同姓婚の相手に遺族年金を!
社会を動かした感動実話の佳作
いつも映画は情報を入れずに観にいくのだが、本作は全然どんな映画かまったく知らずに試写に行った。
最初、麻薬取引現場に張り込む警察官ローレル役のジュリアン・ムーアの果敢なシーンから始まったので、「んっ刑事ものか」と思っていたら、バレーボールをするシーンになり、そこでローレルに意味深に声をかける若い女性ステイシー。
「?」と思っていたらふたりはデートに。
「あっレズビアンの話だったの??」と驚いていると、映画は思わぬ方向へと展開していった。
これ、実話だそうです。
展開にいちいち「えーっ??」と思ってしまいつつ、クライマックスには思わず涙してしまった。
タイトルやポスターなどの宣材からはこんな映画とは想像しにくく、宣伝するのが難しい作品だなと思う。
人生は虚しいな
その虚しい人生をいかに生きるか?
さて、話を少し。
ローレルとステイシーは愛し合い、家を買って一緒に住むようになる。
しかし、ローレルは癌に侵される。ステイシーに自分の遺族年金を残そうとするが、同性婚の相手に年金を残すことは法的に認められていない。
ローレルの願いを仲間たちは叶えようと郡委員会に直訴するのだが……。
癌に侵されて……というところで泣きに持っていくか~と思っていたが、私が涙したのは違う場面でだった。
ローレルは勤続20年のやり手警察官で、警部補への昇進を願い日々仕事に打ちこんでいた。
女性で警部補昇進なんてただでさえ困難なのに、彼女はレズでもある。だからゲイであることはひた隠しにしてきた。
しかし、ステイシーと愛し合い、病に倒れ、直訴したことでゲイであることも公表する。
全てを明らかにして、諦めた時、彼女は欲しかったものを手にする。
欲しい欲しいと思ってきた現世での出世。
それが、いかほどのものか。
余命いくばくもない状態でやっともらえた望みのもの。
ローレルが泣きながら震える手でそれを受け取るシーンに涙が流れた。
人生は「虚しい」が前提なんだろうな。
でも、その「虚しい」世をいかに生きていくかが生きるってことなんだろうな。
と、しみじみ虚しくなって泣けてきたのだ。
しかし、ローレルは幸せだ。出世も愛する人も権利も仲間も手に入れた。生き切った人生だったと思う。
協力、つながり、社会への貢献
ローレルを支えた人々の愛に涙
あと、警察の同僚たちがローレルがレズと分かって態度を変え、罵り言葉を口にしたりもしていたのに、だんだんと変化していく様にも涙腺がゆるんだ。
先日観たテレビ番組で、人と協力したり、つながったり、社会に貢献したいという遺伝子が人には組み込まれているということを知った。
ローレルの申請を通すために協力した地域の仲間たち、彼らの勇気と愛に涙。
その遺伝子、人間の本質のひとつだよね。
心に残る佳作です。
監督 ピーター・ソレット
脚本 ロン・ナイスワーナー
出演 ジュリアン・ムーア エレン・ペイジ マイケル・シャノン スティーヴ・カレル ルーク・グライムス ジョッシュ・チャールズ
103分
※11月26日(土)~全国ロードショー
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