一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.205 「ラストレター」

ラストレター

手紙が介する時間を越えたラブ・ストーリー
人生ってなにがあっても続いていく

岩井俊二は、うまいなあーっとつくづく思わされた。
映画の構成、語り、展開、ドラマツルギー、全て職人技である。

観ながら、「巧い、上手すぎる」と今更ながら感心してしまった。
彼の代表作に「Love Letter」(95年)という名作がある。
一通の届かないはずの手紙が届いたことで過去と現在が交錯する巧妙な物語。
それはまるで少女漫画的展開ながら、その透明感溢れる映像と青春の切なさと死への諦観を描いて珠玉の作品となっていた。私の大好きな作品である。
その時に岩井監督にインタビューしたことがあるのだが、とても冷静に計算して作品を作っていることが分かり、ちょっと白けた記憶が今も残る。常にシリアスだった。
そういえば、岩井監督の笑顔って見たことないな。
監督は大阪らの配給会社にいた宣伝嬢とその後再婚されて、彼女にはお世話になっていたので当時かなり驚いた。
今もスタッフとして元気にやっているようで嬉しい。
監督の妻は大変みたいだけど。

ラストレター

 

杜の都、仙台ロケが美しく心に残る
巧妙な話はニンマリしながら夢中になる

さて、本作はその「Love Letter」に呼応する作品である。
一通の手紙が元で話が展開していく。そして過去と現在が巧妙に交錯する。
最初がお葬式のシーンというのも「Love Letter」と同じだ。
姉の未咲が亡くなり、妹の裕里は姪の鮎美から同窓会の案内と未咲が残した一通の手紙を託される。
裕里は姉の死を知らせるために同窓会に出席するが、姉と間違われおまけに初恋の相手、鏡史郎と再会。ひょんなことからふたりは文通をすることになるのだが、鏡史郎の手紙は鮎美のもとに届き……。

裕里と未咲、鏡史郎の高校時代の回想シーンが絶妙に挿入され、物語を綾なす。
適度なギャグも散りばめられて、それはラスト壮大な青春映画となる。
また監督の故郷、宮城県仙台市が舞台ということもあり、被災地への静かな励ましと愛情が込められている。美しい杜の都である。
「Love Letter」の主演ふたり、中山美穂と豊川悦司も後半顔を出し、ファンは嬉しくてニンマリする。

ラストレター

 

青春は過ぎ去ってからより輝く
でも、未来はより輝き、美しいはずだ!!

私は裕里を演じる松たか子がすごく自然で演技が上手くて見とれた。
この人はほんと、上手い! 歌も上手いし、素晴らしい女優だと思う。
最近私は彼女のファンになっているのだ。
裕里が初恋の相手(福山雅治)と接するシーンは笑えるし、すごく綺麗だ。
こういう「えっえっ私あの……」って展開が監督は得意。

話としては少女漫画乗りなんだけど、観終わって人生は過去からずっと現在まで続いていって、そして死ぬまで続くんだな。だから、これからも生きていこうな、と言う気持ちに改めてさせられた。
私としては高校時代とか過去はもう過ぎたことなのでいつまでも拘泥したくない人なので、未来は明るい! というメッセージを受け取って気持ち良く試写室を後にした。
「うまいなあ~」としみじみ感心しながら(笑)。

 

監督・脚本・編集・原作 岩井俊二
出演 松たか子 広瀬すず 神木隆之介 福山雅治 庵野秀明 森七菜
小室等 水越けいこ 木内みどり 鈴木慶一 豊川悦司 中山美穂

※120分
©2020「ラストレター」製作委員会
※020年1月17日(金)全国東宝系にてロードショー

 

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