一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.191 「ロケットマン」

ロケットマン

愛を求め続けた少年の成れの果て
胸衝かれるエルトン・ジョンの魂の彷徨

エルトン・ジョンと言えば、ゲイでダイアナ元王妃のお友だちで、イギリス皇室関係の行事には必ずパートナーと一緒に参加してるって印象。

舞台でのど派手なメガネや衣装も知ってたけど、歌となると「えーっと?」となってしまう。
「ライオン・キング」のサントラはやってたな。くらいの知識で今回本作を観て、「あっユアソングね!」と思い当たった。
あまり彼の歌も生涯も詳しくなかったのだが、彼の半生を描く本作で胸が痛くなった。
クイーンのフレディ・マーキュリーもそうだけど、有名になったら酒、ドラッグ、セックス、裏切り、孤独ってセットなのね、としみじみ。
有名になることを選んだ人って試練も半端なく用意してるな、成長度合いが違うな、と改めて実感した。

さて、本作はエルトン・ジョンが、父親の愛を母親の愛を求めて求めて叶わず、恋人の愛で埋めようとするが、それも叶わず、結局自分自身を愛することが出発点なのだと気づくまでの物語だ。
エルトンが苦しみぬいて、やっと少年の自分(インナーチャイルド)を抱きしめるシーンで心からホッとした。

彼の愛を求めた彷徨の旅がやっと終わったと。

ロケットマン

 

エルトンになり切った、
凄まじいタロン渾身の演技に感動しきり!

エルトンは両親のケンカの耐えない家庭で育ち、愛に飢えた子どもだった。
しかし、音楽の才能があり国立音楽院に入学。
その後ロックに出会い、作詞を担当し生涯の友となるバーニーにも出会い、アメリカでのデビューも決まり、またデビューステージが大成功ととんとん拍子に超売れっ子歌手となる。
恋人も得て、25歳で大金持ちとなるが、恋人の裏切りに遭い、両親の賛辞も得られず次第に酒、ドラッグに依存し始める……。

すぐに成功したのね、この人。
それもあって転落が凄い。
「アイ・ウォント・ラヴ」を最初の方で切々と歌うその歌詞にうるるとしてしまう。
求めすぎね、この人。
ジェット・コースターのように、孤独で身体もボロボロ状態で堕ちてどうにもならなくなっていく様がハラハラさせられて観てて切ない、苦しい。
特に父親への求愛が泣かせる。
母親のエルトンへの屈折した愛もはがゆく辛い。
早く光明を見出してくれ、と願うが、なかなか浮上しない。
髪もボサボサになって、目の下にはクマができて、瞳孔開いて、常に息荒く、顔色も悪くなって、トイレで涙ぐんで、と演じるタロン・エガートンが渾身の演技。
もう彼自身がエルトン・ジョンになり切っている。体現してる。
しかも、劇中の歌は全てタロンが歌っているというのだから驚きだ。
歌、うっまあー!! その上、踊ってピアノ弾いて(撮影5ヶ月前から特訓)
パフォーマンスしてと、これは演技賞ものの素晴らしい演技で、胸を衝かれまくる。

でも、苦しいだけじゃなくて、もちろん歌も踊りも満載で楽しめるエンターテインメント作である。
エルトン・ジョンの名曲の数々を堪能できる。
あーっこの曲もエルトンのなんだー、と発見一杯。
稀代のメロディ・メーカーであることが分かる。
いい曲ばっかり。

ロケットマン

 

自分を愛せないと結局その後の人生
つまずく可能性大なのよね

しかし、結局「自分」を愛せないと、その後の人生どれだけ大変かよく分かる。
自分の外に愛を求めてもダメなんだ。
僕を愛して、愛して……誰も愛してくれない……。
エルトンはわがままな子どもみたいだ。
まず、あなた自身をあなたが愛して。
有名人の孤独の話は深いメッセージと気づきをはらむ。

あと、本作の監督がデクスチャー・フレッチャーなのだが、今回プロフィールを観てえっ! と驚愕。
なんと「ダウンタウン物語」(76年)のベビーフェイス役の俳優なのだ。
この映画はジョディ・フォスターがギャングの情婦役を演じた全員子どもによるギャング映画なのだが、当時私のお気に入りの映画で、ジョディの歌う「タルーラの歌」は今でも歌えるくらいだ。
当時彼は9歳とのこと。
今は銀髪のナイスおっさん(かっこいい!)になっているが、ベビーフェイスの面影濃し! いやあ、すごい再会だわ。
彼は「ボヘミアン・ラプソディ」の監督もしているそう(撮影後半とポストプロダンションのみ。ノー・クレジットらしい)。

さてさて、どんなに成功した人、幸せそうに見える人にも陰の部分は必ずある。
でも、全ての問題の根幹は「自分を愛せているか」なのではないだろうか?

監督 デクスター・フレッチャー
脚本 リー・ホール
出演 タロン・エガートン ジェイミー・ベル リチャード・マッデン ジェマ・ジョーンズ
ブライス・ダラス・ハワード ステファン・グラハム テイト・ドノヴァン チャーリー・ロウ

※121分

※8月23日(金)TOHOシネマズ 梅田ほか全国ロードショー
映倫区分:PG12
配給:東和ピクチャーズ

 

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