思考と言語表現の不一致
自己実現、それも利他的な意味合いで果たすことをテーマにこれまで述べてきましたが、そのプロセスにおいて重要な、矛盾点を明らかにするということに関して今回は深めてみたいと思います。
なぜこれを取り上げるかと言うと、物事を進めていく上で本質的に障害となるのは、他人や環境ではなく、自分の思考そのものだからです。
「思考と言語表現」、「思考と行動」に矛盾があれば、当然ながら実現することはできないので、日々どのような思考で過ごしているのか、心の奥にどのような思いがあるのかをつぶさに見ていく必要があります。
叶えたい夢、やりたいこと、興味のあること（ちょっとしたことでかまいません）を思い浮かべながら、矛盾がないかみていきましょう。
まずは、「本当に思っていること」と、普段周囲の人に「話している内容」に矛盾がないかどうか振り返ってみてください。
本当はやりたいと思っているのに、「あまり興味がない」、「向いていないと思う」、「ほかにすべきことがある」などと言っていないかどうか。「まあ、できたらいいかなとは思うけど」といったような曖昧な表現を使っていないかどうか。
あるいは、今の仕事を辞めたいと思っているのに、「これ以上にいい仕事はなさそうだし」、「それなりに満足しているから」などと言っていないかどうか。だいいち、これは言語表現に矛盾があります。「それなり」に「満足」などできるわけがありません。
「思考と言語表現」が一致していない場合は、自己表現やコミュニケーションについてしっかりと見つめなくてはなりません。自分自身に嘘をつかず、正直に生きていくことなしに、自己実現を果たすことは不可能です。
やりたいことがあるなら、勇気を出して、堂々と「やりたい」と言いましょう。失敗を怖れたり、体裁を気にしたり、親の顔色をうかがったりするようでは自分の人生を生きることができません。
前回少し触れた、「わたしたちの人生」（利他的自己実現の道）を歩むためには、「自分の人生」をまず生きなければならないと思っています。そうでなければ「わたしたちの人生」とはまやかしの、きれいごとに終わってしまうからです。
本当に、魂レベルで望んでいる生き方に向かっていくこと、その道を貫いていく姿勢を保つことができて初めて、「天職」を受け入れる準備が整うのだと思います。
「色々興味があって選べない」、「やりたいことがない」というのは、心の奥底を見ないで済むように用いられた言葉であって、これは真実ではありません。
また、「何が向いていますか」とあちこちの占い師に聞いてまわるのも、正直に生きていないという点で同じだと言えます。答えは外にはないし、やりたいことが何かを自分で言わずに、相手に言わせようとするのはナンセンスです。厳しいかもしれませんが、本気で自分と向き合わないなら、一生見つからないでしょう。
思考と行動の不一致
「思考と言語表現」に矛盾がない場合は、次のステップに取り組めます。今度は「思考（本当に望んでいること）」と「行動」が一致しているかどうかをチェックしてみてください。
やりたいと言いながら、やるべきことを先延ばしにしていないかどうか。少しは行動したとしても、あれこれ言い訳をして途中で投げ出していないかどうか。
あるいは、今の仕事を辞めたいと言いながら変化を怖れて何もしないというのも、思いと矛盾しています（すぐ辞めればいいと言っているわけではありません）。
願っていることに関する行動をしていない、という不一致について述べましたが、何か行動している場合でも、相反すること、やらなくていいことをやっている可能性があります。
努力しているのに結果が出ないというときは、本当にその行動が実現に向かうものなのかどうか、考え直してみるとよいかもしれません。自分ではやっているつもりでも、方向性がずれているケースもあります。
けれども何より重要なことは、自分の思考――自分自身をどう見ているかということや、ものの見方――です。
自分自身を「できない者」、「やれる力のない者」としてみなせば、叶うはずのことが叶わなくなってしまいます。「やりたい」と思うことは「やれる」ことですが、自分を信じることなしには、けっしてそうはなりません。自分に正直になり、それを怖れず表現し、直感に基づいて行動していきましょう。
次回は、矛盾を抱えることなく進んでいくためのカギについて、述べてみたいと思います。
