ベジタリアン大国・インドで暮らしはじめた頃、それまでは日本の近所のスーパーで好きなときに好きなものを好きなだけ買えた肉は、なかなか手が届かない存在になりました。
私が住んでいた当時のインドは、肉が欲しければまず、鶏をさばいて売っているイスラム教徒が経営するお店へ行き、どのぐらい欲しいか希望(一羽分か1/2羽分か。といった2オプションぐらいしかありません)を伝えて買っていました。
最初の頃は、買う前に自分の目で肉の鮮度が確認できないことや、店の一角全体がどこかホラー映画のような雰囲気があり、そこでいつも思いつめたような暗い表情でおどろおどろしい雰囲気を醸し出しているイスラム教徒のお兄さんに話しかけるのが怖くて、肉を買う、というシンプルなことをひとつするにも、だいぶ怖気づいたものです。
インド暮らしが長くなるにつれ、インドでいちいち怖気づいていたら普通の生活さえもままならないことがわかってきて、そういった日本にいたら絶対やらないだろう苦手なことをゆっくりとひとつひとつクリアしているうちに、いい意味での「インド人並みのずうずうしさ」を身につけることができました。
それはさておき、こういった環境のおかげで肉をそんなに食べなくなったことは事実で、まるでそれを応援するかのように、インドの食卓というのは多彩な豆類で彩られています。
私もその影響をうけて、豆類に親しみ始め、インドのさまざまな豆を使って料理レシピを考えることが、日常の楽しみの一つにもなりました。
さて、豆といえば、「植物由来のタンパク質」というイメージがありますが、今回は、このタンパク質にまつわるお話をご紹介したいと思います。
★2種類のタンパク質
~完全タンパク質と不完全タンパク質~
タンパク質は、体を作り上げるいわば木材のようなもの。
細胞壁の構造と細胞小器官を形成し、そして細胞内のほとんどの機能はタンパク質によって行われているといわれています。
タンパク質は私たちの体の筋肉、毛髪、腱などを作る成分で、血液やリンパによってタンパク質は要所に運ばれ、また、脳や中枢神経系のメッセンジャーとして、抗体や免疫機能を調節し、体内の酵素を使い組織を作っては壊す役割を果たしています。
また体に、一定していて安定した気分、エネルギー、神経系のサポートを提供します。
タンパク質は長鎖で互いに結合されている数千の小さな単位が組み合わされて構成され、これがアミノ酸と呼ばれているものです。
現在発見されているアミノ酸は22種類あり、これは機能的なタンパク質を形成するために無数に組み合わせることができるといわれています。
さて、タンパク質を作るために組み合わされるアミノ酸のうちの13個は、体によって作られます。
これが非必須アミノ酸です。
私たちの体が自分で作ることの出来ない必須アミノ酸は9種類あり、これを普段食べる食事の中から補わなければなりません。