【輪島大祭と宗像三女神】長女タギリヒメの結婚

伝承によると三女神は剱でありながら、同時に「大蛇」の影をちらつかせています。

ハヤコは下へも置かず接待をする中で、スサノオという男に相通ずる何かを感じていました。
しかし、若いスサノオの目は他の女性をとらえていたのでした。
女性の名はハヤスウヒメ。
スサノオの初恋でした。
ちなみにハヤスウヒメは後に八岐大蛇の最初の犠牲者となります。

ハヤスウヒメの父が誰かを調べて早速結婚の申し込みをするのですが「宮を持たぬ半人前の男に娘はやれない」ということで、新宮の創設を申請したのでしたが、しかし日ごろの素行が祟りダメがでてしまいました。
スサノオの上への反発心はいや増し、常に不満を垂れ鬱屈した日々を送るばかりでした。

一方でモチコが第一皇子を生んだ喜びもつかの間、後から入内し内宮にまで上り詰めたセオリツヒメホノコの産んだ皇子に皇太子の座を奪われるという事がありました。
第一皇子の我が息子を差し置いて。

こういう時、妃の一人として身内がいると、愚痴を言いあって気晴らしになります。
ハヤコはモチコにとっては愚痴のはけ口でした。

「アマカミさまは、ご自分の首に掛けられていた玉を取り外すと眞井の清水で手ずから丁寧に漱がれ、わたくしにみたねをくださり、おのこを授かりましたのに。あのホノコがやってきてから、あの時のほのおが消えてしまったようだ。ほのおが消えるだけじゃない。息子が嗣子になれないなんて許せない。ホノコめ絶対に許さない。」

姉の嘆きを毎日聞くうちにハヤコには姉以上にむらむらと怒りと恨みと妬みのようなねっとりしたものが胸に広がって消えなくなりました。

結婚話が流れてくすぶった不満はがはちきれんばかりのスサノオの、曇る心を慰めたのがモチコとハヤコでした。
三人はすぐに意気投合しました。
幼いころから世を拗ねて素行が悪く、そんな自分のせいで母を死に至らしめてからは、やりきれない自分への怒りや鬱屈したイライラを溜めていたスサノオなのでした。
そこへ来て好きな女性と結婚もできないとは。

皇子でありながら何も自由にならない。
上をギャフンと言わせたい。
あいつを陥れたい。
面白くない。

そういって、愚痴を言い合っているうちは良かったのです。
しかし、一度ついてしまった恨みの炎は、ねっとりとねばりつく胸のタールに引火して一気に燃え上がるのに時間はかかりませんでした。

 

セオリツヒメホノコ、タカマ転覆の危機を祓う

この三人が醸すモクモクと立ち上がるむらくもを、内宮のセオリツヒメホノコの霊力が見抜いていました。
そこは、速川の瀬にましますとうたわれるホノコ。速攻、排除にとりかかります。
少しの間お休みして結構ですよと、モチコとハヤコに暇を出します。
二人が宇佐への蟄居処分を言い渡されると、スサノオは剣を手にいきりたちました。
俺が話をつけてやる、と。

止めたのはハヤコでした。
「いさおしならば、あめがした」
その勇しで、天下をとれよ。ついに般若が顔を出した、その瞬間でした。
ハヤコが生まれた越(こし)のあの池に棲む大蛇の影が現れたのです。

 

宗像三女神の母はコシ(越国)の女

当時の慣例として、皇子は男親が養育し、皇女は女親が養育したようです。
母が宇佐に蟄居命令が出たので、三女神も母に付いて宇佐に入ったのでした。
三女神が十拳剱の現身であるところは記紀と同じです。

伝承によると三女神は剱でありながら、同時に「大蛇」の影をちらつかせています。
海からの水際を守り、瀧を守りするため龍神や蛇神を繰り出すお働きをする神と言えます。

宇佐に入ってからの三女神や母ハヤコの動きについては今後、神社社伝や地域のお祭り、民話を追って足跡を訪ねます。

 

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