免疫を高める食品選び〈3〉~ハーブ抽出物(サプリ)とシンプルな乾燥ハーブ。体にいいのはどっち?~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.85

私たちの体とハーブ全体にはそれぞれ、先天性の知性が備わっています。

インド暮らしの中で自然に、アーユルヴェーダの知恵を元に作られているさまざまなハーブアイテムに日常的になじんでいった私ですが、そんな品々をたっぷりと使っているうちに湧いてきた、ある疑問。

それは、こういったハーブ製品のほとんどは、メインのハーブ以外にも他の多種類のハーブも一緒に混ぜられていることが普通だったことです。

例えばインドで伝統的に有名なアーユルヴェーダのヘアオイル「ブラーミオイル」は、ブラーミをメインにしつつも、ブラーミ以外のハーブも原料にたくさん使われています。

「こんなにいろいろなハーブが一緒に使われているなら、ブラーミ単体の効果というよりも、どのハーブが一番効いてるのかもよくわからない……。」

当時はそれ以上深く考えることはありませんでしたが、いつも謎でした。

そしてその答えは、著名なアーユルヴェーダドクターが「ハーブに含まれる有効成分を化学的に取り出し濃縮したサプリ製品と、自然のハーブそのものを乾燥させただけのもの」について述べられていたコラムの中にありました。
それはだいたい次のような内容です。

(アーユルヴェーダのブラーミオイル)

 

■「微生物の多様性が失われた現代環境が、
私たちの免疫を弱くしている」

ハーブに含まれるある特定の有効成分だけを化学的に加工して作られるハーブ抽出物と、自然のハーブを乾燥させただけの未加工処理ハーブを比べると、なんと未処理ハーブの方が1000倍もの効力があることが、研究で報告されています。

一見、有効成分だけを抽出して濃縮されたものの方がより強力に効きそうなイメージですが、研究結果はそれを完全に覆しています。

ドクターによれば、私たち人間の体を作り上げている有核細胞の90%を占める微生物は、土壌の中に存在する微生物と同じもの。
(このため、私たちは死んだ後、ちゃんと土に還ることができるわけですね)

私たちが食べている植物は、土壌の中に存在する多様なこれらの微生物をひきつけ、植物と微生物の両方にとって有益な相互関係が成り立っています。

そして、その植物を食べる私たちは、その植物がもつ多様な土壌微生物を同時に体に取り込むことができます。

科学者たちの多くは、この微生物の多様性が、私たちの健康的な免疫システムを作り上げるための鍵となると主張しています。

有機、未加工、その植物全体、乾燥させたもの、あるいは生ハーブや食品類は、滅菌加工されたサプリハーブや食品よりも、何千倍も多くの多様な微生物を、私たちの体に運ぶことができます。

不幸なことに、西洋および先進国では、加工食品、抗生物質、過度に滅菌された環境などが原因で、私たちの体は微生物の多様性の多くを失ってしまっています。

この微生物の多様性の少なさが、私たちの消化力を弱くし、病原の脅威下においての免疫応答を潜在的に弱いものにしています。

ハーブ抽出物はほとんど無菌で、有益な微生物が含まれていません。
一方、未処理の乾燥ハーブは、こういった抽出物よりも1000倍も多くの微生物を有することができるのです。

(ブラーミオイルにはブラーミ他22種のハーブが入っている!)

 

■「サプリが効くのは最初だけ?」

化学処理されたハーブ抽出物は、元のハーブの中に含まれるある特定の活性成分だけを抽出されて作られます。

例えば、ターメリック(ウコン根)の中に含まれる一つの活性成分を取り出して作られているものの成分は、次のような形で記載されています。

〈ウコン根の抽出物〉
95%クルクミノイド
450mg

これは、この製品の450mgが、クルクミノイドと呼ばれる1つの有効成分のみを95%含有していることを意味します。

こういった抽出物は、効力の増加をもたらすかもしれませんが、体はその抽出物に対する耐性を増強することができるので、使い続けることでだんだん効力がなくなり、効くためにはより多くの量を必要とするようになります。
それに加え、副作用の問題も出てきます。

こういったことは、自然のハーブ全体を使った製品では、めったに起こらないことです。

そもそも自然界は、いわゆる「最も活性する」化学物質を、その植物の中に少量しか含ませません。
しかもその物質は、他のサポート的な役割を担う成分の数々と一緒になった形で、ごくわずかに存在させるだけです。

 

■「ハーブの効能を高めるために、他の植物を組み合わせる」

アーユルヴェーダでは、あるひとつのハーブや、ハーブフォーミュラの効能を自然に高めるために、他の特定のハーブやスパイスを組み合わせます。
例えば、ターメリックに黒コショウを混ぜるだけで、ターメリックの吸収が2000%も増加できることが、研究で報告されています。

ターメリックにはもともと300以上もの天然成分が含まれ、そのなかのひとつがクルクミノイドと呼ばれる成分です。

ターメリック抽出物クルクミンは、安全とされているハーブ抽出物の1つではありますが、多くの研究において、抽出物クルクミンだけを使うよりも、ウコン植物全体を使った方がより優れていることがわかっています。

そして、インドのカレーのような伝統的な料理は、ウコン全体の他に、他のスパイスも混ぜられているので、西洋で開発されたターメリック抽出物よりもすっと優れています。

効力が増強されても、そもそもその不自然な加工物に、人体が耐えれるかどうかは疑問なのです。

私たちの体とハーブ全体にはそれぞれ、先天性の知性が備わっています。

自然にそもそも備わっている知性を私たち人間が勝手に変え始めると、私たちが植物から得ることができる利益の多くが、失われてしまうのです。

 

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https://www.el-aura.com/writer/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3/?c=73188

 

(トップ画像/有効成分だけを濃縮したサプリ類の使用は注意が必要)