一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.217 「オフイシャル・シークレット」

オフィシャルシークレット

自分の信ずるところを突き進む勇気
主人公の行動に心の垢が落ちる佳作!

最近、矢作直樹さんの「ねばならないを捨てて生きる」という本を読んだのだけど、その中に「陰謀関連の情報は、たくさんの嘘の情報の中に紛れ込ませて世の中に提示される。そして、本当の陰謀は我々一般人には決して分からないように影で行われている。分かる情報というのは陰謀ではない」という旨のことが書いてあった。

近頃、いろいろ多方面な「闇」の部分が暴かれつつあるが、矢作さんの言葉で「そうなのか。我々が知らなくていいこと。知らないことはやっぱり厳然とあるのだな」と少しゾッとした。

本作も、明るみに出たことだけど、本当は裏にもっと怖いことが隠されているのだろうと改めて思った。
情報はそういう意味でも鵜呑みにせず、吟味に吟味して確認し扱わなければならない。

オフィシャルシークレット

 

国家機密漏洩の罪と戦争を起こす罪
キャサリンがしたことは至極まっとう

2003年の英国。
政府の諜報機関で働くキャサリンはイラク戦争が起こりそうな気配に心を痛めていた。
彼女の仕事は各国から送られてくるメールを翻訳する翻訳分析官。
ある日キャサリンはアメリカの国家安全保障局から送られてきたメールに驚く。
そこにはイラク戦争を起こさせるための情報操作と工作の指示が書かれていた。
キャサリンは悩んだ末にそのメールをマスコミにリークする。
その情報は英国「オブザーバー」紙のトップを飾り、キャサリンは自らがリークしたことを名乗り出て、国家機密漏洩の罪で逮捕される。
しかし、彼女の行為も虚しくイラク戦争は開始される……。

キャサリンがリークした情報が世に出るまでの過程や、記者の活躍、キャサリンの苦悩、弁護士の協力などが、スリリングに展開され息詰まる時間が続く。
キャサリンがしたことはまっとうなことだろう。
たとえ、自分が不利な目に遭うのが分かっていても見過ごすことはできない。
凄まじい正義感と勇気である。
無駄な戦争がこれで防げるのなら、と誰しも思うが、行動するかどうかは別である。
多くの人が行動できない。
森友学園問題で自殺した近畿財務局の赤木さんも、改竄を命じられ抵抗も虚しく従い挙句自殺してしまった。
日本人は自殺しちゃうんだよね。
でも、マスコミにリークしてももみ消されるのが落ちだろうな……。
政府職員のキャサリンが「政府は変わる。私は国民に仕えている」と言った言葉は赤木さんの「国家公務員の私は国民に仕えている」と言った言葉と同じだ。

オフィシャルシークレット

 

私たち一人一人がどう生きるのか?
この世がどんな世界でも声は上げ続ける

本作のラストは驚きだが、ここにもまた政府か、もっと大きなものの力が働いたのだと匂わせる。
そうやって目に見えない力で世界は動かされている。
でも、それは闇の力だけではないのだ。
光の力も歴然とあるのだ。
闇が深いほど、光は燦然と輝く。
私たち人間一人一人が光輝かなければならないのだと改めて思う。それが徒労でも。
徒労ではないと信じて、自分が信ずるところを勇気を持って行動する。
そのことの大切さをキャサリンは教えてくれた。

声は上げなければ。上げ続けなければ。
そんな気持ちを心に刻印させられる佳作である。

監督・脚本 ギャヴィン・フッド
脚本 サラ・バーンスタイン グレゴリー・バーンスタイン
出演 キーラ・ナイトレイ マット・スミス マシュー・グード
リス・エヴァンス アダム・パクリ レイフ・ファインズ
※112分
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東北新社 STAR CHANNEL MOVIES

※8月28日(金) 大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば
京都シネマ、TOHOシネマズ西宮OS 他にて全国ロードショー
9月4日(金)   シネ・リーブル神戸

 

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