胃がんを抜いて女性の死亡率トップに。女性が気になる「乳がん」の本当の話 PART.1

急増する乳がんについて、本当に知っていますか?

現在、日本人女性の乳がん患者は急増しています。1996年には、女性のがん罹患率で、乳がんは胃がんを抜いて第1位になりました。2005年には乳がんと診断された患者数は5万人を超え、女性が一生の間に乳がんになる確率は16人に1人(欧米は8~10人に1人)とされています。しかも、罹患率、死亡率ともに一貫して増加しており、出生年代別では、最近生まれた人ほど罹患率、死亡率が高い傾向があります。(2011年乳がん死亡者数は12,800人以上:交通死亡者数の2倍以上)。

 

年齢別にみた女性の乳がんの罹患率は30歳代から増加し始め、50歳前後にピークを迎え、その後は次第に減少します。女性では、乳がんにかかる数は乳がんで死亡する人の数の3倍以上です。これは、女性の乳がんの生存率が比較的高いことに関連しています。乳がんは、乳房の中の母乳をつくるところ(小葉組織)や母乳を乳首まで運ぶ管(乳管組織)から発生する悪性腫瘍です。

乳房のしくみとがん発生

乳房は、出産時に乳汁を分泌する大切な役割をもつ皮膚の付属器官です。その中には「乳腺」と呼ばれる腺組織と脂肪組織、血管、神経などが存在しています。乳腺組織は、15~20の「腺葉」に分かれ、さらに各腺葉は多数の「小葉」に枝分かれしています。小葉は乳汁を分泌する小さな「腺房」が集まってできています。各腺葉からは乳管が1本ずつ出ていて、小葉や腺房と連絡し合いながら、最終的に主乳管となって乳頭(乳首)に達します。

大人の女性の乳房は、乳頭を中心に乳腺が放射状に15~20個並んでいます。それぞれの乳腺は小葉に分かれ、小葉は乳管という管(くだ)で繋がっています。乳がんの約90%はこの乳管から発生し、乳管がんと呼ばれます。小葉から発生する乳がんが約5~10%あり、小葉がんと呼ばれます。乳管がん、小葉がんは、乳がん組織を顕微鏡で検査(病理学的検査)すると区別できます。この他に特殊な型の乳がんがありますが、あまり多いものではありません。

乳がんは乳房の中の乳腺にできるがん

乳がんはこの乳腺を構成している乳管や小葉の内腔(内側)を裏打ちしている上皮細胞から発生します。がん細胞が乳管や小葉の中に留まっているものを「非浸潤がん」あるいは「乳管内がん」、乳管や小葉を包む基底膜を破って外に出ているものを 「浸潤がん」といい、非浸潤がんが乳管が開口している乳頭に達して湿疹様病変が発生する「パジェット病(Paget病)」の3種に大別されます。

乳がんリスク要因

乳がんに罹患する確率は異なった要因で変わってきます。乳がんの発生、増殖には、性ホルモンであるエストロゲンが重要な働きをしています。これまでに確立されたリスク要因の中には、体内のエストロゲンレベルに影響を与えるようなものが殆んどです。リスク要因としては以下のようなものがあるといわれています。
・妊娠・出産歴がない。出産回数が少ない。
・第一子出産の後、母乳を与えない。
・初経年齢(月経が始まった年齢)が低い。
・閉経年齢が高い。
・ホルモン療法(エストロゲン製剤、ピル等)を受けている。
・飲酒
・喫煙
・高脂肪の食事
・20歳時の体重が低いほど、乳がんになりやすい。閉経後の女性では、成人後の体重の増加が多いほど乳がんになりやすい。
・シフトワークによる不規則な生活
・女性化乳房(男性の場合)
喫煙については、日本人を対象とした研究で、喫煙女性の乳がんリスクは非喫煙者に比べて1.9倍という報告がされています。

次回は、乳がんの病期(ステージ)と治療の状況をご紹介します。

<Information>

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詳細は、日本CI協会03-3469-7631まで。Trinityを見たと伝えていただければ、会員価格でご参加いただけます。
▼日本CI協会 http://www.ci-kyokai.jp/event-igaku20130506.html