一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.180 「移動都市/モータル・エンジン」

異世界に連れて行ってくれる、
開放感あふれるファンタジーの秀作!

出来の良いファンタジーというのは、心地良い爽快感と開放感があるものだ。

観終わって「楽しい夢を観た」という陶酔感も色濃く残る。
確実に元気になる。
その世界のことを思い出せば、嫌な事も我慢できる。
そんな空想の世界を描いた「ハリー・ポッター」シリーズ始め、数々のファンタジー映画の人気が高いのも頷ける。
しかし、良作は多くない。
本作は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの監督、ピーター・ジャクソンが脚本と製作を担当している。
面白くないわけないよね。
そして、前述のファンタジー映画の長所を全て網羅しているのだ!

舞台は最終戦争後の荒廃した世界。
生き残った人々は移動型の都市を創り、巨大都市は小さな都市を捕食しながらその都市を支配していく。
というとんでもない弱肉強食の混乱の時代となっていた。
そして巨大都市「ロンドン」がこの世界を支配しようとしていた。
その「ロンドン」の指導者はある陰謀を企んでいて、彼に復讐しようと立ち向かう少女。
そして彼女を助ける青年、仲間たちの革命の物語である。

 

車輪に乗った都市がそのまま動いて移動
魅力的なキャラが凄い仕掛けの舞台で活躍!

オープニングから荒野を車輪に乗った都市が移動。
そこへ巨大な都市が現れ、小さな都市を追い詰めワイヤーを放ち捕らえ、前面のゲートを開けてパクッと飲み込んでしまう。
都市には人々が普通に暮らしてて、ビルやインフラなど全てある。
えーっ凄い映像! 凄い発想! 都市が動いて移動って。
都市の様子がリアルですぐにその世界に入ってしまう。

復讐の鬼と化した少女は顔に大きな傷を持つ。
雄雄しいヒロインだ。
そのヒロインに出会い協力する青年。
革命軍の超カッコいい女闘士のパイロット。
かつてヒロインを助け、執着する人造人間……。
ちょっと宮崎駿の影響を細部にひしひし感じるけど、この壮大な世界観と仕掛けは充分に魅力的で興奮した。

 

ヒロインの傷ついた心に涙!
自由を求めて出陣する闘士の姿に涙!

なんと、私は何度か涙してしまった。
それは、ヒロインの過去の描写のシーン。
青年に聞かれても話さないのだが、回想で語られる。
頑ななヒロインの心が痛ましい。
そして、青年に話すことで少し楽になる。
話せない。話す。
ヒロインの心がまだ死んでないことに涙……。

そして、革命の反乱に立ち上がる同志たち。
「自由」を求めて!
私は革命を指揮して殺されたのと、塔に閉じ込められていた前世があるので、こういう自由を求めて立ち上がる話には強く反応する。
このシーンでもぶぁっと涙が溢れた。
誰も泣いてなかったと思うけど。
この原稿を書きながらも泣けてきて困った。

 

前世の記憶を追体験し、浄化する
映画はとてもパーソナルなもの

映画は時に前世で体験した場面を見せてくれることがある。
その度に私は苦しくなり訳が分からずうろたえ、涙する。
そして、浄化を図るのである。
そういう意味で、映画はとてもパーソナルな気づきをくれる媒体だ。
本作は、ファンタジー映画としても素晴らしく、そして、個人的に私には忘れられない映画だった。

移動する都市のリアルな造形には驚愕するし、CGの粋を観られる。
新人の役者を多く使ったらしいが、中でも革命軍の女パイロットを演じる韓国人のジヘが凄まじくカッコよかった!
個人的な感慨を差し引いても、「楽しい夢」を一時見せてくれるのは確かだ。

 

 

監督 クリスチャン・リヴァーズ
脚本 フラン・ウォルシュ フィリッパ・ボウエン ピーター・ジャクソン
原作 フィリップ・リーヴ
出演 ヘラ・ヒルマー ロバート・シーアン ヒューゴ・ウィーヴィング ジヘ
ローナン・ラフテリー レイラ・ジョージ パトリック・マラハイド スティーヴン・ラング

© Universal Pictures
※129分

※2019年3月1日(金)TOHOシネマズ 梅田他全国ロードショー

 

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