【チベット仏教やネパール仏教から生まれた神聖な法具】
「シンギングボウル」(別称チベッタンボウル)は、ネパール仏教やチベット密教に伝わる神聖な法具で、「ドニパトロ」とも呼ばれています。
誕生の歴史は古く、少なくとも5世紀以前より使われ始めたそうで、「3千年前のブッダ生誕以前にもさかのぼる」という説もあります。
日本人に身近な仏壇に置かれるりんも、いわばシンギングボウルの仲間の法具ですが、「シンギングボウル」と呼ぶ場合は、作られている素材に特徴があります。
それが「セブンメタル」と呼ばれる、「金、銀、銅、錫(すず)、鉛、水銀、鉄」です。
これらの素材を錬金術的な叡智を使って作られたシンギングボウルは、スティックで叩いたり、外側の縁をなぞるようにこするなどの方法で奏でられます。
そして古来シンギングボウルは、空間の浄化、魔よけ、心身のヒーリング、瞑想のサポート他、神仏や宇宙などの高次元とつながるためのツールなどとして活用されてきたそうです。
なぜ、シンギングボウルにこうした効果があったのか、そのカギを握るキーワードが「倍音」です。
倍音とは、わかりやすくいえば、チーンと鳴らした際に、ひとつの単音として聴こえるだけでなく、複数の響きが重なって聴こえること。
専門的には、ひとつの楽音の音高とされる周波数に対し、2つ以上の整数倍の周波数を持つ音の成分のことを指します。
【倍音は宇宙や高次元とつながる重要なキーワード】
もちろん、倍音というのは、さまざまな音響楽器にも含まれています。
例えば、パイプオルガンの音。
天井の高い教会でパイプオルガンを奏でると、とても荘厳な響きになりますが、あれもパイプオルガンの音に含まれる倍音が、教会の壁に様々に反響し合い、神秘的に絡み合うからです。
このように宗教的な背景をもつ音響楽器というのは、古来、倍音効果を使って、神仏の世界とつながろうとしてきた歴史があるのです。
シンギングボウルもそのひとつで、倍音を使って高次元とつながり、その叡智を地上に下すことで、浄化やヒーリングをサポートするツールにしてきたのではないかと考えられています。
(第2回に続く)