かぐや姫は、とっても可愛いので男の子たちがいつも群がっていました。
かぐや姫は本当は静かに本を読んだり、ひとりで歌を歌ったりしたかったのですが、人がたくさんいるので我慢していました。
するとお爺さんは翌日、顔を真っ赤にして『おとぎのへや』に駆け込みました。
「うちの子が、下品な男の子たちに群がられて迷惑しとるそうじゃが、どういうことか説明しろ! 娘から自由を奪うとは何事だ! ちっとも、安全じゃないじゃないか! どう責任取ってくれるんだ!」と問答無用で使用人に文句を言いました。
使用人は何の発言権もなく、ただただ泣くだけでした。
桃太郎とかぐや姫
桃太郎とかぐや姫は家に帰ると、お爺さんやお婆さんにあれこれしつこく聞かれるのがものすごく嫌でした。
別に悪いことをしているわけではないので、ある程度はそっとしておいて欲しいなと思っていました。
するとある日、お爺さんとお婆さんが『おとぎのへや』に二人して顔を赤くしてやって来て言いました。
「最近、うちの子たちが『おとぎのへや』のことを何も話さなくなったんじゃが、どういうことなんじゃ? まさか、なにか言えないような事でもあったのかと思うと、心配で心配で……」
と言いました。
使用人は困った顔をして「二人ともいつも元気に過ぎしていますよ」と答えるとお婆さんは鬼のような形相で「だったら、なんで、一日の出来事を話したがらないんじゃ! 問題があるからじゃろうに!」と罵声を浴びせました。
従業員は心の底から困ってしまいました。
「そんなにここが不安でしたら義務ではありませんので、ご自宅でお子さんたちに過ごしていただいてはいかがですか?」
従業員は悲しそうに言いました。
するとお爺さんは杖を振り上げて怒鳴りつけました。
「ワシらは貧乏で朝から晩まで一生懸命働いているんじゃ。その間、誰も見守ってくれない家に可愛い子供たちを置き去りにしろというのか。なんと心の冷たいヤツじゃ!」
従業員はだったら子供なんて望まなければ良かったのに。
文句があるなら、召使でも雇って一日中子供の面倒を見させれば良いのにと思いました。
でも、お爺さんとお婆さんがあまりにも怖くて、グッと言葉が出そうになるのを堪えたのでした。
「そもそも文句を言う時間だけは必要以上に持っているじゃないか……」とぼそりと言うと従業員は静かに泣きました。
桃太郎と、かぐや姫は『おとぎのへや』をそんなに好きではありませんでした。
でも、家に帰るのは正直嫌だったので『おとぎのへや』に対してそんなに不満は持っていませんでした。
桃太郎とかぐや姫は、だんだん状況が理解できるようになってきました。
でも、お爺さんとお婆さんの理不尽さはどうも理解できませんでした。
かぐや姫は毎晩月を見て泣くようになりました。
桃太郎は何やら人間ではなく動物たちと遊びはじめるようになりました。
桃太郎は覚悟を決めました。
桃太郎は自力で生きていくためには自分の力を証明しなければなりません。
そこで桃太郎は仲間を引き連れ鬼が島へ旅立って行きました。
「僕が強いって証明さえできれば、誰も僕にあれこれ言わなくなるだろう……」
桃太郎は、見事に鬼退治をして村中にその名声が響き渡りました。
桃太郎は金銀財宝も手に入れたので、もうお爺さんとお婆さんの家に戻る必要はなくなりました。
かぐや姫は桃太郎に先に家を出て行かれて焦りました。
そこで、かぐや姫はかぐや姫なりに考えた末、故郷である月に帰ることにしました。
「私は、ただ静かに暮らしたかっただけなのに……」
エピローグ……
お爺さんとお婆さんは、突然、子供がいなくなってしまって焦りました。
でも、自分たちは一生懸命、『子供のために』愛情を注いできたので、納得がいきません。
「これは、きっと『おとぎのへや』の責任に違いない!」
二人はすべての責任を『おとぎのへや』になすりつけました。
その結果、『おとぎのへや』はいつしか消えてなくなりました。
今まで、そこを利用していた子供たちは行き場を失ってしまいました。
お爺さんとお婆さんは、いつしか本人の知らぬところで『本当の鬼』と呼ばれるようになりました。
もちろん、そんなこと本人たちは知る由もありませんでした。
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