一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.182 「芳華(ほうか)-Youth-」

芳華

芳しく華やかだった青春の時
その後を生きる彼らの人生に涙涙!!

切ない。胸締め付けられる青春映画である。
何度も涙ぐみ、ラストは涙々で困った。
この原稿を書きながらも涙が止まらず困った。

うねる運命の壮大な大河ドラマの顛末に、見終わって心地良い虚脱感を感じながら、これは一人の少女が愛を成就させたラブ・ストーリーなのだと分かったら、より切なくてまた泣けてきた。
中国で4000万人が涙したという。
これは泣くわ~っ。

 

1970年代、歌劇団の団員たちの群像劇
シャオピンとリウ・フォンすれ違いの恋心

文化大革命時代を描いた中国映画は秀作が多い。
本作は1976年の文化大革命終焉の年から始まり、中越戦争をはさみ1995年までの20年に及ぶ、軍の歌劇団に所属していた団員たちの物語である。
その歌劇団は文芸工作団といい、ダンスや歌や絵に秀でた少年少女たちがスカウトされ所属していた。
軍の将兵たちの士気を高めるために各地を慰問したりするのだ。

そこへ一人の貧しい少女、シャオピンが入団してくる。
面倒見のいいリウ・フォンはなにかと彼女のことを気にかけてくれる。
シャオピンはひそかにリウ・フォンのことを想い出すのだが、彼は歌の上手いディンディンのことが好きだ。
その様子をそっと見ているこの物語の語り部であるスイツ。
彼女はトランペット担当の人気者のチェンのことが好きで、いつか告白しようと思っている。
しかし……。

芳華

 

ダンス、歌、美しい少年少女たち
集団は純粋な個を平気で踏みにじる

団員たちのにぎやかで楽しい日常が活き活きとキラキラと描かれる。
本作の監督と脚本家も文工団出身とのことで、自分たちの青春の日々を振り返るリアルさと切な郷愁が滲み出る。

若さの美しさが弾ける。
でも、残酷さも容赦なく描かれる。
スタイルの良い中国人の踊る一糸乱れぬダンス。
中国人てなんて綺麗なんだろう、とため息もの。

そして、キツイいじめ。
シャオピンは皆から激しくいじめられる。
また、逸脱した行為をしたために善良なリウ・フォンもこの集団からはじき出される。
シャオピンが実父の死の悲しみに静かに耐え、涙をぬぐうシーン、皆がこっそり、テレサ・テンの曲を聴いてうっとりするシーンで思わず涙ぐんでしまった。
テレサは大陸でも人気だったのだ。

芳華

 

過ぎ去って、失ってから、輝きだす
それが青春。振り返るもの悲しさよ

舞台が中越戦争(中国とベトナムの戦争)に変わってからはものすごい凄まじい戦闘シーンでのけぞりまくり。
この6分の戦闘シーンはワンテイクで撮影したそうで、なんと、かかった費用は1億1千万円。
また、文工団の舞台の再現には5億7千万円投じたそうな。
戦争をはさみ、文工団は解散し団員たちは現実を生きなければならなくなる。

純粋な善良さを持つリウ・ホン、皆からいじめられていたシャオピンのその後は……でも、生きていくってこういうことなんだろうな、と実感する。
分かっているけど、あの、キラキラ輝いていた青春の日々がまぶし過ぎるだけに、涙を抑えられない。
どれだけ踏みにじられようと、彼らふたりの魂は善良なまま輝きを失っていないのだ、と思ったらまた泣けてきた。

青春は過ぎ去って、時を経てよりその人の心にくすぶり、また燦然と輝く。
ゆえに、切ない。
青春映画の傑作がまた誕生した。

 

芳華

 

監督 フォン・シャオガン
原作・脚本 ゲリン・ヤン
出演 ホアン・シュエン ミャオ・ミャオ チョン・チューシー ヤン・ツァイユー
リー・シャオファン ワン・ティエンチェン ヤン・スー チャオ・リーシン
© 2017 Zhejiang Dongyang Mayla Media Co., Ltd Huayi Brothers Pictures Limited IQiyi Motion Pictures(Beijing) Co., Ltd Beijing Sparkle Roll Media Corporation Beijing Jingxi Culture&Tourism Co., Ltd All rights reserved
配給 アット エンタテインメント
※135分

※5月10日(金)~テアトル梅田  5月11日(土)~ 京都シネマ
6月15日(土)~神戸アートビレッジセンター

 

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