「ファーストラヴ」

ファーストラヴ

父親を刺し殺した女子大生の心の傷と
心理師のトラウマの浄化に涙!

辛い映画です。
でも、今こういう映画が作られる意味がとても深い。
話題になり、多くの人が観る事の意味も深い。

父親を刺し殺した女子大生が逮捕される。
彼女の動機は不明で「そちらで動機は見つけてください」とそっけなく表情もない。
彼女、環菜の言動にひっかかるところがあり環菜を取材することになった公認心理師の由紀。
由紀は因縁のある義理の弟とともに環菜の面会を続けるが、そこであらわになったのは、環菜のいびつな家庭環境だった。
由紀は次第に自分の父親のあることを思い出し始め……。

 

隠された過去にドキドキ息詰まる
サスペンスフルな展開に魅了される

少女は父親や母親の言動に傷つき、それを癒してくれる青年と知り合うが、青年もまた、少女を傷つける。
少女のSOSは誰にも届かなかった、ということにうな垂れる。
環菜の証言から由紀が義理の弟と辿る環菜の衝撃の過去。
そして自分の隠し続けたトラウマ。
映画は短いフラッシュバックを何度も挿入し、それが段々長くなり、由紀のトラウマの全容が見える。
と同時に環菜の事件の真相が表出するのを絡め合わせて複雑に見せる。
だんだん、とんでもない真相が隠れているのでは……とこちらはじっと息を詰めて緊張してしまう。
ドキドキさせられサスペンスとして魅せる手法はさすが、堤幸彦監督だ。

ファーストラヴ

 

北川景子の感情爆発にホロリ!
芳根京子の憑依演技に心掴まれる!

北川景子が本作のために女優になって初めてショートカットにしたそうだが、熱のこもった演技を見せてくれる。
特に隠し続けてきたトラウマを夫に吐露し由紀が感情を爆発させるシーンでは思わず涙!
優しすぎる夫役の窪塚洋介が引きの良い演技で惚れた。
こんな良い人の役もできるんだー(笑)。
そして、一番の収穫は環菜役の芳根京子だ。
クライマックスの由紀と環菜との拘置所での面会シーンは彼女の演技が凄すぎて引き込まれた。
涙は韓国俳優のようにボロボロととめどなく流れかつ美しい!
環菜の悲しみが流れ出るようで胸打たれた。
芳根京子は以前から「上手いなあ~」と思っていたが、堤監督も大絶賛!
ちょっと北川景子、負けてたかも……。
でも、ふたりの魂の交歓は見ごたえ十分の名シーンとなっている。

ファーストラヴ

 

魂は傷つかない
光差すラストに魂の安堵を見る

さて、今現在も親によって傷つけられている子供たちはたくさんいることだろう。
彼らは助けを求められず、大人になっても傷つき続ける。
その傷は一生癒されることはないのか? そんなことはない。
そんなことはないのである。魂は傷つかない。
それを教えてくれる人との出会いが必要だが、求めれば与えられる、と私は信じている。
辛い、苦しい映画だけど、希望を提示することで光を見出すことが出来る。
光、それこそ私たちの本当の姿なのだから。

 

監督 堤幸彦
原作 島本理生
脚本 浅野妙子
出演 北川景子 中村倫也 芳根京子 窪塚洋介 木村佳乃 板尾創路 石田法嗣
佐戸井けん太 高岡早紀 清原翔

※119分
Ⓒ2021「ファーストラヴ」製作委員会
※2月11日(木・祝)から全国ロードショー

 

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