ロータス咲く夏 不思議で美しすぎるその花の秘密〜蓮はロータス、睡蓮はウォーターリリー

●蓮はロータス、睡蓮はウォーターリリー

水に咲く美しい姿が似ていて混同されがちな蓮と睡蓮ですが、植物学的には違いがあり別の系列になるそうです。
見分け方としては睡蓮は切れ目のある丸い葉が特徴で、温帯産は水面に花が咲き熱帯産は茎を伸ばして咲きます。

蓮は水面から伸びて咲き、葉はウェーブがかかっています。
蜂の巣のような花托が花の中央にでき、蜂巣から蓮に転じたとも言われています。
はっ水性のある葉は蓮の特長で、葉の上を転がる水滴に汚れを絡めとらせるそうで、この自浄効果をロータスエフェクトと呼び、塗料や建材、繊維などに応用されているそうです。

蓮根ができるのは蓮の方です。
そんな違いを一度覚えると、もう間違えることはなさそうなのですが……。

蓮と睡蓮が間違われやすいのは、昔からのようです。
蓮の英名はロータスですが、この名前はギリシャ語に由来し、エジプトに自生する睡蓮の名前「ロータス」が語源なのです。
西洋人が蓮の英名をつけるとき、睡蓮と蓮を混同してロータスとしてしまったようです。
もともとはロータスという名前は睡蓮のものだったのに、似ている蓮にその名前をつけたのです。

ギリシャ神話の悲話に登場する妖精ローティスが変身した花がロータス。
その実を食べると夢見心地になると言われたロトスの話もギリシャ神話のオデュッセイアにあります。
また、睡蓮の学名ニンファーは、ギリシャ神話に登場する妖精ニンフが語源といわれています。

(睡蓮)

 

●蓮も蓮華、睡蓮も蓮華。

仏教が生まれる前から古代インドでは、蓮華として尊ぶ花のひとつがパドマで、これは蓮のことで大抵の場合は赤い花のことだったそうです。
もうひとつの蓮華はウトパラ、これは睡蓮で大抵は青い花のことなのだそうです。

もともとは蓮は紅と白、睡蓮は青と白しかなかったようで、黄色い睡蓮は、アメリカにしかなかったそうです。
睡蓮の発祥は東アフリカのナイル川沿いと言われていて、エジプトの遺跡に登場するのも睡蓮とされています。
その睡蓮は、白と青だったそうです。
エジプトの壁画に描かれた女性が持つ花は、確かに青睡蓮のようです。
神殿の石柱に見られるレリーフも、睡蓮をイメージしたものに見えてきます。

ふたつの異なる種の花、そう認識されるようになったのは植物をDNAでとらえて分類するようになった最近のことです。
もちろん、似ているようでたくさんの違いがある蓮と睡蓮ですが、花の神聖な雰囲気で人々から愛され重要視されるところは似ています。
種類が違うかどうかは、重要ではなかったのかもしれません。

 

●仏教で重要な花。蓮華台は蓮の花。

お釈迦様が生まれてすぐに歩いたとき、その後に咲いたと言われている蓮。
仏像が手にする蓮の蕾、仏像が座する蓮華座。それらにもみられるように仏教において蓮は大切な花で、蓮にまつわる言葉もあります。

「泥中の蓮華」は、泥の中から養分を吸収して美しい花を咲かせる蓮の花の姿を仏教の教えに例えた言葉。
泥中は煩悩の多い今の世で蓮華は悟り、苦労の多い世で煩悩に惑わされず、物事をありのままに見ることができる清く美しい心になろうと言う意味なのだそうです。

「一蓮托生」は、極楽浄土でも同じ蓮の上に生まれましょうと、仲の良い夫婦や友人が交わす約束の言葉です。
イメージすると本当にしあわせで和やかな美しいシーンが目の前に浮かんできます。
今では、悪縁的な運命共同体を表すときによく使われる言葉になってますが、本来の意味で使ってそれが相手に通じたら素敵です。

「蓮華の五徳」は、極楽に生まれる人の徳を蓮の特長に例える言葉です。
泥の中でも染まらない清らかさ、ひとつの茎にひとつしか咲かないこと、花といっしょに実を結ぶこと、ひとつの花にたくさんの実をならせること、中は空洞で外はまっすぐな茎の強さ、これを五徳とするそうです。

 

●阿弥陀経の青い蓮華、黄色の蓮華、赤い蓮華、白い蓮華。

浄土を表現する阿弥陀経の中に、蓮華は車輪ほど大きく、青い蓮華は青い光、黄色の蓮華は黄色い光、赤い蓮華は赤い光、白い蓮華は白い光があり、それぞれ清らかな香りを放っているとあるそうです。

ここで言われている青と白、黄色の蓮華は睡蓮で、白と赤は蓮なのでしょうか。

それとも、浄土には、色とりどりの蓮があるという空想上の表現なのかはわかりません。
どちらにしても蓮と睡蓮の神々しい美しさは、人々に浄土をイメージさせてきたのでしょう。

 

●ヒンドゥー教、女神ラクシュミーと蓮。

インドでは、国花にもなっている蓮。

ヒンドゥー教でも大切な花とされ、神話にも登場しています。
美と富の女神ラクシュミーは、蓮の上に立って両手に蓮の花を持っていますが、手のひらにも蓮の花が描かれ、その瞳は蓮、肌の色も蓮の色と言われています。

ラクシュミーは、仏教では吉祥天と呼ばれ日本の寺院でも祀られています。
ガネーシャは、歓喜天。ヒンドゥーの神々を招き入れる仏教なのですから、蓮も睡蓮もどちらも蓮華でいいんじゃない? といった感じなのかも知れません。

 

●ヨガのロータスムドラ、蓮華座でくつろごう。

あぐらに座って右足を左脚の付け根へ、左足を右脚の付け根へ。
その脚の形が蓮の花に似ているところから、このポーズは蓮華座、パドマ アサーナと呼ばれています。
最初は、片方の脚だけを曲げて付け根に乗せる半蓮華座からはじめるとムリなくできます。
瞑想のときにこのポーズをよく行います。

下肢が安定して深い呼吸が行え、内なる自分に集中できます。
足首、脚が柔軟になり、おしりも伸びて股関節も心地よく刺激されます。

ロータスムドラアは、胸の前で合掌した手を膨らませて蓮のつぼみに、そして指を開いて咲かせていきます。
蓮華座でしばらく心静かに目を閉じてから少しずつ蕾を開きながら天に向かってすくすくと伸びて美しいロータスになって咲く、またある時はラクシュミーになって微笑んでみるのもよいでしょう。

ほんのわずかな時間が光に満ちたしあわせな時間に変わります。

 

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