一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.195 「最高の人生の見つけ方」

人生

余命宣告を受けた主婦と金持ち女
それぞれの最高を見つけた彼女たちは最高!

ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン主演で2007年に作られたハリウッド映画のリメイク作。

日本のトップ俳優でないとリメイクさせない、というアメリカ側の条件があったそうで、男優は高倉健も亡くなっており、女性なら吉永小百合さまがいるということで、女性版に変えてのリメイクとなったらしい。
正解だね。

正直本家の映画は私、全然面白くなくて、「えーっあれのリメイク?」とゲンナリしていたのだけど、女性版に変えたことで俄然面白くなっていた。
小百合さまも活き活きしてて、今までの主演作が耐える悲しげな女がメイン気味だったけど、今作も役どころは悲しいんだけど、小百合さまの意外な姿や楽しげな破顔が何度も観られる。
こういう作品にもっと出ればいいのにー! と切に思ってしまった。
また、脇もやってもいいんじゃないのかな、とも思う。
意地悪な役や悪女役やコミカルな役も小百合さまなら出来るだろうし、挑戦して欲しい(「細雪」素晴らし!)。

さて、家族のためだけに生きてきた地味な主婦幸枝と会社と仕事一筋で生きてきたホテル王のマ子。
彼女たちはそれぞれ末期がんで余命宣告を受ける。
ひょんなことで病院で知り合ったふたりは、12歳の少女が書いた「死ぬまでにやりたいことリスト」をふたりでやることにする。
ロサンゼルスでスカイダイビング、エジプト旅行、ももクロライブと……ふたりは次々リストを元気一杯にクリアしていく。
そして、それぞれの人生の問題も。

人生

 

小百合さまの弾けた姿に驚き恥ずかし……。
マ子の人生を許容する姿に感動!

小百合さまがももクロライブで踊りまくる。
ウエディングドレスを着る……。
観ているこちらがちょっと恥ずかしかったりもして。
しかし、チャレンジャーだから小百合さまは今もって現役で主演を張れるんだろうな、と妙に納得。
相変わらず演技は古臭いんだけど、小百合さまというだけでそれは味があるのだ。

天海祐希もいい。
私は彼女演じるマ子と彼女の父親との再会シーンで涙してしまった。
父親を憎んで家を出たが、実は会いたくて愛していた。
気の強い彼女は素直になれない。
それを幸枝が知り会わせるのだ。
丁寧な演出が心地良い。
ホテルチェーンの大金持ち社長ってタカビーな役は彼女にピッタリ。
しかも、すごく綺麗だった。
かなりガリガリに近く痩せていたが、52歳ながらほっんとに美しい(まっいろいろメンテナンスはしてるんだろうけど)!
手首が特に華奢で綺麗で色っぽかった。
服もカツラもとっかえひっかえで何着ても似合うんだ。

人は死ぬ前にすべてを受け入れて、許し死んでいく。
とエリザベス・キュプラー・ロス
博士の言う通り、彼女たちがそうしていく過程が見所だ。
そしてやりたいことをすべてやりきる。
幸枝の引きこもりの息子のエピソードは、そんなうまくいくかいな? と多少思ったが、母親の死で変化はあるだろう。

人生

 

日本女性が呪縛から逃れ解放されジャンプ!
その気になったら怖いものなし!

本作は幸枝という、たぶん日本にたくさんいるであろう典型的な主婦を主役にしたことで多くの女性の共感を得るだろう。
今もなっんにも家事を手伝わない亭主に自己中心的な娘、引きこもりの息子なんて家庭は山ほどあるのだ。
それぞれに問題のある家族なんて当たり前だけど、本作は多少なりともそんな鬱屈している女性に寄り添い、彼女たちの気持ちを代弁してくれ、そして「やりたいことやっていいんだよ。やりなさい。人生は短いのだから」と囁いてくれる。
女性版にしてほんと、正解だ。

「ウーマン」という、カメラマンの下村一喜が書いた本を最近読んで、女性が生きていくために身につけざるを得なかった呪縛について考えさせられた。
いろいろな重荷を降ろしてジャンプしてみる。
余命宣告されなくても。少なくない日本の女性に必要なことではないか? 私も含め。
そういう気にさせられる一作である。

 

監督・脚本 犬童一心
脚本 小岩井宏悦
アダプテーション脚本 浅野妙子
出演 吉永小百合 天海祐希 ムロツヨシ 満島ひかり 鈴木梨央 駒木根隆介
ももいろクローバーZ 賀来賢人 前川清

※115分
配給:ワーナー・ブラザース映画

コピーライト:Ⓒ2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会
※10月11日㈮全国ロードショー

 

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