■人間を癒す薬としての植物。～4～インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』～vol. 179

たっぷりと水の恵みを享受できる梅雨真っ只中の今。

コロナ騒ぎで店や施設がほとんど開いていない時期に、時間がたっぷりあったこともあり、ベランダの空いたスペースでキッチンガーデンを作り始めたのですが（どうやらこの時期、同じことを考えた人たちがたくさんいたようで、店の植木コーナーの土がごっそり品切れになっていたりすることがよくありました）、

梅雨の始まりは、ハーブや野菜たちは水がたっぷりもらえて喜んでいたかのような趣でしたが、さすがに雨ばかり続く時は、人間と同様、太陽の光を欲しそうにしています。
で、ちょっとでも晴れ間がのぞこうものなら、すごく喜んでいるように感じられます。

さて今回は、人間と同様にこの地球の生命体である植物の中に存在するドーシャについてお伝えしたいと思います。

三つのドーシャ「ヴァータ」「ピッタ」「カファ」は、人間そして自然界すべてに存在するように、植物の中にも存在しています。

「ヴァータ植物」
ヴァータの影響を強く受けている植物は、葉がまばらでキメが粗く、ひび割れた樹皮や曲がった節の枝があるのが特徴で、樹液（カファ）がほとんどありません。

「ピッタ植物」
ピッタ植物では、色鮮やかな花を咲かせ、丈夫さや樹液は中ぐらいで、植物によっては毒を持っていたり（ピッタ人間と同じ？　笑）、燃えるような効果（ピッタ植物の典型、唐辛子をイメージするとわかりやすいかもしれません）を持つことがあります。

ちなみに一年中ほとんど暑い国、インドやタイなどの植物の花々には、派手派手原色なものが多いですが、これは偶然ではなく、暑い国ならではのピッタが強く影響しています。

「カファ植物」
カファの植物は、大きく豊かに成長し、葉をたっぷりとつけ、樹液がにじみ出ているのが特徴で、フサフサして重たく、多肉質で、水分をたっぷりと含んでいます。

（樹液は木のカファ成分）

土壌、気候、地域、国によっても大きな影響を受けるため、同じ種類の植物でも、場所と気候によって、その土地にあった形状に変化したりします。

植物の根や樹皮は「土」と「水」の要素を表すことから、カファの状態に、花は「火」要素として、ピッタの状態に、葉と果実は「空気」と「空間」要素としてヴァータに、それぞれ働きかける傾向があると考えられています。

アーユルヴェーダでは、どんなハーブを使うか、あるいはどんな治療法を用いるかは、まずその人固有の体質や病気の性質を知る必要があり、西洋医学やある意味での西洋薬草学では、このような個人の体質について考慮する科学が欠けています。

同じ病気が、違った体質で起こる可能性があり、例えばある病気が、肺のカファ過剰や水分過剰による乱れが原因である場合と、肺に湿った熱が蓄積するピッタ異常が原因である場合があり、これらは同じ病気でもそれぞれ別の原因で起こっているため、別々の治療を施す必要があります。

つまり、体質が違う人たちに、ひとつの同じ治療法が効くとは限らないのです。

一方、同じ体質で悪化しているドーシャが同じな場合、様々な病気となって引き起こされる可能性はあるものの、その悪化したドーシャを減少させることを目的としたひとつの治療法によって、それら様々な病気を同じように治療できます。

例えば、ヴァータが悪化した状態では、坐骨神経痛、関節炎、便秘、頭痛、乾燥肌、腸内のガス、消化不良などさまざまな症状が現れ、

ピッタが悪化した症状としては、皮膚が黄色くなる、めまい、脱力感、感覚器官の機能不全、オージャスの破壊、冷たいものへの渇望、ほてり、口の中の苦味、過剰な喉の渇き、失神、睡眠の減少、怒りなどがあり、

カファが悪化した症状では、顔面蒼白、冷え、肥満、だるさ、怠惰、重苦しさ、体力の低下、尿路閉塞、失神、過眠、、呼吸困難、咳、過度の唾液分泌、消化力低下などがあり、特に冬から春、昼前、夕方、食後すぐの寒さは、カファを悪化させるといわれています。

（ヴァータのバランスをとるハーブ、生姜）

そしてこれらはすべて、一本のラインの治療だけで（それぞれのドーシャを減らすことを目的としたハーブや食事、ライフスタイルなどで）、解消できるというわけです。シンプルですね。

この部分が、西洋医学における対症療法との大きな違いです。

アーユルヴェーダでは、ハーブや植物がどの病気を治療するかを知ることで、一つの基準線が得られ、さらにそれがどのような体質に作用するのかを知ることで、もう一つの基準線が得られるため、この両方が考慮され、本当に効果的な治療法をピンポイントで特定できるようになっています。

（つづく）

（トップ画像／ピッタの激情をなだめるハーブ、ローズ）