一宮千桃のセンスアップ☆シネマレビューPART.188 「トイ・ストーリー4」

トイストーリー

このラストをどう受け入れるか?
新たな展開の人気シリーズのとった選択

人気作品のシリーズの変遷というのは、どうしても1作目と比べてしまうので、評価が厳しくなる。

本作も、3(2010年)から9年ぶりのシリーズ新作で、この9年で世の中は大きく変わった。
だから、この2019年に新作を出すということは、製作陣もそれなりの覚悟があったものと思う。
そして、やはりウッディたちおもちゃに大きな変化が……。
それを受け入れられるかどうかで、本作の評価はぐんっと変わりそう。

さて、今回は新キャラも登場する波乱の展開だ。
年月がたち、ウッディたちおもちゃの持ち主、アンディも大人になり、ウッディたちは今はモリーという少女に引き取られている。
モリーはあまりウッディと遊ばず、ウッディは自分の役割はなんなんだろう? と考える日々。
そこでモリーの体験幼稚園入学についていくのだが、モリーは自分が使い捨てフォークで作ったおもちゃを「フォーキー」と名づけ特に気に入る。
しかし、フォーキーは自分をゴミだと思い、すぐにゴミ箱に入ろうとする。
ウッディはモリーの大好きなおもちゃを連れ戻すことが自分の役割だと思いだす。
そんな中、モリーはおもちゃを連れてキャンピングカーで家族旅行へ。
そこでまたしてもフォーキーは行方不明に。
ウッディはフォーキーを探して車の外へ出るのだが、外の世界で思わぬ再会があり……。

トイストーリー

 

ボーのたくましい成長に拍手喝采!
おもちゃたちの活劇シーンも健在!!

このフォーキーがイライラするキャラで困った。
何かと言うと「僕はゴミなんだ」と自己評価低いのなんの。
それをなだめすかすウッディはさながら母のよう。
ウッディの世話好きおせっかいキャラが今回も全開だ。
そして、ウッディの恋人? のニュアンスがあったボーが意外な姿で再登場する。
私はこのボーのキャラがたくましくてカッコよくて大好きになった。
でも女は強し、で喝采かと思ったら、いつまでも自分の我を通したい諦めの悪い男(ウッディ)にしかたなく協力して見守るという、
アメリカの理想の女性像を体現してるのは「あーあ」って感じだったけど。
でも、そのボーの姿を見て、ウッディも決断をするのだけど……。

今回も、アンティークショップでのウッディたちおもちゃの大活躍活劇シーンが用意されている。
ここはハラハラ、クスクス。
ジェットコースターみたいに展開が速くて目が離せないし、楽しい!

トイストーリー

 

おもちゃたちの持ち主への愛と忠誠
それがある限り「自由」はないのか?

また、ここでの新キャラのギャビー・ギャビーがおもちゃの悲しさを語ってくれる。
声を担当した憂いのある新木優子の声質とキャラがマッチしてて、強く印象に残った。
おもちゃというものの、永遠の持ち主への愛が哀れだ。
ウッディたちもそうなのだけど。
持ち主への変わらぬ忠誠と愛。
これは「トイ・ストーリー」シリーズのテーマでもある。
今回、その囚われからウッディを解き放つ。
「私はアンディの、おもちゃ」という括りが好きだったので、今回の話やラストは「えーっ!!」なのである。
新たな旅立ち……。
私の中では「トイ・ストーリー」はこれで第一部は完結したかな、という思いだ。
時の流れは誰も止められないのだから。
進まなくちゃね。

あと、さすが、ディズニーと思ったのは、今回のモリーだけど、白人の設定ではない。
モリーの父親が有色人種の設定で、モリーもそうだ。
そして、中盤出てくる白人の美少女、ハーモニー。
彼女にはギャビー・ギャビーにひどいことをさせている。
世の中の流れに敏感で狡猾なキャラ作り。
毎度ながらディズニーのヒットへ導く布石は素晴らしい。

さて、本作をどう観るか? 自身の生き方が問われるような一作だと思った。

 

監督 ジョシュ・クーリー
脚本 ステファニー・フォルソム アンドリュー・スタントン
音楽 ランディ・ニューマン
出演 トム・ハンクス ティム・アレン アニー・ポッツ
トニー・ヘイル クリスティナ・ヘンドリックス ジョーダン・ピール
キアヌ・リーブス マイケル・キー
日本語版声の出演 唐沢寿明 所ジョージ 戸田恵子 竜星涼 新木優子
松尾駿 長田庄平 森川智之

※100分

※7月12日㈮から全国ロードショー

 

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