■味の効用part.10~「辛味(刺激性の味)」の効果 ~ インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.126

さて今回は、「辛味(刺激性の味)」についてお伝えしたいと思います。

インドでは、州によって若干の違いはあるものの、辛くない食べ物を見つけるのが難しいほど、料理のほとんどは基本「辛くて当たり前」です。

普段、辛いものなどそれほど食べない日本の食文化の中で育ってきた私は、インド生活を始めた頃、辛いものに対する免疫がほとんどなく、インド料理の強烈な辛さに度々胃腸を壊したものでした。

……にも関わらず、辛味のある食べ物というのは、食べているうちにどんどん慣れていくもので、慣れるにしたがい、食べないと物足りなく感じられるような中毒性があります。(これは、チリの中に含まれるアルカロイドも関係しているのですが、長くなるのでここでは省略します)

食べてしまえば後から大変なことになりそうなことがわかっていても(トイレに駆け込むことになる、など)、インドの庶民レストランで食べる本場のビリヤニやタンドーリチキンのおいしさは、格別でした。

今から思えば、娯楽という娯楽があまりないインド生活の中で、自然に食べ物に刺激を求めるようになったからかもしれません。

さて、そんな刺激性のある辛い味。
アーユルヴェーダ的には、この味についてどんな風に説明しているのでしょうか。

 

★辛味の効能

辛味は、辛い食べ物やハーブ、スパイス類によくある味で、乾燥性の熱によって口や神経末端を刺激するのが特徴です。

 

《もたらされる効果》

*構成要素は「火」+「空気」
*カファのバランスをとる
*ピッタとヴァータを悪化させる
*ヴィルヤ(温度) →加熱する(加熱する味の中でも最も熱い)
*ヴィパカ(消化後の効果) →辛味
*特質 →熱い、乾燥、軽い、鋭い(貫通する)、芳香性

*関連するポジティブな感情 →熱意、興奮、好奇心、明快さ、精力、活力、集中力、拡張

*過剰になったときの感情 →苛立ち、攻撃性、激怒、猛烈、競争心、妬み

*舌の場所 →舌の中央部分
*器官への親和性 →胃、心臓
*最も影響を受ける組織 →血液、生殖組織
*動きの方向 →上向き、輝かす

*その他の作用 →血を薄くする、鎮痙、抗寄生虫、駆虫、駆風、発汗、血管拡張

(タイ名物、発酵ソーセージ(いつも生チリとセット))

 

★辛味(刺激性の味)を示す食材例

では具体的に、どんな食品がこの味なのでしょうか。

野菜: 唐辛子類、にんにく、ニラ、玉ねぎ、からし菜、大根、かぶ、生のほうれんそう

穀物: そば、スペルト小麦

ナッツ&シード類: マスタードシード

スパイス類: 黒コショウ、チリ、ショウガ、クローブ、パプリカなど、辛味のあるスパイス類の大部分

などになります。

 

★辛味から得られるメリット

辛味は体を温め、口の中を清潔に保ち、器官を清め、他の食べ物の味を増強し、消化力を炊きつけ、消化吸収と排泄を改善します。

辛味はまた、カファのバランスをとるために欠かせない味となっています。
これは、体を熱くし乾燥させる質によって、毒素や粘液を除去し、副鼻腔の浄化、凝血を破壊する、余分な脂肪を排除するよう働きかけるからです。

辛味の刺激を使うことで、発汗が促進され循環が高まり、活力が満たされ爽快になります。

これにより溜まった水分や停滞といった淀みが効果的に解消でき、体のブロックをとり、内部チャネルが開かれるといわれています。

チリやわさびといった辛いものを食べた後は、キーーーンとした刺激がありますが、その刺激がおさまった後というのは、なんともいえない爽快感があります。

これは、辛味のもつ浄化効果ゆえで、このスッキリ感にやみつきになっている人もいるのではないでしょうか。