■自然サイクル(概日リズム)を使った健康法〈4〉~オージャスは、睡眠ホルモン「メラトニン」説~ インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol. 138

・私たちの体内にある神聖な物質「オージャス」

アーユルヴェーダによると、私たちの体内には、老化、免疫力、肌の輝き具合、気分、睡眠、消化力、精神性、そして体力を左右するといわれる神聖な物質、「オージャス」と呼ばれるものがあります。

このオージャスは、何かを食べ、それが24時間かけて完全に消化された後、さらに30日のプロセスを経て出来上がることから、「消化の最も洗練された副産物」として考えられています。

ただ残念なことに、オージャスが出来上がる30日間に、私たちはさまざまなストレス(慢性的なものから一時的に過剰なものまで)や、誤った食べ物、ライフスタイル他により、オージャスの生産が損なわれてしまいます。

その結果、大抵の人はこのオージャスを使い果たしてしまい、欲しいエネルギーや免疫力、また輝きに欠け、寿命を短くしてしまうのです。
(⇒オージャスについてさらに詳しくは、バックナンバー Vol.17~23をご覧下さい。)

(オージャスが使い果たされると電池切れに……)

そしてこの、どうしても薄まりがちになるオージャスを再び作り上げるために、アーユルヴェーダが提案していることは、普段から概日リズムに合わせた、サットヴァ的(非暴力的、愛情があり、与えるという姿勢)なライフスタイルと、ギーやアーモンドのようなオージャスを作り上げる食べ物をとることです。

さてこのオージャスという一見難しめなアーユルヴェーダ独特の専門用語は、現代語に置き換えるとどうやら、睡眠ホルモンとして知られている「メラトニン」である可能性が高いということがわかりました……。

 

・睡眠ホルモン「メラトニン」が損なわれると、乳がんの進行が促進される?

このメラトニンは、脳の奥深くにある松果体(「魂の座席」とも呼ばれることがある器官で、一般的に「第三の目」と呼ばれることもあります)から分泌され、体内のメラトニンの量が増えると眠くなります。

光を感じている昼間の時間帯は、メラトニンの分泌が抑制されますが、太陽が沈む夕方ぐらいから序々に増え始め、夜中の午前2~3時頃にピークに達するといわれています。

このため、夜遅くまで起きていることが習慣になると、メラトニンをはじめとする他のホルモンが損なわれ、またメラトニンのレベルが下がるとエストロゲン(発情ホルモン)のレベルが上がり、このエストロゲンが多すぎると乳がんの進行が促進されることが報告されています。
また、これを関連づける他の研究では、盲目の女性は目が見える女性よりも乳がんになる可能性が半分だということです!

というわけで、女性(というか男性もですが)の夜更かしは、できるだけ避けることをおすすめします……。

(寝る前の皮付きゆでバナナ汁は、睡眠促進特効薬)

 

・二つのオージャス、「パラオージャス」と「アパラオージャス」

アーユルヴェーダでは、体にあるオージャスには二種類あり、それぞれ「パラオージャス」と「アパラオージャス」と呼ばれています。

パラオージャスは究極のオージャスとみなされ、心臓に存在し、一方、アパラオージャスの方は、30日間の消化のプロセスで少量のみが出来上がる活力の元(流動体)で、パワフルではありながらもパラオージャスよりはやや劣ると考えられています。

そしてこの究極のパラオージャスが睡眠ホルモン「メラトニン」で、アパラオージャスが長寿ホルモン(愛すること、与えることに関連するホルモン)とも呼ばれる「オキシトシン」ではないかという説があります。
(メラトニン生産なしでは、オキシトシン生産はありえず、実際、松果体/メラトニンを作る腺が取り除かれると、オキシトシンのレベルが激減することが確認されています。)

 

***

■オージャス=メラトニンのさらなる証拠

アーユルヴェーダがいうところのオージャスとメラトニンは、共通点がとても多く、ますますこの二つは同じものなのでは。という説が濃厚です。

メラトニンは、体のあらゆる細胞や器官を監視する主要分子で、またほぼすべての病気に対し、一肌ぬいでくれるヘルパーのような役割を果たすといわれています。
そしてこの性質は、オージャスの特徴と一致します。
これが、この二つが実は同じものであるという最も説得力のある証拠となっています。

★二つの共通点

*年齢とともに減少する
*免疫をサポートする
*輝く健康的な肌にする
*深い眠りをサポート
*楽しい気分にする
*運動パフォーマンスを向上させる
*老化プロセスを遅らせる
*概日リズムがアンバランスになると枯渇する
*ストレスにさらされると弱まる
*ホルモン機能をサポートする

ところで、長年のインド生活の中で出会ったインド人たちのなかに、「不眠症」といった睡眠系のトラブルを抱えている人は、一人もいませんでした……。

これは、インドの人たちが、オージャスを作り上げる食べ物、ギーやアーモンドなどを日頃からたっぷりと食べているせいかもしれません。

 

《村上アニーシャ さんの記事一覧はこちら》
https://www.el-aura.com/writer/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3/?c=73188

 

(トップ画像/ナッツ系はオージャスを作り上げる)