フランスで最も有名な巡礼地を行く! モン・サン・ミッシェル ― 大天使ミカエル信仰

写真:崇高な景観のモン・サン・ミッシェル

フランスの聖山モン・サン・ミッシェル

世界遺産としてフランス国内外に広く知られるモン・サン・ミッシェル。その名を聞くと、海に浮かぶ山や要塞、教会をイメージするかもしれません。モン・サン・ミッシェルとは、モン=山、サン・ミッシェル=大天使ミカエルを意味するフランス語で、大天使ミカエルの山、つまり大天使ミカエルを奉った山です。

大天使ミカエルは、ガブリエル、ラファエルと並ぶ三大天使の一人で、天使たちを束ねています。モン・サン・ミッシェルを遠くから眺めると、山頂にきらきらと輝いて見えるのが大天使ミカエル像です。像を見ていただくとわかりますが、足で悪魔(竜)を踏みつけ、右手に剣を持ち、左手に持った秤で天国に迎えられる者と地獄に落とされる者を振り分けています。

大天使ミカエルは、人々の夢の中にも現れ、お告げを授けました。708年、アヴランシュに住むオベール司教は、聖堂を建てるよう夢の中でお告げを3回も受けました。3回目に現われた時、しびれを切らした大天使ミカエルは司教の頭に穴を開けてしまったとか。これがモン・サン・ミッシェル創建の始まりです。
また、14世紀に始まるイギリスとフランスの百年戦争では、ジャンヌ・ダルクが大天使ミカエルの「フランスを救え」という啓示を受けて、劣勢だった仏軍を率いてフランスを勝利に導きました。この時、モン・サン・ミッシェルには延べ2万人ものイギリス軍が攻めてきましたが、最高15mに及ぶ干満の差という自然条件を味方に難攻不落の要塞として、その猛攻を耐え抜きました。その結果、モン・サン・ミッシェルは、ますます人気のある巡礼地としてその地位を固めました。

人々にパワーを与え続けているモン・サン・ミッシェルは、人々にパワーを与え続けているモンサンミッシェルは「日本人がもっとも訪れたいフランスの観光地になってます。。私たち日本人にとっては、四国八十八ヶ所めぐりの巡礼地のような感じなのかもしれませんね。


写真右:島内のカフェ

 

その昔、モン・サン・ミッシェルへの巡礼の旅は、「遺書を書いて行け」と言われるほど、命がけの旅でした。パリから片道180kmの旅は、現代ではバスを利用して14時間と日帰り圏内ですが、かつての巡礼は、わずかの着替えとお金を身につけ、杖をついて歩く困難な旅でした。巡礼の旅の最後の難所が、モン・サン・ミッシェルの潮の満ち引き。潮が一気に満ちる時は、「馬が駆けてくる」速さと言われています。まさに津波のような勢いです。波にのまれた巡礼者も数多くいたようです。島の入口にあるユネスコの世界遺産登録碑の近くには、潮の干満時刻の情報が掲示されています。

島内には、この地がかつて監獄や要塞として使われた時代の面影が色濃く残っています。一度は観光するに値する場所です。エレベーターはありませんので、しっかりとした靴を履き、ハイキングのような服装で行くことをお勧めいたします。山頂の修道院までは、グランド・リュ(大通り)と呼ばれる当時の巡礼者も歩いた道(実際はとても狭い仲見世通りのような雰囲気です)を辿り、階段を上っていきます。

モン・サン・ミッシェルが人々の心をとらえて離さないのは、その神秘的な景観だけでなく、厚い信仰心を持つ巡礼者の思いに圧倒されるからなのかもしれませんね。


印象派の画家たちにも愛された港町オンフルールは、モン・サン・ミッシェル観光の途中にぜひ立ち寄りたい場所

 

モン・サン・ミッシェルのここが見どころ

<回廊と屋上庭園>

最上階には回廊と屋上庭園があります。修道士たちは回廊を歩きながら、聖書を読み、瞑想にふけりました。回廊は庭を囲むようにして作られています。回るということ自体が、永続性や永遠性を表わしています。2列に並んだ柱は互い違いに配列され、カーンから運ばれたといわれる柱上部の石には彫刻が施されています。回廊の天井にもご注目ください。回廊は3層(階)の最上階にあるため、天井は軽量化を図り、石を使わず、木製の船底のように作られています。モン・サン・ミッシェルは、現在のノルマンディー、ブルタニュー地方に位置しますが、ここは沿岸地域のため歴史的に造船技術が発達しました。その技術が建造物にも活かされています。 

<修道院食堂>

昔、修道士たちが一同に集まり食事をとった場所です。キリスト教では、最後の晩餐などでも分かるように、食事は重要視されました。食堂では、その日の担当者が聖書を読み上げ、食事中は沈黙で、必要な場合はゼスチャーで意思の疎通を図りました。真下の王侯貴族の間とは異なり、暖炉のような暖房器具は一切ありません。四方を海に囲まれたモン・サン・ミッシェルの最上階にあるこの食堂。当時、冬はどれだけ寒かったことでしょう。食事には身体を温めるワインも供されましたが、戒律の厳しいベネディクト派修道院では、その飲み方にも作法がありました。食堂は、大きくはないけれど細い窓が沢山あるため、光が差し込み明るい印象です。

 

モン・サン・ミッシェルには、ヴェルサイユ宮殿のような豪華さはありませんが、荘厳さや装飾を削ぎ落としたシンプルな美しさが感じられます。日中は観光客で賑わいますが、夕方になると静寂が修道院を包みます。日没後は島全体がライトアップされます。修道士17名、島の住民を入れても40名と、昼間のにぎやかさとは全く異なるモン・サン・ミッシェルの一面を覗かせます。

一泊することが可能であれば、対岸のホテルに泊まることをお勧めいたします。潮風に吹かれながら、島の全景を一望できます。次第に色濃くなる夕闇に浮き上がるモン・サン・ミッシェルの姿は圧巻です。


対岸のホテルよりモン・サン・ミッシェルを望む

 

【アクセス】パリから観光バスが出ています。鉄道の場合は、パリのモンパルナス駅からレンヌ駅まで鉄道を利用。そこからバスで行くこともできます。