幸福の国のブータン便り・第10稿「こ」~「こども」編

ブータンといえば最初に思いつくイメージはなんでしょうか?
今回、「癒しフェア」に参加させていただいた際もお客様とのお話のなかで、「子どもたちの笑顔」について言葉が交わされることが非常に多かったように思います。
そう、ブータン、自然と動物以外に特筆すべきこと……それは「子どもたち」です。

私はブータンに最初に観光客として滞在した際も、写真のように多くの子どもたちとふれあいました。なんだろう、ブータンの子って一見はシャイなんだけれど、打ち解けてしまうと本当に人懐っこく、ずっと離れません。私はお祭りを観るツアーに参加したんですが、自由時間はずっと子どもたちと河原や会場で手をつなぎ遊んでいました。
そのときなぜだか、「ああブータン人の子どもみたいな子どもを産みたい」と強く感じました。人懐っこく、厳しい生活環境の中で育ったせいか、とてもたくましく、そして凛とした大人も負けるような雰囲気をもっている、ブータンの子はそんな感じです。


ブータンの人懐っこい子どもたち

ご縁があり、高校で教えることになりましたが、高校生も同じ。けれど高校生はもっともっと積極的です。この積極性はどちらかというと欧米人に近いのではないでしょうか。発言はどんどんするし、授業中の質問はひっきりなし、自己アピールはとても堂々としています。質問だけで授業が終わってしまうこともありました。それほど好奇心旺盛で積極的で明るいです。

日本人のブータン人に対するイメージは民族衣装とそのつつましい雰囲気からどうしてもシャイなものに偏りがちですが、ブータン人は日本人よりも全体としてずっとずっと積極的で、ラテン気質です。けれど東洋人独特のつつましやかな面、品格を重んじる面があり、とてもバランスのいい国民性を、特に子どもたちはもっていると私は感じています。

そんな子どもたちの現状はどうなんでしょうか?

Lotus&Herbsの事業は「子どもたちを支援したい」ということから始まりました。
最初に観光客として訪れたときに、学校へ寄付を行い、ある少女を一年間高校に通学させるいわゆる里親になりました。彼女は通学に歩いて数日はゆうにかかってしまう貧困地域に住んでいるため、どうしても寮生活を余儀なくされてました。人口70万人、首都には約10万人ということを考えれば、どれほど多くの人たちが彼女のような地域に暮らしているのかがわかります。

またブータンは電車もなければ、トンネルもないといったような、日本とは全く次元の異なる世界が首都以外には広がっています。10キロメートルを車で走るのに1時間かかります。歩くとなると……想像を絶しますよね。

そんなブータンの状況を見て、何かできることはないか、と思いこの事業をスタートさせましたが、就学率は上がったものの(72%)、就職率といえば、「卒業してもほとんどの子が職業がない」、というのが現状です。入口ができていても、出口ができていません。
ある程度の教育を身につけた子どもたちがこれまでのブータン人の主な職業である農業に携わるのを敬遠するのも現状です。
教育を受けたから、また経済的な安定から学校の先生や省庁の職員など、公務員になりたい子どもたちが多いのですが、そのような職業は大学を卒業した子どもたち、いわゆるある程度お金のある家の子どもが就ける職業であることもブータンの現実です。
GNHやつつましやかな国民性といった、ポジティブな面が比較的取り上げられることが多いですが、今、ブータンにおける大きな問題は「若者の就職難とゴミ問題」といわれています。


河原で遊びました

「マダム、ブータンには差別があるんです! 格差があるんです! 僕たちは悲しいんです」
実はこの言葉は、私が高校に赴任し、一番最初に子どもたちから聞いた言葉です。私もブータンにポジティブなイメージを抱いている人間の一人だったので、この現実を突き付けられたときは、外国人である自分自身に突き付けられたメッセージに、胸がぐっときたのをいまだに覚えています。そして彼らが今頃どうしているんだろうかとときどき思いをはせる時があります。
確実に、ブータンでも他国と同じように格差が広がっています。


授業の様子、質問がどんどん飛び交います。写真にはちょっとシャイかな?

たくましく、純粋で、凛とした瞳を持つ子どもたち。未来の社会を担う彼らのそんな素晴らしい財産を摘んでしまうのではなく、膨らませていけるように、いまの私たち大人の心や行動がブータンでも、日本でも、そして世界中で問われている気がしてなりません。
本当に素晴らしいブータンの子どもたち。そして日本だって、世界のどこだって子どもというのはとても素晴らしい存在です。社会に生きる責任ある大人として、彼らの未来のためにできること、私たち一人一人にたくさんあるはずです。

ブータンに訪れた際、気軽に子どもたちに話しかけてみてください。カメラを出そうものなら、みんな被写体になりたくって、たくさんたくさん寄ってきちゃいます。ほんとうに純粋でかわいいです。
世界の子どもたちが一人でも多く、笑顔になれる一日が訪れますように。