■免疫を高める食品選び〈８〉小麦は本当に悪モノ？～グルテンフリー食・アーユルヴェーダの見解　その３～インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.90

さて、今回も引き続き、グルテンについてお伝えしていきたいと思います。

現代の先進国の多く人が、グルテンを食べた直後、お腹が膨張したり、疲労を感じたり、胃が重たくなり体全体が鈍くなったように感じられ、グルテンを含まない食事に切り替えるという選択をします。
これは、確かに理にかなっていることです。

そして、健康関連の専門家の人たちさえも、人間の体は遺伝的にグルテンを完全に消化するための能力をもっていないため、小麦を疫病のように警戒すべきものとしてアドバイスしていることもあります。

このため、グルテンは今や、一部の人たちの間では悪者扱いされているわけですが、このことについてドクタージョンは私たちに、食事から麦類を永久に葬り去ってしまう前に、別の、そしてより高い視点から、次のようないくつかの事実も考慮することをすすめています。

■私たちは遺伝的に、肉よりも小麦をより消化できる

小麦を警戒すべき。と主張する専門家の人たちは、そもそも人類はここ１万年の間、麦を食べてきただけなので、私たちの体は遺伝的に麦を消化するようにはできていない、というもの。

しかし、アメリカのユタ大学でなされた新しい研究では、今から340万年前にまで遡る人類の祖先・ホミニン（二足歩行し、小さな歯と大きな頭脳を持つチンパンジーの祖先）の歯から、小麦や大麦に似たもち米のような草が食生活において重要な構成成分として食べられていたことが判明していて、これは私たちが遺伝的に、何百万年もの間、小麦を消化するための消化器官をすでに持ち、消化してきたことを示しています。

現在、グルテンに敏感な人たちの多くから人気を集めているパレオ食事法は、食事の中に肉が高い割合で含まれて構成される食事法ですが、皮肉にも、私たちの祖先にあたる初期人類が狩をして肉を食べはじめたのはたったの50万年前。

実際、パレオ食事法は、私たちが遺伝的に消化しにくい食べ物かもしれないのです。

（ホミニンはすでに麦を食べていた！）

■私たちの体は、口から腸に至るまで、
小麦を消化するための準備が万端！

パンを噛みはじめたとたんに、口の中にすでにある多数の微生物が働きはじめ、消化困難なグルテンのタンパク質・グリアジンを分解するための酵素生成プロセスが始まります。

これらの微生物は、食道や胃にも存在し、また、小腸ではさらに、グルテンやカゼイン（乳製品に含まれるもの）のような消化が難しいタンパク質の完全に分解するためのグリアジン消化酵素が生成され、さらに大腸にも、グルテンを消化するための細菌が存在し、グリアジンを完全に分解する酵素が放出されます。こうして分解されたグルテンタンパク質は、腸内の他の重要な細菌を肥やし、余ったグルテンは便の中に排除されます。

……このように、まさに私たちの消化器官は本来ならグルテンを消化する気満々。

祖先の代から長い年月をかけて、グルテン消化のための洗練されたプロセスを体は進化させてきたのです。