一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.184 「居眠り磐音」

時代劇の決定版登場!!
ここには日本人の忘れた生き方がある！

仲の良い幼馴染みの３人の青年。
江戸での勤めを終え、故郷九州に３年ぶりに戻ってくる。

磐音、琴平、慎之輔。
慎之輔は琴平の妹、舞を嫁にもらい、磐音もまた琴平の末の妹、奈緒を嫁取ることになっていた。
義兄弟でもあり、３人は江戸で同じ道場に通い剣の腕も共に磨いてきた。
中でも磐音の剣術は「居眠り剣法」と言われ、ぼんやり昼寝しているように見えて凄腕の剣の使い手でふたりにも一目置かれていた。
久しぶりの故郷に心弾み家路を急ぐ３人。
しかし、そこへ慎之輔の叔父が現れ慎之輔の妻、舞の不貞を口にする。
激高した慎之輔は、なんと、舞をお手打ちに！
舞の遺体を引き取りに来た琴平は慎之輔を許せず……。

故郷での未来、結婚……希望に溢れた３人の未来が一瞬にして崩壊する。
全てを捨ててひとり江戸で浪人として生きる磐音。
その磐音にふりかかる事件と許嫁、奈緒との悲恋を描く本作。
ピエール瀧の事件のため、彼の出演場面の撮り直しでギリギリの試写となったが、無事公開となった。
そして、出来のほどは素晴らしいの一言。
近年の時代劇映画の中でも、傑作の仕上がり。
日本人の美しさ、優しさ、強さ、悲しさを描いた日本が世界に誇れる「時代劇」の決定版のような作品である。
これは、いや、こんな作品こそ、海外に持って行って「日本」の「日本人」の良い所をアピールできるし、して欲しいと強く思う。
本作を観た海外の人は「日本人」の精神性に強く魅かれ、影響を受けること請け合いであろう。

磐音の過酷な運命、奈緒の魂の気高さに
号泣しまくりました！

私はもう、本作、号泣だった（最近号泣しまくってるが）。
なにより、自分が磐音の立場だとどうだ？　と想像したらぶあっと涙が溢れて、そんなこと耐えられんわ!!　状態である。
親友を一度に失い、藩も出て、最愛の許嫁まで……。

全てを捨てて飄々と生きる彼の心に巣くう悲しみ。
そして、そんな磐音をずっとずっと思い続ける奈緒。
彼女の採った選択はしかたないけどやはり涙。
でも、彼女の心根、魂は決して穢れることはないのだ。
その辺を描くドラマチックなラストシーンは嗚咽を抑え、泣き濡れるしかなかった。

奈緒の強さにさらに感動！　武家の娘の心意気を見た！　そして、道場の師範の懐の深い優しさ。
彼の磐音への言葉にまたまた涙！
ああ、どうぞシリーズ化して磐音と奈緒を一緒にさせてぇー！
と切に願った。

諸鍛冶裕太振り付けの殺気立つ殺陣
刀と日本人の精神性の結びつき

丁寧な作りも去ることながら、本作はやはり時代劇の勘所、殺陣が素っ晴らしいのだ。
アクションコーディネーターを諸鍛冶裕太が担当している！　彼は私の大好きな殺陣師で、
「んっこのアクション超カッコ良い！」と思ったアクションはいつも諸鍛冶さんの仕事だった。
「あずみ」「スカイハイ」で大注目したんだけど、本作も電光石火の必殺殺陣で、どこをどうやって斬ったのか目にも留まらず、かつスタイリッシュでカッコいい。
一瞬の斬りあいなのだ。

たぶん、一流の剣の使い手、一流の刀での闘いってこんなんかな？　と思わせる。
刀というものが、日本人の精神性と深く結びついているというのが分かるようだった。
松坂桃李、殺陣は特訓したそうだが、背があるので刀を持っても絵になる。
彼の代表作になるだろう。
彼は最近、良い仕事してるね。