一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.177 「ヴィクトリア女王 最期の秘密」

身分を越えた女王と使用人の感動愛!
人生の晩年まで人生は気が抜けない

女王とか、天皇とか、総理大臣とか、選ばれて人の上に立つ人は元来孤独なものだ。
本作の主人公ヴィクトリア女王もしかり。

しかし、彼女の晩年、心を許せる友が現れる。
イギリスの植民地であるインドの貧しい若者である。
そして、これは実話ということに驚く。

18歳で即位したヴィクトリア女王の半生は波乱万丈そのもの。
晩年にこんな心温まる人間関係があったということに、人生最期まで何があるか分からない。
こんな喜びの日々も死の前に用意されているのだ。
死ぬまで人生捨ててはいけないと思った。

1887年、ヴィクトリア女王即位50周年記念式典に、女王に記念金貨を献上する役目に任命された若者アブドゥル。
彼はインドの刑務所で記録係をしている下層階級のインド人だ。
その頃の女王は寵愛した従僕のジョン・ブラウンや、娘や息子を亡くし、失意のどん底。
生きる意欲もなく、ただ着替えさせられ、食べ、寝て、というされるがままの怠惰な日々。

そこへ現れたアブドゥルは持ち前の知性と素直な気性とハンサムな容姿でたちまち女王の心を虜にする。
女王は周囲の反対を無視して彼を使用人として雇うと宣言。
アブドゥルからインドのことやウルドゥー語を学びイタリア旅行にも同行させ、離宮にも滞在させる。
周囲は大驚愕! あの手この手を使って全力でふたりの仲を裂こうとするのだが……。

 

きっとふたりは前世で恋人同士
ふたりの別れに号泣させられる

この史実は隠され、2010年になって世に知らされたという。
女王とアブドゥルの関係は最初は女王の淡い恋であったかもしれないが、女王と従者という関係をベースに置いた深い愛が見られる。

それは、アブドゥルの女王を命がけで守る、女王が死ぬまで側にいて尽くすという深く厳しいもので、その心意気には、たぶん多くの人が心揺さぶられて感動することと思う。
しかも、このふたりの関係は言わば禁断なのである。
女王しか宮中にアブドゥルの味方はいないのだ。

そして、女王の死に目にも彼は会えず、女王が死ぬとお払い箱なのである。
この非情なラストには号泣させられた。
まるで少女漫画的展開ではあるが、酷いのである。

しかし、ラストカットはふたりの愛を天が祝福しているようで少しホッとさせられつつもまた号泣!
きっと、ふたりは前世では恋人同士だったのに違いない……。
やっと晩年に会えて、想いを遂げたのだろう。

 

人生の設計図の巧妙さに思い馳せ
ふと自戒する 学びは死ぬまであり

女王役のジュディ・デンチが大迫力。

彼女の顔が観れて、声を聞けるだけで至福だろう。
衣装も素晴らしい。
アブドゥル役のアリ・ファザルは今作で初めてイギリスを訪れたそうである。
そして大作への出演。
彼自身がアブドゥルなのである。
ふたりの蜜月に反対する息子や家来たちが意地悪で滑稽でムカつきつつも王宮の淀みが見えて面白い。

人生の晩年に出会う人の因縁はその人の人生の総仕上げのよう。
産まれる前に計画してきた人生の設計図は実に巧妙だ。
学びは人生の最期まで作られている。
心して生きよう、そう思わせられた。

 

 

監督 スティーヴン・フリアーズ
脚本 リー・ホール
原作 シュラバニ・バス
出演 ジュディ・デンチ アリ・ファザル エディ・イザード アディール・アクタル
ティム・ピゴット=スミス オリヴィア・ウィリアムズ マイケル・ガンボン

※112分
Ⓒ2017 FOCUS FEATURES LLC.
※1月25日(金)よりBunkamuraル・シネマ/テアトル梅田ほか全国ロードショー!

 

《一宮千桃さんの記事一覧はコチラ》
http://www.el-aura.com/writer/ichimiyasentou/?c=26311