アーユルヴェーダは菜食 or 非菜食? その1.動物の肉は、もともとは薬だった 〜インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』Vol.28

アーユルヴェーダは、どう考えてみても完全な菜食ではありません。 アーユルヴェーダの古代教本の中では、「肉のスープは、極度の衰弱に効く最高の薬」として説明されています。

インドといえば、ベジタリアンが多い国。
卵も魚も一切食べない、本格的なベジタリアンの人たちがとても多いですが、実際は、ノンベジ(非菜食)の人たちもたくさんいます。

ベジタリアンの人たちが肉や魚を食べない一番の理由は、「育った家庭がベジタリアンだったから」というものがほとんどのケースなのですが、こういったベジタリンの人たちが、よくノンベジの人たちに対して口を揃えて言うのは、

「人間の消化器官は本来、動物の肉を消化するようにできていない」あるいは「生きてる動物を殺して食べるなんてかわいそう」

というもの。

バリバリにノンベジな食文化の日本で生まれ育った私は、こういったとき、育った食文化の違いや異文化を、肌で感じたものです。

ただ、よくよく話を聞いてみると、大半は、育った家庭がベジタリアンだったため、「肉を食べることは悪いこと」と親から教え込まれているケースがほとんど。

“ある種の洗脳”ですね。

 

インド生活では、このようなベジタリアンの人たちに囲まれていた環境のおかげで、私自身も自然にベジタリアン寄りになっていき、そんな中で、インドという国から教わった大きなもののひとつが「肉や魚を全く食べなくても、十分に満足できる」というものでした。

インドは豆の種類がとても多彩で、また、ベジタリアン料理のバラエティがとても豊富。なので、自然に肉や魚離れができてしまうのです。

バラエティ豊かなインドの豆類

こういった要素もあい絡まって、「アーユルヴェーダは菜食」と一般的に思われがちですが、実際のところはどうなのでしょうか。

今回は、その辺についてお伝えしてみたいと思います。

 

■菜食はもともと、仏教の教えからきたもの

今でこそ、ベジタリアンが多いインドですが、もともと古代インドの時代では、完全な菜食という概念自体は、存在していなかったようです。

ヴェーダ(古いサンスクリット語で書かれたインド最古のヒンドゥー教の聖典)やプラーナ(古代インドのバラモン教時代の神話、伝説、説話を梵語で表現したヒンドゥー教の聖典)では、ノンベジタリアンの食事やその質などについて述べられており、菜食という考え方が普及したのは、ヒンズー教がまだ他の宗教のいい部分を取り入れる柔軟さがあった時代に、仏教の教えの影響から定着したものといわれています。

 

■肉を薬として使うアーユルヴェーダ

ところで、アーユルヴェーダは、どう考えてみても完全な菜食ではありません。
アーユルヴェーダの古代教本の中では、「肉のスープは、極度の衰弱に効く最高の薬」として説明されています。

人間が動物を食べることになったのは、もともとは病気の人を治療する目的のため。

インドのノンベジフードの代表、タンドーリチキン

アーユルヴェーダの教本「チャラカ・サンヒタ」では、肉のスープは、ピッタのアンバランスが原因で起こる疲れ(例えば、太陽の下で長時間働く etc)を減らし、毎日運動する人や、声を強くしたい人、肌を丈夫にしたい人、また、免疫を改善したい人にとっては、とても理想的な食べ物とされ、実際、アーユルヴェーダのある特定の元気回復薬の原料には、他のハーブと肉が使われているとのことです。

 

☆☆次回「その2.」では、ベジタリアンとノンベジタリアンのそれぞれの
メリットとデメリットについて、ご紹介したいと思います。

 

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