子宮頸がん、子宮体がんの発症リスクを予防しよう。人間ドック婦人科専門医が解説する、子宮がん検査とは?

TRINITY vol.49にて特集をした「人間ドック」企画。最先端の予防医学として、人間ドックのさまざまな側面を紹介しました。TrinityWEBでは、30~50代女性に多い、子宮がん検診について、「こころとからだの元氣プラザ」理事・人間ドック部長であり、婦人科専門医の大村峯夫先生に詳しくお伺いしました。

性体験を持つ女性すべてに
リスクがある「子宮頸がん」

編集部(以下編):子宮がん検診を受けるメリットとは?

大村先生(以下大):子宮がん検診ですと、がんの有無だけではなく、膣炎や子宮筋腫などの婦人科系の病気も発見できますから、年に1回は人間ドックでチェックを受けるのが良いでしょう。人間ドックは値段が高いと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、自分の身体のことですよね。ブランドバッグに10万、20万円をかけるよりも高くないと思うのです。健康は失ってから、その大切さが分かるものですから。

編:子宮がんにはどのようなものがあるのでしょうか。

大:子宮の入口表面にできる「子宮頸がん」、子宮の奥のほうにできる「子宮体がん」、卵巣にできる「卵巣がん」が主です。

編:どのような検査を行うのでしょうか。

大:頸がんは、子宮の入り口の細胞を綿のブラシでこすりとり、顕微鏡で診る「細胞診」という検査を行います。
または「コルポスコープ」という拡大鏡を使います。子宮の入り口に薬をつけて拡大鏡で診ると、特殊な模様が浮かんできます。判定は熟練のドクターでないと分かりにくく、異常な細胞が固まっていると、がんの可能性が高い。細胞の検査と併せて判定します。


写真:子宮頸部・体部、乳腺、消化器の細胞診・組織診を行う細胞検査士。

大:頸がんは、HPVというウィルスによって起こり、がんが発症する前の段階である「前がん状態」がかなり長いのが特徴です。それこそ何年単位になることもあります。HPVはセックスによって感染する雑菌で、セックスをしたことがある人なら、一回は感染したことがあるのです。感染してもがんになる人とならない人の違いは、ウィルスが居続けるかどうか。ウィルスが長く居続けると悪さをするわけですが、ウィルスも100種類以上あり、ほとんどが無害なのですが、そのうち13タイプががんに関係あるといわれています。

編:頸がんの発症を予防する方法はありますか?

大:セックスをしなければ感染しないのですが、外国の研究によると、セックスパートナーが多い人ほど頸がんになりやすいそうです。または、ご主人にセックスパートナーが多いと、その奥さんも感染しやすい。ウィルスが移る可能性が高いことから考えられています。また、生活習慣でもタバコを吸う人は頸がんのリスクが3倍になるそうです。頸がんの予防接種もありますが、予防できるのは7~8割程度。前がん状態が長いからこそ、定期的な検査が予防になるでしょう。

痛みを感じてからでは遅い!?
「子宮体がん」と「卵巣がん」

編:子宮体がんの検査について教えていただけますか。

大:子宮体がんは子宮の奥のほうにできるがんです。発症する方の年齢層は40代後半が多いです。
この検査でも細胞を採る必要があるため、子宮のなかにブラシやチューブなどの何らかの器具を入れます。もちろん多少の痛みを伴いますし、子宮を傷つける可能性もありますから、全員に必要な検査ではありません。国のガイドラインでも危険性が認められた場合に、慎重に行うほうが良いとあります。

子宮体がんの特徴は、90パーセント以上が、前がん状態から出血が続くことです。女性にとって出血はもともとある現象ですから、「時々、茶色いおりものが出る」とか「生理不順が続く」とか、あまり心配しないで来られることが多いのですが、調べると危険性がある場合もあります。生理不順で不正出血が2~3週間も続くとか、おりものに色がつく方は、検査したほうが良いでしょう。体がんの発症は、ホルモンや遺伝による原因が多く考えられます。

子宮頸がんも体がんも、前がん状態が長いので、小さいうちに発見して治療を行えば子宮を温存できるというのが一番のメリット。
がんになって転移の危険性がある場合、よほどの事情がない限りは全摘出になる可能性があります。ですから、子宮を残せる段階で治療を進めたいですね。

編:卵巣がんはどうですか?

大:卵巣がんは厄介で、末期になるまで症状が出ないのです。卵巣がある程度の大きさまで腫れて、何かの拍子にねじれ、その痛みで発見されることがたまにあります。通常はお腹が膨れるまで分からないのです。
がんが移転して腹膜炎を起こし痛くなって初めて卵巣がんが発見されるけれど、その時はもう末期状態。卵巣がんは出血もしませんし、腫瘍マーカーでも、引っかからないことがあります。

卵巣がん検査は、子宮がん検査の時と一緒に、膣に器具を入れて超音波検査を行います。
子宮から卵巣はすぐそばにありますから、卵巣が腫れているかどうか、より鮮明な画像で診断できるのです。卵巣がんの原因は分かりませんが、遺伝も一因ともいわれています。

婦人科系の臓器は、命には関わらないけれど、子どもを産むので他の臓器とは異なります。命を助けることだけが検診の目的ではなく、子宮という機能を温存することも大きな目的なのです。

~了~

写真:FPD方式デジタルマンモグラフィ。乳がん検診で使用。


写真:マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師による画像確認。


写真:医師による検査結果の説明は、検査当日に行われる。


<プロフィール>


大村峯夫先生

「こころとからだの元氣プラザ」理事・人間ドック部長。日本産婦人科医会 がん対策委員会 副委員長。日本産婦人科学会専門医、日本乳癌学会認定医、日本臨床細胞学会認定細胞診指導医・専門医などの認定を受ける婦人科専門医。

写真提供・取材協力:こころとからだの元氣プラザ http://www.genkiplaza.or.jp/

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