ハワイの伝統手工芸、ハワイアン・キルト その一針一針に込められたパワーとスピリット

ハワイに伝わる、独特の手工芸であるハワイアン・キルトは、通常のキルトよりも大胆なデザインと鮮やかな色使いが、ハワイらしさを物語っています。その一針一針には、縫い手の思いやパワー、そして魂が込められた逸品なのです。

最近では、ハワイ土産としてもクッションカバーやポーチなどをハワイアン・キルトで作ったものをよく見かけます。

しかし本来のハワイアン・キルトは、何カ月もかけて作るベッドカバーやタペストリーなどの、大作が多いのです。

もともとはキリスト教を広めるためにハワイにやってきた宣教師の妻たちが、ハワイの女性たちに当時アメリカで人気のあったキルトを教えたのが始まりです。

ところが材料もままならなかったその時代に、ハワイ独自の発展を遂げることになったのでした。

 

ハワイアン・キルトの歴史

ハワイアン・キルトは、1820年にアメリカを出港した宣教師を乗せた船が、ハワイ島に停泊したとき、その船上でハワイの女性たちを招いて宣教師の妻たちが、裁縫教室を開いたのが始まりだと言われています。

その当時アメリカで流行していたのが、パッチワークだったのですが、パッチワークは、布の切れ端や残り布を使って縫い合わせてゆくのが基本だったのです。

ところが、ハワイの人々はその頃はまだ木の皮をなめして作ったカパと呼ばれる布を身にまとっていただけだったのです。

従ってハワイの人々は、わざわざ大きな布から小さい布を切り取って、それを縫い合わせてキルトを作るという、真逆のことをしていたのでした。

実際にこのキルトがハワイに浸透し始めたのは、綿の布がハワイでも手に入るようになった1870年代だと言われています。

ある日、ハワイの女性が庭に干してあったシーツに木の葉の影が映っているのを見て、そこからインスピレーションを得て、大きな布を4枚や8枚に折りたたんで葉の形を切り抜くことで、左右対称のアップリケにするという手法を生み出しました。

これが現在のハワイアン・キルトの原型となっていったのでした。

 

ハワイアン・キルトのデザイン

ハワイアン・キルトのデザインとしては、主に植物が良く使用されます。パイナップルや、モンテスラの葉、パンの木、アンセリウム、プルメリアなど。

中には守護神と言われる亀、ホヌをデザインしたものもあります。いずれのデザインを用いても、左右が対象になるように作られています。

またそれぞれのデザインは、個人のインスピレーションによってデザインされているものがほとんどで、似たようなデザインであっても微妙に違っているのです。

そのインスピレーションは、寝ているときに見た夢から得る人もいれば、自然の中で過ごしているときに、まるでチャネリングで降りてくるかのように自分の元に届くと言う人もいるようです。

これら自然をモチーフにして作られるハワイアン・キルトは、もともとシーツにアップリケのようにして作られたものなので、色も原色で黄色や赤、緑などはっきりとした色使いのものになっていました。

基本的に、ハワイアン・キルトは、一色のバックグラウンドの上に数色の色を使ってアップリケを施すというのが一般的です。

このほかには、ハワイの旗や紋章のほか、聖書に基づいたデザインのものも作成され、これらはフラッグ・キルトと呼ばれていました。

リリウオカラニ女王が最後にイオラニ宮殿に幽閉されたときにも、彼女は日々キルト作りに明け暮れ、布と布の間に刺繍をほどこした、彼女独自のキルトを作り上げてゆきました。

 

ハワイアン・キルトに込められた思い

ハワイアン・キルトを作るとき、人々は色々な思いを込めて作っています。
キルトのデザインで一番よく使われるのが、パンの木のパターンです。

パンの木は、ハワイの人々にとって大切な食べ物であり、またパンの木が大きくなるように、自分も成長し立派になることを願って作っていたのです。

また自分の子供や孫のためにハワイアン・キルトでベッドカバーを作るときは、その子供たちが健康で立派に育つようにという思いを込めて縫い、仕上げられるのです。

このようにハワイアン・キルトは長年にわたってその一家に受け継がれていくものなのです。

大切なハワイアン・キルトを作るとき、もし作り手の心が傷ついていたとしたら、キルトにもその気持ちが伝わってしまい、うまく作れなくなると言われています。

従ってハワイアン・キルトを作るときは、神聖な気持ちになり、心を集中させ、自分のマナ(パワー)と魂を、一針一針に込めて縫い合わせることが大切なのです。

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