魔女が信仰するのは悪魔? それとも女神?〜現代魔女事情 その1〜

魔女というと「悪魔と契約した存在である」というイメージがキリスト教によって植え付けられていました。そのために、「悪魔=邪悪」ということで魔女が処刑されてしまったわけですが、本来の魔女は、「キリスト教以前の神々を信仰し、自然やスピリチュアルな世界のエネルギーを自在に扱えていた賢い女性」だったのです。

【古典的な魔女のイメージ】

「魔女」というと皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか? 箒に乗って空を飛ぶ、とんがり帽子をかぶったお婆さん、大釜で妖しげな薬を作り出す黒ずくめの老婆といったようなイメージが一般的かもしれません。

日本人にとっては、魔女という存在は身近なものではないために、古典的なアメリカドラマである『奥様は魔女』、スタジオジブリ作品の『魔女の宅急便』などに登場する、いわゆる「フィクションとしての魔女の姿」が思い浮かぶのも当然かも知れません。

 

【西洋の暗い歴史 魔女狩り】

しかしながら、西洋では14世紀から 17世紀にかけて「魔女狩り」という陰惨な事件が起こりました。
キリスト教会がキリスト教の教義以外のスピリチュアルな思想や宗教的な思想を「異端」と定義づけ、「異端審問(いたんしんもん)」を行ったのです。これはキリスト教による「宗教裁判であり、異なる思想への強い弾圧」でした。

当初はキリスト教会だけが行っていたのですが、当時の教会は強い権力を持っていたために、いつしかその思想は「市民の間にも広がっていきました」。そんな中で、『魔女の鉄槌』という魔女狩りの指南書のような本が出版されたことも、「魔女狩りを助長する大きな手助け」となりました。実際に、この本に書かれた内容に合致する人は男でも「魔女」とされて、「拷問を受けたり処刑されたりした」のです。もちろん、『魔女の鉄槌』に書かれている内容は、「ほとんどがデタラメ」だったのですが、それにも関わらず多くの人が「無実の罪で処刑」されてしまいました。

そんな魔女狩りで有名なのが、アメリカで起きた「セイラムの魔女裁判」。こちらは、「200人近くの人が魔女として告発され、最終的に30名近い人が死亡した」という非常に痛ましいものです。死亡した人は魔女だと自白したことで処刑されたということになっていますが、実際は「過酷な拷問に絶えきれずに自白した人がほとんど」だったのです。

 

【20世紀になって生まれた新しい魔女 ウィッカ】

このような暗い過去があることから、西洋でも、魔女というのはフィクションの中の存在として消費されることが多かったのですが、近年になってから「新しい魔女の潮流」が生まれてきました。それが「ウィッカ」と呼ばれるもの。「魔女宗」などと翻訳されることもありますが、厳密には宗教ではありません。そもそも、新しい時代の魔女を定義するための言葉だったこともあり、「魔女そのものや、女神信仰などを意味する」ものといえるでしょう。

魔女というと「悪魔と契約した存在である」というイメージがキリスト教によって植え付けられていました。そのために、「悪魔=邪悪」ということで魔女が処刑されてしまったわけですが、本来の魔女は、「キリスト教以前の神々を信仰し、自然やスピリチュアルな世界のエネルギーを自在に扱えていた賢い女性」だったのです。

そういった本来の魔女の姿を取り戻すことを目指したウィッカの人々は、「古の神々や女神」とコミュニケーションを取り、自然のエネルギーを活用し、よりよい人生を送っています。当然ながら呪いや悪魔召喚などは行いませんし、人を害するようなこともありません。。

 

【蔑称から新しい信仰の形へと変わった ペイガン】

ウィッカと似たものとして「ペイガン」があります。この言葉は元々キリスト教などの唯一神を信仰する宗教によって、「古来からの神々を信仰する人々を侮蔑する言葉」として使われていたものですが、「ニューエイジブームが起きた1960年代」にキリスト教以前の宗教や自然と繋がった世界を求める人々によって、ポジティブな意味で使われるようになりました。かつての用語との区別として「ネオ・ペイガン」などと呼称することもあります。

このように「古の神への回帰と自然信仰」をベースとして、新しい時代の魔女たちは活動をしています。19世紀に生まれた魔術結社の流れを受けて、独自の結社を立ち上げたり、「カヴン」と呼ばれる13人単位の集団で儀式を行ったりするという組織だった行為も行われているのです。このようなグループで行われる儀式は、システマチックに洗練したものも多く、「現代魔女術」などと呼ばれています。

 

【21世紀は一人でも魔女になれる時代 ソロウィッチ】

21世紀に入ってから、「新しい魔女の形」が生まれてきています。基本的に結社やカヴンなどに参入するためには「参入儀式」というものが行われます。これによって、その結社に属するだけでなく、霊的な意味合いで生まれ変わるというものですが、そういった組織に属することなく、自分が信仰する存在を決めて、その存在へと自らを捧げる「自己参入儀式」を経て魔女になる人が増えてきているのです。このような人たちは、「ソロウィッチ」と呼ばれ、自分が決めたルールに従って活動し、儀式を行っています。

前述したように、現代の魔女は、古来の本来の魔女の姿を復権するとともに、失われた古の神や女神とコミュニケーションを取る「巫女のような存在」ですが、その一方で、その成立が近年であるために、堅苦しい決まり事に縛られることがなく、様々な「新しい潮流が生まれて」います。日本でも「縄文の存在に魔女の儀式を通して繋がろう」という魔女グループが存在するほどです。

では、そんな現代の魔女はいったいどのような魔法を扱うのでしょうか? 次回は迷信として知られている魔女の魔法と、現代の魔女が使役する魔法についての違いを具体的な例をあげて紹介して行きたいと思います。

Classical witch and modern witch.
Modern witches believe in the goddess.

 

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