一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.228 「パリの調香師 しあわせの香りを探して」

パリ

高慢で不器用な女性調香師と軽妙運転手
関係の配合は最悪から最高へ!

匂いに敏感である。
きつい柔軟剤の匂いや飲み物の甘い合成香料の匂い、シャンプーの匂い、飲食店での漂白剤の匂い、嫌いな成分が入った香水など、日常で匂いで気分が悪くなることが少なくない。

時には頭が痛くなって吐きそうになって、お腹が痛くなったりもする。
それだけに、香水にも独自の好みがある。
信頼して一番好きなブランドはゲランだ。
まず「シャリマー」の虜になり、次に「ルール・ブルー」に嵌った。
「ミツコ」や「夜間飛行」などゲランのクラシックな名香が大好きだ。
天然香料のみというところも気に入っている(全部がそうではないらしいが)。
なので、本作も興味深く観た。
女性の調香師は珍しいので、どんな話なのかと思っていたが、匂いに関する仕事でこんなことも調香師はするのか、と驚くこともあり、また友情と再起の話でもあり、見終わってほんわりさせられる佳作だった。

かつてディオールの天才調香師だったアンヌは4年前に鼻が効かなくなり、今は企業の地味な仕事ばかりで地方に出張する日々だ。再び香水の調香をしたいと思っているが、エージェントは聞き入れてくれない。
そんな日々に現れた運転手のギヨーム。
ギヨームは娘と一緒に暮らしたいが、仕事をクビになりそうで広い部屋を借りることもままならない状態。
アンヌの地方出張に同行するが、アンヌの高飛車な態度にキレてしまう。
しかし、歯に衣着せぬギヨームの物言いに惹かれたアンヌは再度彼を運転手に指名する。
また旅の途中でアンヌはギヨームが優れた嗅覚を持つことを知る。そして……。

パリ

 

アンヌの高飛車な態度も弱さも分かる
調香師の驚きの仕事の数々が興味深い!

人と関わることが苦手で傲慢なところがあるアンヌのギヨームへの高慢な態度にびっくり!
ここまで感じ悪いとイジメとしか思えないほどのやりたい放題、言いたい放題。
運転手を家来としか思ってない。しかも、お礼もなし。
これをフランス人女優がやると、妙にリアル(笑)。
でも、実はアンヌってすごい不器用で弱気なのが分かってくると、妙に共感したりして(笑)。
かわってギヨームは口が上手くて世の中の隙間を上手にかいくぐって生きて行けそうな図太さと軽妙さを持つ。
二人の相性は最悪かに見えたけど、実は最高なのだと分かるまでのやりとりが本作の見どころ。

アンヌの仕事でへーっと思ったのが、洞窟の壁画を調査し、そこで当時漂っていただろう香りを再現する仕事や、工場の煙の匂いを消す仕事、高級鞄の皮の不快な匂いを消す依頼など、こんな香りを繰る仕事もあるのかと正直驚いた。
匂いや香りがいかに私たちの生活に入り込んでいるかが分かるエピソードだ。

パリ

 

自然の中の自分の好きな香りを振り返る
素敵な香りは人生をふくよかにしてくれる

さて、合成の匂いに囲まれた現代社会だけど、春の沈丁花やくちなしの香り、新緑の匂い、春の夕暮れの匂い、秋の金木犀、いちじくの葉の香り、冬の朝の匂いなど、自然の匂いや香りはほんとうに至福を感じる瞬間だと改めて思う。
間違いなく人生をふくよかにしてくれる。
そんな匂いや香りに関してアレコレ思いをめぐらせてくれる作品でもある。
私も最近はゲランより、いちじくの葉の香りの素晴らしさに気づいていちじくの葉のコロンを探しているのだけど。
でも、今はあまり香水は必要ないかも。
そんな境地になったことも、自分の発見であり日々の楽しみだと思う、新年のある日です。

 

監督・脚本 グレゴリー・マーニュ
出演 エマニュエル・ドゥヴォス グレゴリー・モンテル セルジ・ロペス
ギュスタヴ・ケルヴェン ゼリー・リクソン ポリーヌ・ムーレン

※101分
© LES FILMS VELVET – FRANCE 3 CINÉMA
※2021年1月15日(金)より シネ・リーブル梅田
1月29日(土)より シネ・リーブル神戸、京都シネマ

 

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