一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.193 「引っ越し大名!」

引っ越し大名

藩ごと大移動のお引っ越し
てんやわんやの中の義理人情話!

江戸時代、国替えと呼ばれる藩全体の引越し命令が幕府から頻繁にあったそうな。

幕府の権力維持という目的と、外様大名の勢力を削ぐため。
永く領地を支配する大名と領民の結びつきを断ち、大名の力を弱める策でもあったとのこと。

引っ越しを命じられた藩は、全ての藩士と家族が引っ越すので時に一万人の大移動。
費用は二万両(現在の15億円!)というから引っ越し貧乏というか、藩にとっては死活問題であったと言う。

本作は、そんな引っ越しを命じられた藩で、引っ越し奉行なる役職を任せられた引きこもり侍の奮闘と成長を描いた作品だ。

姫路(兵庫)藩主の松平直矩は日田(大分)への国替えを命じられる。
引っ越しの費用は莫大なため、財政が逼迫している藩は家財を減らし、人も減らし、費用を商人から借金しなくてはならない。

そんな大変な一大事業の責任者に大抜擢されたのが、本ばかり読んでいる書庫番の片桐春之介。
引っ越し奉行前任者の娘於蘭や、幼馴染鷹村の助けを借りながら引っ越し準備を始めるのだが……。

引っ越し大名

 

春之介のゆるやかな成長にニンマリ
普通でオタクの彼の姿にシンパシー!

最初は「出来ないよー!」と叫んでいた春之介が、今まで本で得てきた知識と教養で次々妙案や問題の糸口を見つけ解決していく様が心地良い。
本を読まないと何かの専門家やリーダーになれないと言うが、まさに春之介は本の虫だったから、皆をまとめ率いることができたのだ。

でも豹変するのではなく、大勢にリストラ宣告をした後はどうしようもなく心が辛くなって葛藤する。
そして於蘭に会いに行く。
すると、於蘭は何も言わず春之介の頭を抱くのだ(於蘭役の高畑充希がイイ女なのだ。彼女は馬で爆走して春之介を助けに行ったりと、とにかくカッコイイ!)。

春之介は迷いながら、正解かな? という道を見つけていく。
そして少しずつ於蘭たちの助けをかりて自信を持ち「大人」になって行く。
彼の姿に好感を持つ。
私たちもそうやって少しずつ成長してるとシンパシーを感じさせる。
これは、星野源が演じてるからリアルなんだろうな。

 

リストラした春之介とされた藩士たち
信頼と忠義の心はゆるぎない

私が本作で一番グッと来たのは、リストラ(一緒に引っ越しさせず、武士を辞めさせ農業をさせる)せざるを得なかった武士たちに春之介は「必ず領地が増えて石(ごく)が戻れば呼び寄せる」と言い、それを実行したことだ。

これは一度リストラした社員に、会社が再建したらまた雇うから待っていてくれというもので、現代のサラリーマン社会ではあまりないものだ。

しかし、そこには藩士たちの春之介への信頼と殿への忠誠心があるのだ。
このシーンで私はうるうるしてしまった。
日本人が決して忘れない忠義の心だ。
松平直矩はその後何度も国替えを命じられ、石が増やされるのに何十年とかかったのにだ……涙。

引っ越し大名

 

義理人情は忘れてはならない
日本人の美徳と再確認!

本作はクライマックスには浜辺でのアクションも用意されていて、215センチもある御手杵の槍という名槍での高橋一生による殺陣もあり、楽しませてくれる。
アクションコーディネーターは私お気に入りの諸鍛冶裕太! さんなのだ。
さすがのカッコイイアクション満載です。

さて、本作は現代のサラリーマン社会に置き換えられる話だが、仕事とはいつの世も人の助けあってのものだと再確認させられる。
また、義理人情は今の世でも忘れてはいけないもの。
大切なもの。
日本人の美徳のひとつであると、これも再確認した。

 

監督 犬童一心
原作・脚本 土橋章宏
出演 星野源 高橋一生 高畑充希 小澤征悦 濱田岳 西村まさ彦 松重豊
及川光博 山内圭哉 正名僕蔵 和田聰宏 岡山天音 富田靖子

※120分
配給クレジット:松竹
ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会
※8月30日(金)荷造り開始! 全国ロードショー

 

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