ラスト、怒涛の感動が押し寄せる
コメディタッチで泣かせる大感動作!!
素晴らしい映画だった。ラストは号泣してしまった。
なんて素敵なワンカットで終わることか。
ラストのリルケの言葉にさらに涙がほとばしった。
10歳のジョジョは空想上の友だちのアドルフ・ヒトラーから励まされていた。
ジョジョは今日から青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加するのだ。
第二次大戦下のドイツの子供であるジョジョはもちろんヒトラー支持者。
りっぱなナチスの党員になるために日々精進していた。
美しく強い母ロージーとふたり暮らしのジョジョは気が弱く優しい性格。
それをアドルフはいつもいろいろ言ってアドバイスをくれる。
そんなジョジョの家にエルサというユダヤ人の少女が隠れていた!
敵が自分の家に隠れていたことに驚いたジョジョだが、次第に彼女と打ち解けていく……。
ジョジョ役の子役、脇の役者の魅力
ジョジョの変化と成長と見所満載!
なにも疑わずナチス信望者のジョジョの単純な快活さがかえって爽快。
エルサと関わることで自らの心に従うようになる。
その変化の過程とエルサへの淡い恋心が見所のひとつだ。
ジョジョを魅力的に演じた
11歳のローマン少年は今作が演技初体験のデビュー作。
驚くべき自然でキュートで真摯な演技。
彼を観ているだけで幸福な気持ちになった。
ずっと観ていたい、と思わせる魅力が俳優には不可欠だが、どうぞ今後素敵な大人の役者になっていって欲しい。今作だけで終わらずに。
そして、魅力的な脇役たち。
美しく優しく強い母、ロージー。
いつもジョジョを叱咤激励し、愛し、笑顔にする。
彼女の着るクラシックな服や帽子、靴がお洒落で素敵(足元を何度か映す演出も、悲しいシーンの伏線となっていて効果的)。
エルサを匿い、隠れて反ナチ運動をしユダヤ人を擁護するロージーは私の理想だ。
それからナチスの大尉。
偉そうだが、ジョジョの母親には弱く、党員ながら同性愛者? のようで、また常にジョジョの味方である。
タイカ・ワイティティ監督自身が演じるアドルフも面白い。
監督自身もユダヤ系とマオリ系のハーフで、幼い頃から偏見にさらされて生きてきたと言う。
その彼がヒトラーを演じるのだ。
ユダヤ人の詩人リルケの言葉に涙
絶望が最後ではない 生き続けよ!
シリアスな話かと思うが、最初からコメディタッチ。
しかし、時に平手打ちのように悲しいシーンやハラハラさせられるシーンがあってより衝撃的。
胸に来る。
クライマックス、アメリカなどの開放軍が攻め入ってきて、必死に抗戦するナチの兵士たち。
大尉もそうだ。皆が銃弾に倒れる。
それを見ているジョジョ。そこにデヴィッド・ボウイの曲が流れる。
泣けた。愚かしい戦い。愚かしいことの犠牲になる人々。犬死にしていく。
涙が流れ続けた。
ラストのリルケの言葉。
すべて経験せよ
美も恐怖も
生き続けよ
絶望が最後ではない
ジョジョとエルサの人生は絶望から、ここから始まるのだ。
死ぬまで、いや、死んでからも人生は続く。
ラスト、怒涛のような感動が押し寄せる秀作である。
監督・脚本・出演 タイカ・ワイティティ
出演 ローマン・グリフィン・デイビス トーマシン・マッケンジー
サム・ロックウェル スカーレット・ヨハンソン レベル・ウィルソン
スティーブン・マーチャント アルフィー・アレン
※109分
©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC
※1月17日(金)から全国ロードショー
《一宮千桃さんの記事一覧はコチラ》
https://www.el-aura.com/writer/ichimiyasentou/?c=26311